番外編② 私のお兄ちゃん
これは一条京子から見た兄、一条海斗の姿。海斗と二階堂未奈美が付き合い始めた頃に遡る。
☆
私は一条京子。中学生で、高校生のお兄ちゃんがいる。
「お兄ちゃん、ギャルの彼女と仲良くしてる?」
「してるよ」
どうせ、
『彼女じゃねえし』
とか言われると思っていたのに、予想外だ。あの日からだ。ギャルの女の子と一緒にデートに行ってから、お兄ちゃんの目は希望に満ちるようになった。私は、お兄ちゃんがまともに社会生活を送れるようになったのが嬉しく思う。
「ギャルの彼女、可愛いの?」
「めっちゃ可愛い」
正直、お兄ちゃんがあそこまでデレデレになるとは思わなかった。てっきり、
『俺は彼女とか作らない。めんどくさいだけだろ』
とか言うのかと思ってた。お兄ちゃんを変えてしまうほどの魅力があるギャルの彼女……二階堂さん。会ってみたい!
「お兄ちゃん、今幸せ?」
「うん」
幸せそうな笑顔だ。心からそう思っているのだろう。お兄ちゃんが彼女できたなんて……。感動の涙が出てしまう(嘘)。お兄ちゃんを変えてくれたギャルの彼女には感謝しなくちゃ!
☆
中学校でのこと。私はお兄ちゃんの話をせずにはいられなかった。
「私のお兄ちゃん、彼女ができたんだよ」
「ええー! 京子のお兄ちゃん、引きこもり一歩手前でひねくれててオタクだって言ってたのに!?」
「ギャルの女の子とデートしたら、案外いい方向に行ったんだって」
「へえー!」
友達にお兄ちゃんの話をしたら、みんな驚いていた。まあ無理もないだろう。お兄ちゃんは人一倍捻くれているのだから……。
私は休み時間にふと考えてしまう。あのお兄ちゃんが恋をしているなんて……。きっとそのギャルの彼女に惹かれたのだろう。私も本気の恋がしてみたいな……なんて。まだ好きな人もいないのに。
「ねえ京子! お兄ちゃんの彼女の話もっと聞かせてよ!」
「うん。いいよ」
お兄ちゃんの彼女の話を友達にすると、みんな興味津々だ。あんなに根暗だったのに……という声が多い。まあ、実際にお兄ちゃんと会ったことのある人も多いし。
「京子、お兄ちゃんの彼女って可愛いの?」
「うん、写真持ってきてるから見る?」
お兄ちゃんの彼女は本当に可愛い。モデルをやっていても不思議ではないくらい綺麗だ。スタイルもいいし、ギャルっぽい服装も似合っている。なにより、笑顔がいい。
「京子のお兄ちゃんめっちゃ楽しそうじゃん!」
友達が笑いながら言う。私も、お兄ちゃんが楽しそうにしている姿が好きだ。
「うん、楽しそうだよ」
☆
「それで、二階堂さんが……」
ギャルの彼女の話をするお兄ちゃんは本当に楽しそうだ。意外な一面が見れて面白い。
「ギャルの彼女って優しい?」
お兄ちゃんに聞く。ギャルの彼女はどんな人なんだろう。
「……うん、すごく優しい」
お兄ちゃんも変わったものだ。根暗だったお兄ちゃんが彼女のために努力するようになって……嬉しいようななんというか……。
「これからも仲良くしたいって思ってる」
「そっか。頑張ってね」
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