Episode.13-1『うさぎの子と奇襲』
『Episode13.うさぎの子と奇襲』
暗い空間で何もない場所。
虚空の中で感じる感情。
悔しさ悲しさ後悔、何もできない怒り。
色々な感情に押しつぶされそうになり声を荒げる――――――。
「俺の………せいだ…!!」
「みんなみんな俺のせいだッ――――――!!」
「ぅあああああああああぁぁぁぁッッッ――――――!!」
膝をついて地面に両腕を置いて拳を強く握り、俯いたまま叫び続け絶望を嘆いた。
ぐちゃぐちゃになった感情の中で涙がこぼれ落ちる――――――。
苦しい――――――。
心臓が引き裂かれるように苦しい。
突然レイ、ミーア、ルエの悲鳴が聞こえる――――――。
目の前を見上げると返り血を浴びたセリカの後ろ姿が見える。
セリカの手にはナイフが握られていて血がぽたぽたと滴っていた。
血まみれになっているレイ、ミーア、ルエはナイフで切り刻まれた痕があり、地面に血だまりを作り、倒れていた――――――――――――――。
思わず驚きと悲しみ、恐怖が顔に出てしまい、セリカは喋ると同時にゆっくりとこちらに振り振り返った。
『どうして助けてくれなかったの――――――。』
体や顔には返り血と、瞳は小さく狂気じみた表情でこちらを見ている。
どこかで見たことがある光景。
しかし何かが違う。
セリカじゃない――――――――――。
思い出せない――――――。
セリカは一気に襲い掛かってくると思いっきり俺を蹴り飛ばした。
蹴られた勢いで後ろに転がりながら吹き飛ぶ。
「違う…違うッ――――――!!」
『もう…終わりよ………。』
セリカは涙を流し、震えながらナイフをゆっくりと自身の首元に当てた。
「やめろ……………。」
すぐに立ち上がりセリカの元に走り手を伸ばし叫ぶ――――――。
「やめろおおおおおおおおぉぉッ――――――――――!!!」
セリカの首元にナイフが突き刺さった瞬間ぷつりとすべてが消えた。
寝ていた俺は目を覚ましたが荒い息と冷や汗が止まらない――――――。
夢――――――――――だったのか?
辺りは明るくなっていて時間は早朝だろう。
しかし、あまりの生々しさに今もドクドクと心臓が強く脈を打っていて落ち着きを取り戻せない。
周囲の気配すら感じれずにいると右から突然声が聞こえる、ルエの声だ――――。
『…平気?』
慌てて右を見るとルエがしゃがみながらこちらをじっと見ていた。
「あ…あぁ…大丈夫………だ。」
『…ひどい汗。』
夢であったとはいえ生々しい感覚があった。
とても嫌な夢を見てしまった――――。
口は小さくにっこりとしながらルエに頭を軽く撫でられた。
ルエを見ていると少し落ち着きを取り戻してきた。
辺りを見渡すがルエだけがこちらの様子を見に来たようだ。
他のみんなはどうしているのだろうか。
「みんなは?」
『…準備してる。』
「準備?」
『…B区域に戻る為の準備。』
「そうなのか。」
『…もし本当に助けが欲しくなったら言って。』
「ん…?」
『…あなたはなんでもずっと一人で抱え込む。』
「…………………。」
正直その通りだ、何も言い返せない。
なんであろうとも一人でやろうとしてしまう。
どんなに困難であっても――――――――助けが必要だったとしても。
『…図星。』
「すまない…。」
『…謝ることない、でも本当に必要なら構わず言って。』
「あぁ…ルエ、ありがとう。」
『…気にすることない。』
ルエには何故か心を見抜かれてしまう。
能力なのだろうか。
しかし、ルエのメインの能力は結界で心を見抜ける力は聞いていない。
「…で、なんでそんなに心が読めるんだ?」
『…顔に書いてある。』
「顔…? 能力か?」
『…ふふ、冗談。』
「な、なんなんだ…。」
『…観察が好きなだけ。』
「そうか…。」
『…色んな人を見ていれば大体わかる。』
ルエにからかわれつつもルエの言葉に安心して落ち着きを取り戻し、ルエが立ち上がろうとした時に俺は声をかけた。
「………ルエ、もしも俺が――――――――――」
中から突然、大きな物が倒れる音がしてレイとミーアの声が聞こえてきた。
『あたたた…。』
『レイ!? 大丈夫!?』
『うん、平気。』
『そこらへん崩れやすくなってるから気を付けてね。』
どうやら中で何かが崩れたようだが聞いている感じ大丈夫そうだ。
ルエは立ち上がり優しく微笑んで喋った。
『…わかった、任せて。』
ルエはそう言葉を残して玄関の扉を開けて建物の中に入っていった。
俺の声は崩れる物音などでかき消されていたが、ルエは聞こえていたのだろうか?
そんなことより自身もE区域に向かう準備をしなければならない。
深く考えることもなく立ち上がった。
「俺も準備しないとな。」
ルエと同じく建物の中に入るとみんなは起きていた。
ルエは椅子に座って休んでいる中でレイ、ミーア、セリカは銃や弾薬などをまとめていた。
ミーアとレイは建物に入った俺を見ると声をかけてきた。
『おはよう、リオ。』
『おはよう、大丈夫かい?』
「あぁ…大丈夫だ…おはよう。」
セリカは昨日ほどではないがまだ少し怒った表情で俺を無視してセリカはまとめた銃を持ったまま外に出て行った。
「…みんなはB区域に戻る準備か?」
『うん、C区域からB区域に戻るための準備。 リオは…E区域だよね。』
「ああ。 E区域に行く。」
『よかったら裏にある車1台あげるね。 もう1台は壊れてるんだけど、私たちは昨日リオ達が乗ってきた車に燃料を入れて行くの。』
「いいのか?」
『1台だと人数的に全員は乗れないからね。 あ、それと…。』
ミーアは何も持っていない右手を差し出してくる。
すると光が集まり同時に6発入りのシリンダーが生成され始め、徐々に形成されていく。
弾薬が装填された状態の8角形のシリンダーが出来上がり、弾薬が入った赤いシリンダーが1つ出来上がった。
『これが赤い強力な弾薬。 命中すれば大きな爆発が起きるよ。』
『昨日、僕たちが作った魔力融合結晶と合わせれば強力な弾丸を1発だけ撃てる。』
ミーアから赤い弾薬シリンダーを受け取ってコートの中に入れるとミーアはさらに腰にある弾薬ポーチから青い弾薬シリンダーを2個取り出した。
『あとはこれ2つ。 こっちは青の弾丸、通常時に使ってね。』
『僕が使ってたのは普通の弾薬だから取り換えて。』
「わかった。 助かる。」
ミーアからさらに青い弾薬シリンダーを受け取って青い弾薬シリンダーを1個、コートの中に入れ、リボルバーのシリンダーラッチを押してシリンダーを取り出し、シリンダーが地面に落ると弾薬と一緒に散らばった。
青い弾薬シリンダーをリボルバーに装填する前によく見ると、色はあるものの輝きが少ない違和感を感じた。
「ん…。」
『どうしたの?』
「いや、輝きが少ないなと思っただけだ。」
『あれ…? 輝きは元々そんなにないはずだけどね…。』
ミーアは少し驚きながらも首を傾げた。
見たことがないはずなのにそう感じてしまった違和感を疑問に思いつつ、リボルバーに青い弾薬シリンダーを装填した。
「いや…すまない、何でもない。」
『大丈夫だよ、それともう一つ………セリカが戻ってきたら話すね。』
「わかった。」
ミーアが何かを深く思い悩んでいる中でレイは銃の装填を済ませて準備を終えるとセリカが戻り、玄関から建物の中に入ってきた。
『To be continued――』
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