Episode.13-2『うさぎの子と奇襲』


 ミーアは戻ってきたセリカに声をかけた。

 相変わらずの様子で、こちらには見向きもしない。




 『戻ったわ、これ以上銃を乗せるとみんな乗れなくなるわ。』


 『ありがとう。 ………セリカお願いなんだけど。』


 『うん…?』




 ミーアはとても言いずらそうに喋り出した。




 『出来ればリオをE区域まで案内して欲しいの。』


 『…嫌よ!』


 『本当は私たちが行ってあげたいけれど別の建物にいる2人も連れて行かなきゃいけないから…。』


 『私は行かないわッ!』


 「…無理に来なくてもいい。 俺一人で行く。」


 『一人で車を運転しながら魔物の中を走り続けるのは危険だから。 乗りながら倒す人も必要なの。』


 「そこは何とかするつもりだ。」


 『いくら何でも一人は危険すぎる。』




 レイも話し合いに混ざってきたがセリカは変わりそうにない。

 この話し合いはそれなりの理由もあるようだった。




 『なんでこんな奴と行かなきゃならないのよ!』


 『リオが乗ってきた車も銃火器含めて5人が限界。 どのみち残り二人は別の車で移動が必要だよ。』


 『なんで私なのよ!』




 セリカがまた怒っている中、休んでいたルエは立ち上がり、こちらの方に少しふらふらと歩きながら近寄ってきて喋り出した。




 『…うちが行く。』




 見るからにしんどそうに見えるルエの現状はかなり厳しそうだった。

 D区域から抜け出したものの状態が悪くなっているように感じるがE区域についてこようとするルエをレイは止めに入った。




 『ルエは副作用や魔力的にも危険だよ………。 ミーア…やっぱりまた少しの間お別れかな。』


 『レイ…。 やっぱり仕方がないね…約束はもう少し先になりそう。』




 戦力的にもセリカがこれなければレイ、ミーアどちらかになるだろう。

 別の建物にいる災いの子は不明だが、助け出されたと考えると戦える可能性低い。




 「本当に無理はしないくていい。 俺一人で――――――。」


 『…そうやってまた一人で抱え込む。』


 「だが…ルエこそ厳しんじゃないのか…?」


 『…戦えなくても守ることぐらいならできる。』


 『ルエ、これ以上能力を使えば本当に死んでしまうかもしれない。 ………大丈夫、僕が何とかするよ。』


 『それに、レイとの約束は急いでるわけじゃないからね。』


 『うん、僕たちがまた再開したらこの世界を終わらせる約束を果たす。 …これ以上悲しい結末を迎えさせないためにも。』




 セリカはこの世界を終わらせる約束という言葉に何かを感じ取っていたようで、話し合いをしている中で俯いていたセリカは吹っ切れた様子で声を荒げた。




 『ああああああぁぁっ――――――もうッ!! わかったわよ! 行けばいいんでしょ!!』




 セリカはレイとミーアの兄妹がまた裂かれるのが嫌なのだろう。

 一人で何とかしようと思っていたがみんなとの話し合いがここまで大きくなるとは思わず、申し訳なさのあまり俺は謝った。




 「…すまない。」


 『人間っ! 少しでも変なことしようとしたらぶった切るからねっ?!』


 「なにもしない。」


 『――――――ふんっ!』




 セリカはこちらから顔を背け、相変わらず人間の俺には厳しいようだ。

 ミーアとレイはセリカにとても申し訳なさそうにしている。




 『ごめんね…セリカ。』


 『ごめんよ。』


 『別にいいわよ。』



 『…ツンデレ。』




 ルエは突然、セリカに対して呟いた。

 それを聞いたセリカは慌ててルエに言い返した。




 『なっ――――――つ、ツンデレじゃないわよっ! ほ、本当に人間のことが嫌いなだけよ!!』


 「嫌いでも嫌いじゃなくても別にどっちでもいいが…。」


 『あ、あんたのことなんか大っ嫌いなんだからっ!!』


 『…ふふ。』


 『な、何よ!』


 『…なんでも。』


 『はぁ…もう………調子が狂うわ…。』




 セリカは大きくため息をついて、怒る様子はなく完全に折れていた。


 セリカは本当に嫌いで言っているようには聞こえなかった。

 本当は優しいのだろう。




 『E区域に送り届けたらB区域にいくわ。』


 「俺も事が済んだらセリカをB区域に送り届ける。」


 『別にあんたなしでも戻れるわよ!』


 「わかってる、それぐらいはさせてくれ。」


 『なんなのよもう………。』


 『あはは…僕たちの準備はできた、そろそろ出発しよう。』


 『うん、またB区域で会いましょ。』


 『わかったわ。』


 「ああ、終わったら絶対にB区域に向かう。」


 『…無理はしないで。』


 『リオ、セリカ気を付けて。』


 『気を付けてね。』


 『ありがとう。』




 レイはアサルトライフルを二丁、両手に持って玄関から外に出ていくとレイに続きルエ、ミーアは外に出て行った。

 みんなが出ていく様子をセリカと二人で見届けて二人だけになった。


 E区域にたどり着いて真実を知り、セリカをB区域に送らなければならない。


 少しの間、シーンと沈黙が続いた後に準備をするため動き始めた。




 「弾薬補充だけする。」


 『…私は車に銃を乗せてくるわ。』




 セリカは顔を合わせずに喋り、奥の部屋からライトマシンガンを取り出して両手で持ち、玄関から外に出ていく。


 セリカが出ている間に作業台の近くに置いてある空のマガジンや専用の弾薬を作業台に準備してアサルトライフルの弾、ハンドガンの弾を1発ずつマガジンに入れていく。


 弾薬を入れ終わったアサルトライフルのマガジンをコートの中に入れて、ハンドガンのマガジンを弾薬ポーチに入れて最後にグレネード弾を2個補充した。

 アサルトライフルのマガジンリリースボタンを押して新しいマガジンに取り換えてグレネードランチャーをスライドさせ、新しいグレネード弾を入れて装填した。


 左手側のハンドガンを取り出して作業台に置き、ハンドガンホルダーをリボルバーホルダーに取り換えてリボルバーをしまった。


 準備をしていた間に車が走る音が聞こえて遠ざかっていった。

 レイ、ミーア、ルエと2人の災いの子はD区域から乗ってきた車に燃料を入れて出発し、B区域に向かったのだろう。



 玄関から外に出ると、セリカが裏から戻ってきたがこちらを無視して建物の中に入っていった。

 D区域から乗ってきた車はなくなっている。


 今は建物の裏側にある車を確認しよう――――――。


 建物の裏側には2台分の車庫らしきものを見つけ、車庫に近づき確認すると軍用車が2台ある。

 軍用車はオープン状態で窓もない。


 1台はメンテナンスされているがもう1台はメンテナンスされてない様子でタイヤもパンクしている。

 もう1台のメンテナンスされている方を見るとライトマシンガン、アサルトライフル、ハンドガンが後部座席に乗せてある。

 このライトマシンガンはセリカが乗せたものだろう。




 「こっちの方だな。」




 アサルトライフルを助手席に置いて運転席に乗り、セリカを待っていると戻ってきた。

 セリカの腰にはベルトとハンドガンホルダーにハンドガンを入れてハンドガンのマガジンを身に着けてあった。




 『…行くわよ。』


 「ああ。」




 セリカは後部座席に乗り、セリカを確認した後に車のエンジンをかけてシフトレバーを下げ、足でアクセルを踏んで車を動かし、車庫から出て東側へ向かった。


 道は相変わらず崩れていたり瓦礫があったりで障害物も多く、ガタガタで不安定な場所が多いが避けながら進み、E区域に向かい走り続ける――――――。






 セリカと二人で――――――――――。










 『To be continued――』

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