Episode.9-1『人間と欲望』

 『Episode09.人間と欲望』





 異界のゲートがある場所から抜け出して一本道が終わると辺り一面建物も壁も全て破壊しつくされた跡があり、遠くには異界のゲートを通らずにすむA区域と繋がっていた橋は崩れていた。

 橋がいつ破壊されたのかわからないが現在は異界のゲートからしかA区域に行く道はなさそうだ。


 遠くにはデビル、ブローダー、シャドウも多々いるのが見える。




 「思った以上にひどい状態だな………。 急ぐか…。」




 俺は車の速度以上に能力で加速して移動を始め、追いかけてくる魔物はこちらに追いつけず、逃げ切った。



 30分ほど移動するとE区域が見えてくる。

 全区域より一番大きいE区域は要塞都市で、高さ30~40mの外壁は鉄と石材で乱雑に分厚く固められている。

 正面に1つのみの入り口は高さ20mの幅10mほどで巨大な左右にスライド開閉式扉と左右に監視塔が2つ。

 監視塔には人が見えて他からの侵入は不可能そうだ。




 「なるほど………念のため準備はした方がよさそうだな。」




 監視塔から見えない位置でラナを降ろして座り準備を始める。


 リボルバーをホルスターから取り出して赤いシリンダーを見る。

 赤い弾丸は後1発しかない。




 「やってみるか………。」




 手のひらに生成を試みて光が集まり生成されていくが青い弾丸入りのシリンダーが出来上がり、赤い弾丸は変わらず生成できそうにない。

 自身を能力で加速をして魔力を補充し続けていても不可能だ。

 持続した魔力というより一度に必要な魔力量が足りない気がする。




 「やっぱりだめか…………………。」




 赤い弾丸が入ったシリンダーを取り出して弾薬ポーチにしまい、青い弾丸入りのシリンダーをリボルバーに装填してホルスターにしまった。

 右手で腰からもう1丁の黒いリボルバーを取り出して左手に青い弾丸が入ったシリンダーを1つ生成して黒いリボルバーに青い弾薬入りシリンダーを装填した。

 2丁とも青い弾丸入りのリボルバーだ。


 黒いリボルバーを腰にしまい、ラナを再び横抱きして立ち上がる。




 「よし…あとは魔力増強剤を入手するだけだ………!」




 ゆっくりと歩きE区域の正面入り口付近にたどり着く。

 ここにたどり着いた途端から怒りが湧いてくる。

 何故かはわからない。



 左右の監視塔から武装した人間たちに銃を向けられ呼び止められる。




 『止まれッ――――――!』

 「魔力増強剤を1本でいい…! 魔力増強剤を!!」


 『それはできない! 直ちに立ち去れッ!』




 俺は下を向き呟く――――――――。




 「そうだったな……………どうせ………。」




 ラナを救うためなら――――――。


 たとえこの世界を敵に回したとしても――――――――――――――。




 「壊すだけだッ――――――――――――――!!」




 監視塔から銃をこちらに向けて躊躇なく射撃する気だ。

 それでも、突き進むだけだ――――――。




 『射撃開始ッ――――――――――――――!!』




 自身を能力で加速させて監視塔から撃ってくる銃弾を避けながら正面入り口に近づいていく。




 『化け物めッ――――!!』





 クリリアの能力で目の前の地面から大きな分厚い氷の壁を生成し、ラナを降ろして氷の壁に座らせた。

 監視塔から撃たれる銃弾は氷で防がれ貫通しない。




 「ラナ、ごめん。」




 両手にロケットランチャーのグリップから徐々に銃を生成する。

 長い筒状の先端にひし形のロケット弾が装填されたロケットランチャーが出来上がり、両肩に担いで氷の壁から姿をだして左右にある監視塔に向け、両方のトリガーを引いて撃った。




 『に、逃げろおぉぉッ――――!!』




 監視塔にロケット弾はロケットモーターを燃焼しながら煙をだして飛んでいき、監視塔にいる人間は逃げる間もなく爆発して破片を散らばせながら吹き飛んでいった。

 監視塔から人間の気配はなくなった。


 両手にもっている空のロケットランチャーを投げ捨てて右手にもう1丁ロケットランチャーを生成して正面入り口に撃つが、要塞都市の扉は頑丈で分厚く軽く傷が入る程度だった。




 「ダメか……………。」




 降ろして座らせていたラナを再び背負って正面入り口の目の前まで歩き、入り口に右手を当てた。




 「これならどうだ………!!」




 ディーナの破壊の能力を使うと厚さが5mほどある扉は粉々に吹き飛んで穴ができ、穴には亀裂が入って円形の3mほどの穴ができた――――――。

 それと同時にE区域全体に警報とアナウンスが鳴り始める。

 監視塔を破壊したことと入り口の開閉扉を破壊したことで警報が鳴ったのだろう。




 『侵入者あり――――――!』

 『総員、直ちに侵入者を撃破せよ――!!』

 『繰り返す――――――――――!』




 警報が鳴り響く中で俺は1歩ずつ確実に進み中に入る。



 俺はもう止まらない。

 仲間を殺された怒り、何もできなかった自分、E区域でセリカや他の災いの子が受けた屈辱、ラナが眠りについた怒りが――――――――無限に湧いて出てくる。

 E区域に来た途端からよくわからない怒りがあった。

 その答えもきっとこの中にある――――――――――――――そう感じた。




 「壊してやる……………。 邪魔する奴は全員ッ――――――――――!!」




 周りは修復された建物がほとんどで乱雑に鉄で補強された建物も多い。

 ほとんど崩れていないビルも多少あり、中央には幅が300、400m以上で高さは70mほどの巨大なドーム状の建物がある。

 しかし、市民がいる気配はなかった。


 武装した兵士が次々と色々な場所から駆け足で出てくる――。

 10人、20人、30人………勢いは止まらない。

 武装した兵士は防弾ベスト、フルフェイスヘルメット、手にはアサルトライフルやショットガンを持っている者もいる。

 市民は皆、兵士なのだろうか。



 兵士は銃をこちらに構えて射撃を始めた――――――。




 「邪魔だッ――――――――――!!」




 俺は走りながら自身を能力で加速して兵士が撃ってくる弾丸を避けながらクリリアの能力を使い、自分がいる場所から勢いよく広がって凍らせていき、兵士たちを凍らせて隠れていた兵士は鋭い氷の柱を生成して貫いていく。


 魔力増強剤があるであろう中心部に突き進んで巨大なドーム状の建物の前にたどり着いた。

 ドーム状の建物は高さ3、4mの鉄製スライド式開閉扉で封鎖されている――――。


 兵士を退けながらそのまま止まらずに走り続けて鉄製スライド式開閉扉に向けて高く飛び込み、扉を蹴りを入れて靴がドアに触れた瞬間、ディーナの破壊の能力で鉄製の扉を鉄の破片が散らばせながら吹き飛ばした――――――――。

 吹き飛ばして入った瞬間に見えたのは見覚えのある通路とたくさんの兵士。


 セリカが脱出するときに見た通路だ――――――――。



 たくさんの兵士は射撃を開始するが、全ての動きがとても遅く感じて空中で回転しながら弾丸を避けて着地する。

 多くの兵士は驚きのあまり足が1歩後ろへ下がる。



 叫びながら再び走り始める――――――――。




 「どけえええぇぇぇぇぇぇッ――――――――――――――!!!」




 兵士が撃ってくる弾丸避けながら辺りをクリリアの能力で一気に凍らせていき一部の兵士は鋭い氷の貫き、近い兵士は凍らせて走り抜けていく――――――。

 通路は何重にも氷の壁で塞いで追ってくる兵士を妨害する。


 複数の通路やたくさんの部屋、運び込まれている途中の物もあり、過去にセリカ、エリナが居たであろう部屋を横切る――――――。

 歯を食いしばりながら鋭い殺意を目に出してさらに進んでいく。



 兵士はいなくなり、中心部の入り口であろう大きな鉄製扉の前にたどり着く。

 目の前で立ち立ち止まって鉄製扉を蹴り飛ばし、ディーナの能力で粉々に破壊して鉄の破片を散らばせながら開けた――――――――――。




 ドーム状のひらけた場所。

 150mほどある円形の場所に高い位置には椅子が残っていて昔は観客席だったような場所だ。

 天井は70m近くあり、かなり広い。

 左側には強固な鉄製の扉がありカードスキャナーもある。

 強固な扉の周りは頑丈に作られている。


 周りには研究テーブルや制御装置らしき物、そして緑色の円柱形ガラスが一定間隔で並べて何個もあり、そこには液体が入っていて中には裸のまま災いの子が入っているのも存在する。

 円柱形ガラスの床に配線や太いチューブの物が繋がれている。

 様々な場所にあるため床に配線やチューブなどが沢山絡み合っている。


 そして中心には一人の男が背を向けて立っていた――――――。

 ここの管理者だろうか、男は喋り始める。




 『面白い。』

 「お前が…ここの管理者か………?」


 『そうだ。 私の名はグレイス。』




 黒いスーツ姿の男、グレイスはゆっくりと振り向くと左目には眼帯、ほんの少し年老いている。

 髪は灰色がかっているオールバックヘアーだ。


 この面影を見たことがある――――――――――。




 「お前………まさかあの時の…!!」




 そう、45年前に少年とうさぎを車で轢いた人物だ――――――――――――。














 『To be continued――』

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