怪(其の壱)

@k0905f0905

第1話

「うわーっ!」

死間坂(しまざか)圭司の顔面に鈍器が

振り下ろされた。

「ぐぇっ」

死間坂は抵抗する間もなく上体を折り畳んで果てた。

顔中がグチャグチャで血だらけだ。

顔の周りを蛆虫が這い始めた。

犯人は小走りでその場を立ち去った。


「死間坂さん、どうしちゃつたのかしら」

金沢不動産事務職員の英道芹那は

部長の死間坂が十日間も欠勤しているので

不思議がった。

「今までこんなことなかったのに」

「芹那ちゃん」

同僚の林田が芹那に声を掛けた。

「なあに」

「口紅、凄く赤くて超セクシー」

「ありがとう。これ特注品なのよ」

芹那は軽く躱して答えた。


芹那がベッドで寝ていると、顔を何かが

這い始めた。

芹那が顔をソット手で拭った。

「ヒーっ」

芹那が叫び声を上げた。

電灯を点けると、死間坂の顔をした、人面瘦の巨大な蛆虫が

顔を這っていた

「よくも、オレを」

蛆虫が断末魔のような声を出して口紅を

舐め始めた。





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