Episode.12-1『再構成と弱さ』
『Episode12.再構成と弱さ』
暗闇の中、軍用車のライト一つだけでC区域に向かい車を走らせている途中、災いの子であるレイとルエについて聞くことにした。
「2人はなぜ捕まっていた?」
『B区域まで遠征しに来た人間をルエが助けたんだけど人間に手を貸してほしいと言われてそのままルエはD区域まで連れ去られちゃったんだ。』
「B区域? D区域はそんなに遠征していたのか。」
『それで僕が助けに行こうとしてミーアと一緒にC区域まで行ったんだ。 最初は他の災いの子も助けててそのままC区域にいたんだけど魔物に襲われている人間を助けようとして、魔力の使いすぎで倒れてそのままD区域に連れ去られちゃったんだ。』
レイは連れ去られてそのままD区域の中央施設で使われていたのだろう。
ルエは斜め下に俯いて喋り出す。
『…ほっといてくれてよかったのに。』
『あはは…ルエは結構冷たいように見えるかもだけどとっても優しいんだ。』
『…別に。』
「そうなのか………。」
確かに冷たいように見えるが大人しく、敵意はない。
常に冷静のような感じだ。
レイは思い出したかのようにポケットの中から何かを取り出そうとしている。
『あ………E区域が発明した魔力増強剤1本だけ持ってきたけどこれがそうだよ。』
レイはポケットから魔力増強剤を取り出して、こちらに魔力増強剤を手渡ししてきた。
魔力増強剤を軽く見ると円柱形で細長く、容器の中が見えるガラス部分が縦にあり、容器の中には赤い液体が入っていて先端部分には押すことができるボタンのようなものがある。
初めて手元に持って見ているが見覚えがある感覚だ。
まるで手に取って使ったことがあるような感じだ――――――。
「使うとどうなる?」
『能力を使うには魔力がいるんだけど、魔力が尽きると本来は気絶したように2時間ほど寝てしまうんだ。 でも魔力増強剤を使えば魔力が尽きたとしても無理やり魔力を引き出して能力が使える。』
『…うちは結界範囲増加と持続力増加。』
『僕の場合は更に強力な兵器が作れるけど不安定すぎて危険かな。 壊れて爆発する危険があるんだ。』
「副作用もありそうな薬だな…。」
『…死ぬ。』
『それも最悪あるとおもう………。 場合によっては能力を更に強力にすることができて身体能力もあがる。』
『…うちのように年を取らない副作用もある。』
「幼い見た目だが何歳なんだ…?」
『…女の子にそれ聞くの?』
「いや、大丈夫だ………すまない…。」
『…18。』
「なるほど…13歳ぐらいに思えたが………。」
ルエは幼いように見えてたが実際は副作用で小さいだけのようだ。
冷静で大人っぽさを感じるのはそのせいだろう。
「今までで何本使った?」
『…20本ほど。』
『僕は1本。』
『…でも、もう能力使うのが苦しい。』
『血…咳き込んでたもんね…。』
「あまりいいものではなさそうだな。 あとはE区域についてわかればいいんだが…。」
『うん…僕が知っているのは魔力増強剤の効果だけ…。』
魔力増強剤の副作用でルエの体は蝕まれている可能性がある。
ルエは魔力増強剤の他にも情報を知っているようだった。
『…D区域が魔力増強剤をE区域からもらう代わりに兵士と魔力増強剤使用のデータをE区域に送り込んでいたのは知ってる。』
「なんだそれは? 人間を送っていたのは初めて知ったな………。」
『…戦闘教育学校で育てられた人間も送り込んでた。 これだけは上位の人しか知らない。』
管理室にいたルエは色々情報を聞けていたのだろう。
この怒りや憎悪の感情が来るのは密かにD区域からE区域に人間を送っていたせいだろうか。
――――――しかし、違う気がする。
変わらずE区域という言葉だけが頭によぎっている。
答えがわからない――――――。
『僕もそれは初めて知ったよ…。 基本的に武器製造場にいたからね…。』
「そうなのか…俺もE区域に送られる可能性があったんだな…?」
『…候補には上がってた。 それに新しい防衛策として戦闘教育学校に今日、災いの子を入れていた。』
「戦闘教育学校に災いの子を入れるだと!? 一体どんな子だ…?」
『…名前は聞けなかった。 でも…垂れうさぎ耳の災いの子だというのは聞いた。』
この言葉を聞いて俺は悲しみと心拍数が上がった――――――。
何故だろう―――――――――苦しい――――――。
その子に会えれば答えがわかる気もするが後戻りもできない。
D区域は今、自身の襲撃によりルエの結界解除や魔物との殺し合いが始まっている。
それに俺は指名手配状態だろう。
今はE区域にも行かねばならない――――――。
『…大丈夫?』
「ああ…大丈夫だ。 他に知っていることはあるか?」
『…うちはそれぐらいしか知らない。』
『あとはC区域に着いたら他の子に聞いてみよう。』
「そうだな、わかった。」
車を30分ほど走らせるとC区域手前まで到着する。
暗くてあまり遠くまで見えないが周りの建物は崩壊している。
簡易的な防護壁と銃器や壊れた戦車、壊れた軍用車などが多々あり、防護壁は多少壊れている。
少しして中央近くまで来ると中央には修復された建物と機関銃が見える。
修復された建物は小さな1階建ての家のようだ。
中央建物以外にも修復されている建物がある。
中央手前までつくと軍用車のエンジンが止まり、アクセルを踏んでも走らなくなった。
燃料メーターを見ると燃料は空になっていた。
「ん…? 燃料がなくなったか…。」
『…歩いて行こう。』
「ルエ、道も悪いし靴も履いていないから背負うぞ。」
『…平気。』
『大丈夫、もう目の前。』
「そうなのか。」
中央の建物に明かりがついた。
誰かいるのだろう。
軍用車のライトを消して俺とルエ、レイは車のドアを開けて降りた。
建物に近づいていくと玄関の扉が開き、中に一人の少女が見える。
身長は150cmほどでレイ・アイリアと同じ青い目、猫耳のオレンジ色ショートヘアで横髪が肩下まで伸びていて、緑色のキャミソールに茶色のショートズボンを履いている災いの子の少女だ。
腰には弾薬を入れるウェストポーチを付けていて右手には懐中電灯を持っている。
建物の中にいる災いの子は建物から出てこちらに懐中電灯を向けると驚くように軽く叫んだ。
『――――――お兄ちゃん!?』
『ミーア――――――!!』
レイと同じ耳と髪型の災いの子はミーアで兄妹のようだ。
妹のミーアはとても嬉しそうに喜んで涙を浮かべながら駆け足でレイに近づいて抱きついた。
『レイ無事でよかった…!』
『ミーアも元気そうで良かった………。』
突然、自身の身動きが取れなくなる――――――。
何かに縛られているような感覚で全く動けない。
かろうじて指先が動く程度だ。
「――――――ッ!!」
すると、建物の奥からもう一人の災いの子が出てくる。
うさぎ耳の水色ロングヘアで赤い目をしている身長120cmほどの災いの子の少女だ。
左目上あたりの前髪にはピンク色のうさ耳型のヘアピンがついていて髪が分けられている。
うさぎ耳の災いの子は怒りを浮かべた表情で喋る。
『人間…なんでここにいるの………!!』
「E区域に行くためだッ――――――!!」
『E…区域っ………?!』
E区域という言葉にうさぎ耳の災いの子は驚き固まる。
E区域について何か知っていそうだ。
しかし、こちらは指一本も動かせない状況に陥っている。
恐らくうさぎ耳の災いの子による能力だろう。
ミーアは突然の出来事に驚く。
『セリカ――!? いったいどうしたの!?』
『人間ッ!! あいつらと一緒ってことなのッ!?』
「あいつら?! 俺は何も知らない!!」
『じゃあなんでE区域に行こうとするの!!』
「それは…わからない………。」
『わからない?! あんなところ…あんなところッ――――――!!』
うさぎ耳の災いの子、セリカは怒りに満ち溢れて能力が強まる。
苦しい――――――――――。
締め付けられているような感覚だ。
『…結界。』
ルエの声が聞こえると同時にセリカの能力が防がれカキーンっと何かが弾かれるような音を立てると、セリカにかけられた能力が消えてこちらは動けるようになり、セリカの体が少し後ろに反れた。
『なっ――――――!』
「動けるようになった………?」
締め付けられていた感覚が消え、手足も自由に動かせれるようになり後ろを振り向くとルエは右手を前に突き出していて能力を使い結界を発動させていた。
『何するのよッ!!』
『ぅっ――――――!』
ルエは突然膝をつき苦しみ始めると左手で口を押え咳を2回出した。
レイは焦り、止めるように仕向けるがルエの左手には少量の血がついている。
『無理に使っちゃだめだ!』
『…つい。』
魔力増強剤の副作用でルエの体が蝕まれている――――――。
ルエに能力を使わせるのは危険だが能力を使い続けている。
セリカの能力を防ぐためだろう。
止めなければ――――――。
『To be continued――』
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