Episode.12-2『再構成と弱さ』


 怒りに満ちたセリカがこちらにゆっくりと近づいてくる――――――。


 止めようと動こうとした瞬間、ミーアはセリカの頭に拳骨をして止めた。




 『セリカー!! もうやめなさいっ!』


 『いだっぁ!!』




 ミーアの拳骨で結界に弾かれていたセリカの能力も完全に消えたようだ。

 ルエも右手を下げて能力を止め、深呼吸をしている。




 『ごめんね、この子はセリカ・アレスティ。 E区域から逃げ出してきた子で悪い子じゃないんだけど…ね。』


 『ふんっ………。』




 セリカは不貞腐れながら顔を背けてルエはゆっくりと立ち上がった。

 E区域から逃げ出してきたセリカは何かE区域について知っているかもしれない。

 しかし、この状況じゃ聞けそうになさそうだ。




 「そうなのか………。」


 『ところでミーア、セリカはいつから…?』


 『1週間前ここに来た新しい子。 …そういえば私のこと紹介してなかったね。 私はミーア・アイリア。 レイの妹だよ、よろしくね。』


 「リオ・メサイアだ。」


 『僕はレイ・アイリア。』


 『…ルエ・ディナイアル。』




 名前をそれぞれ教えるとレイはミーアとセリカが出てきた建物に目を細めながら室内を見て喋り始めた。




 『そういえば助けた他の子たちは…?』


 『1つ隣の建物で二人寝てるよ。』


 『よかった。』




 もう一つの建物はひび割れていてぼろぼろだが板で穴を塞いであり、修復されていてその建物に他の災いの子は寝ているようだ。




 『みんな中に入って。』




 ミーアは建物の方に戻りながらこちらに顔を軽く向けて声をかけるがセリカはまた怒り出した。




 『人間と一緒にはいたくないわ!』


 「明日にはE区域に行く。」


 『セリカ、ちょっとだけ我慢してね。』


 『…………………。』




 ミーアはセリカを押し込むように建物の中に入っていき全員建物に入っていく。


 玄関から見える天井のランタンで中が照らされた建物に入ると様々な弾薬や銃のマガジン、カスタムパーツがたくさん作業テーブルに置いてあり、壁にも銃が掛けられて置いてある。

 奥の部屋には布団があり、寝室らしきものが見える。


 玄関を上がり中に入るとルエが扉を閉めてミーアはレイの方を見て喋り出した。




 『お兄ちゃんよく抜け出してこれたね。』


 『リオが中央施設を襲撃しててその隙にルエを連れて脱出しようとしてたんだけど襲撃していたリオに会って手助けしてもらったんだ。』


 『そうだったのね。 ありがとうリオ。』


 「別に何もしていない。」




 ミーアから目を背けた。

 腐っても人間を殺した。

 何人も。



 自分の為だけに――――――。


 自分の感情だけで――――――――――。



 何故ここまで自分を突き動かしたのかはわからない。

 そして、この行動をした自分は今でも信じられない。


 考え込んでいるとルエが側に寄ってきてこちらの手を優しく握り、声をかけてきた。

 心配してくれているのだろうか。




 『…気にすることない。』


 「あぁ………すまない。」




 こちらの手を握ったルエを見てセリカが怒った顔で喋る。




 『人間、なんで災いの子と関わるのよ………!』


 「答えを知るため…だからE区域について教えてくれるとありがたいが………。」


 『人間になんか教えないわよッ!!』


 「教えたくないならいい。 E区域に行って直接知るだけだ。」


 『っ――――――!! ………一つ答えて! 人間…あんたは何のために戦うの!』


 「俺は…俺の為だけに戦う。 この怒りと憎悪、そしてE区域という言葉だけが頭によぎる。 その真実を知るためだけに俺はッ――――――!!」




 止まらない感情が思わずこぼれ落ちる。

 セリカは少しの間、目を閉じて下を向き、考え込んだ後にゆっくりと閉じた目を開きながらこちらに視線を向けて言葉を発した。




 『…………………災いの子を殺したとしても?』


 「答えを邪魔するなら俺はやる。」


 『じゃあ、今私が邪魔をしたらどうするの?』


 「………殺せない。」


 『矛盾してるじゃないの!!』


 「いや、セリカはそんな子じゃない。」


 『――――――ッ! 知ったふりして私のなにを知ってるっていうのよッ!! 人間のあんたには私のことなんて何も知らないでしょ!!』




 今のセリカからは怒りではなく悲しみを感じる。



 深い深い悲しみだ――――――。



 セリカを見ていると自分自身も悲しくなってくる。

 セリカとは会ったばかりだが似たような経験をした感覚がある。

 しかし、そんな経験はした覚えはないが心の奥底から感じるこの感覚は紛れもなく本物だ。




 悔しさも――――――――――。




 「セリカからは深い悲しみを感じるんだ………。」




 セリカの怒りが止まり困惑した顔になっている。

 そして、セリカから感じ取れる似たような経験は誰かを守れなかった、救えなかった感じだ。



 大切な…とても大切な………何かを――――――――――。




 『なんで…そう思うのよ………!』


 「わからない、だけど感じるんだ。 誰かを助けられなかったような悲しみ…そして悔しさを………。」


 『人間のあんたなんかに………私の…私のことなんかぁ…!!』




 セリカが泣きそうな顔になったその時、ミーアはセリカを引き寄せるように抱き着いた。

 セリカは抱き着かれた瞬間、涙と声を小さく漏らす。




 『ぁ………。』


 『もういいの。 大丈夫………。』




 ミーアはセリカを抱きながら優しく撫でて、セリカは落ち込んで軽く泣きながら抱き返している。


 感情的になり過ぎた自身も落ち着かなければ――――――。

 セリカの涙を見た俺は思わず謝った。




 「…すまない。」


 『リオも悪くないよ。 今日はもう休みましょ。』


 『そうだね。』


 『さ、ちょっと狭いけど奥に行ってみんな休んで。』


 『…セリカは任せて。』


 『……………。』


 『ごめんね。』




 ミーアはどちらも心配しているようだ。

 ルエは一言も喋らなくなったセリカの手を繋ぎながら奥の部屋に連れて行き、一緒に布団の上で横になるとミーアはゆっくりと奥の部屋の扉を閉めてレイの隣に立ち、こちらを見て喋り出す。




 『リオ、E区域に行くのは危険。 正直やめた方がいい。 …でも止まりそうにないね。』


 「俺は行く。」


 『レイ、作るよ。』


 『わかった。』




 レイは手を下を向けて少し前に出してレイの手の下でミーアも同じく手を上に向けて出すとお互いの手の間から眩しく光り出した。

 金色に輝く光の眩しさに俺は左腕で目軽く隠して目を細めながら見ていると細長い円柱型の金色の物がゆっくりと生成されていき出来上がっていく。


 少しすると光が消えて完成すると重力で金色の円柱物はミーアの手に落ちて軽く握った。




 『ふー………初めてやったけど流石に疲れるね。』


 『あはは…僕も今にも倒れそうだよ。』


 「大丈夫か…?」




 レイとミーアは能力の使用で魔力が尽きそうになっているのだろう。

 二人は少しふらついている。

 相当大掛かりなことをしたに違いない。


 レイは持っていたリボルバーをこちらに渡してきてリボルバーを受け取ると、このリボルバーを今まで持ったことはないが持ったことがある感覚を感じた。


 ミーアも金色の円柱物を渡そうとするが渡す手前でミーアが喋る。




 『いい? 下手に衝撃与えたら吹き飛ぶかもしれないから気を付けてね?』


 「あ、あぁ………。」




 恐る恐る金色の円柱物が入った物を手に取る。

 よく見ると微かに光が動くように輝いている。

 不思議な物だがとても強い力を感じる。


 しかし、何故こんなにも危険なものを渡すのだろうか。

 疑問を抱くがレイは説明し始めた。




 『リボルバーの名前は僕たちのレイとミーアの名前、Reiレイ & Mieaミーア…もしくはRevolverリボルバー & Manaマナ、略してR&M。』


 「オリジナルの銃か。」


 『魔力弾に耐えれるレイのリボルバーを使って、弾薬は私、ミーアの魔力弾を使うの。』


 『そして一緒に作り出した魔力融合結晶、リボルバーの弾以外に先端に入れるところあるんだ、魔力融合結晶を先端に装填すると1発だけ最も強力な弾を発射できる。 だけど気を付けて、撃つと同時に施設を半壊させるほどの威力があるはず。』


 「何故そんな強力なものを? それに俺が裏切るかもしれないのに大丈夫なのか?」


 『レイとルエを助けてくれたお礼だよ。 裏切るかはセリカのでわかったから平気。』




 ミーアは首を軽く横に傾け口をにっこりしたがすぐに体の力が抜けて脱力している。




 『使う時は赤い弾薬を使うんだけど…明日作るね………。 今日はもう魔力が限界。』


 「わかった。」


 『みんな今日は休もう。 僕も疲れた。』


 「そうだな…。 俺は外で寝る。」




 外で寝ようとしたが心配したミーアは止めようとしてきた。




 『別に中で寝ていいんだよ…?』


 「いや、いい。 大丈夫だ。」


 『そっか………わかったよ。』


 『何かあったらすぐ呼んで。』




 レイも心配してくれている。



 だけど今は一人になりたい――――――――――。



 俺は頷いて玄関に行き、扉に手をかけて扉を開けて外に出ていき、そのまま扉を閉めた後、入り口横の壁に座り壁に背中をつける。


 魔力融合結晶をポケットにしまい、リボルバーを見ていると懐かしさを感じた。




 「元々手にあった感覚…何なんだ………。」




 建物の明かりが消えて辺りが真っ暗になり、一人夜空を見上るとはっきりと見える沢山の星を見ながら、ふと呟く。




 「いや、その答えもきっとあるはずだ――――――。」




 星を見ていると沢山ある中で一つだけ強く輝く星を見つけた。

 一つだけ強く輝く見ているとこのまま行けば確実に真実に近づけると強く感じた。

 確証はないが強く光る星に向かって手を伸ばして手を握った。




 「この先に――――――。」




 手を下ろして座ったまま目を瞑り、俺は眠りについた。



 どんな真実が待っていようとも今の俺は突き進むだけだった。






 E区域に――――――――――――――――――。










 『To be continued――』

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