Episode.8-3『終焉の地と異界ゲートの女王』


 真っ白な光の中、セリカの過去の記憶で見たメイドのエリナとセリカが手を繋いでいる後ろ姿が見える――――――。

 セリカはこちらに振り向き笑顔を見せ、涙をこぼした。




 聞こえる――――――――――。




 リオ――――――――――――ありがとう――――――――――――――――。




 セリカの言葉が脳内に響いて聞こえ、エリナとセリカは光に包まれて消えていった。






 気がつくと周りの光は消え、エステルの鬼の角と刃先が半分砕けたナイフの破片が落ちていた――。



 幻覚だったのだろうか?

 しかし、幻覚と思えないほどのリアルさがあった。

 能力の影響で見えた可能性もある。


 刃先が半分砕けたナイフを見つめて微笑み返した。




 「終わらせたよ、セリカ。」




 優しく言葉を残した後、折れたナイフを地面に刺してセリカの過去やエリナからの願いを思い出して俺は涙をこぼした。



 終わらせた――――――。


 人間である俺が――――――――――。



 割れた異空間異界のゲートは閉じないが周りの薄暗さは徐々に消えていき、コンテナや瓦礫、コンクリートや電柱、H工や鉄の破片など浮いていたすべての残骸がゆっくりと落ちてくる。

 倒れているラナの元へ急いで向かった――――――。




 「ラナっ――――――――!!」




 落ちてくる残骸を避けながらラナの元に向かい、ラナの元にたどり着くと浮いていた残骸は全て落ち終わった。

 壁に鋭い鉄と共に突き刺されているラナを見ると血だまりが出来ていて息をしていないのが分かる。

 ラナに刺さっている両手、両足、腹部と心臓に刺された鋭い鉄を全て抜いて投げ、ラナの首元を触って脈を確かめるが脈はなく、傷口は塞がらない。




 「ラナぁ…ラナあぁッ……………!!」




 ラナの刺された傷口に手を当ててフィーナの力で傷口を全て治すが息も脈も戻らない――。




 「こんなの嫌だ…!! ラナああぁぁぁぁぁッ――――――――――――!!」




 歯を食いしばり、俺は涙を流した。

 優しく持ち上げてラナを抱きかかえる――――――。


 暖かい――――――――――。




 「体温が……………下がっていない?」




 エステルに魔力を吸収されて魔力がない状態。

 魔力をどうにかすれば元に戻るかもしれない。


 ふと頭に言葉がよぎる――――――――――――――。




 「魔力増強剤………。」




 レイから聞いていたE区域が発明した魔力増強剤がE区域にはあるはずだ。




 「E区域…………………。」




 E区域という言葉が頭から離れなくなる。

 1つの可能性を信じてラナを横抱きして持ち上げた。




 「まだ………まだだ! 諦めるわけにはいかない!!」




 E区域、セリカが過去に囚われていた場所でもある。

 災いの子達がいいように扱われていた場所で、最悪な場所であることは確かだ。



 それでも――――――――――――。




 「腐れ切った場所…E区域に行くしかない――――――。」




 異空間異界のゲートは閉じないまま残っているが薄暗かった空間はすっかり消え、辺りははっきりと見えるようになり空が見える。

 空は青と色と黄色が混じっていてもうすぐで夕暮れだ。



 来た道の反対側に進み歩き、1本道を再び渡り始めてE区域に向かい始める――。

 ラナを横抱きして移動している間、ラナに意識を向けると俺の脳内にラナの記憶が流れてくる。











 戦闘教育学校でラナと出会う前の前日――――――――――――。

 ラナは家で絵本を読んでいる。




 絵本の名前はメイドと主人。

 絵本は乱雑に描かれた絵と文字。

 現代のような都市と可愛くも残酷に描かれた絵。



 ある日、世界に異界のゲートが開きました。

 世界は魔物に溢れ、闇に飲まれ、世界は崩壊への一方でした。


 そんなある時、一人のメイドと主人が出会いました。

 メイドと主人は壊れていく世界から逃れるため、旅に出ました。


 旅の中でたくさんの仲間と出会いました。

 しかし、仲間はみんな死んでいってしまいました。


 そしてメイドと主人は戦うことを決意しました。

 戦いを続けてメイドと主人は強くなっていきました。


 そんな中、世界を破滅に導くサーストと戦いメイドと主人は負けてしまいました。

 主人だけ生き残り、メイドを抱えたまま――。



 記憶が途切れる――――――――――――――――。




 1週間後――――――――――。




 メイドと主人、2章目の途中。

 サーストの絵は怖い鬼の姿だ。

 少しデビルに似ているような気もする。



 主人は仲間を助け続けました。

 助けた仲間と共にサーストと戦い、主人は勝利しました。


 平和が訪れたと喜びをあげました。

 しかし、メイドを助けられずいました。


 主人はメイドを助けるため、仲間たちと共に助けに行きました。

 そして、クラティアと戦うことになりました。


 クラティアはとても強く、圧倒され続けました。

 主人はメイドを助けようとするも圧倒され、仲間を――。




 記憶がまた途切れる――――――――――――――――――――。




 誕生日、ラナと会う日の少し前――――――。




 メイドと主人、3章目の途中。

 世界が変わっている。

 都市の形はなく、石材で出来た建物がほとんどでファンタジーのような世界だ。

 山と森と自然も多い。



 メイドと仲間たちはクラティアの手下におされ、絶望の状態。

 心を折られた主人は立ち上がることはできないままでした。


 そんな中、過去に助け、生き延びていた仲間が助けに来てくれました。

 心を折られた主人は生き延びていた仲間に心を救われました。


 みんながやられる寸前、主人は立ち上がりました。

 そして、攻撃を全て弾き飛ばしました。


 再び立ち上がった主人はメイド、仲間を守るため戦い始めました。

 これが最後の――。




 記憶が途切れ何も見えなくなる――――――――――――。











 絵本の内容が気になり頭同士くっつけるが、途切れた記憶は見えない――――。

 今の状況と絵本は少し似ている部分があり、俺は驚いたが未来を予知するなんて不可能だ。

 それに未来を予知できる能力があるかもしれないが45年以上も前の絵本で能力も存在しなかったはずだ。

 予知できるはずがない。




 「サースト………エステル・サースト…同じ名前? 気になるが…今はE区域に行くのみだ。」




 ラナを横抱きしながら、1本道をひたすら歩き続けた――――――――――――。
















 『To be continued――』

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