Episode.8-1『終焉の地と異界ゲートの女王』


 『Episode08.終焉の地と異界ゲートの女王』





 一番強い記憶が見えたのだろうか。

 B区域で起きたことは見れなかった――――――。


 思いもよらない記憶を見たが詳しい内容は言わないことにした。




 『ご主人…? どうしたの?』

 「………いや、B区域で何が起こったか見ようとしたが見れなかっただけだ。 それに今は異界のゲートの方が優先だ。」




 クリリアが言っていたミーミという存在が気になるが、これだけは先にやらなければならない。




 『休まなくて大丈夫なの………?』

 「能力をたくさん使ったのもある…流石に少し休むか………。」




 少し離れた場所に移動し、1mほどの壊れた小さい壁を背にして足を延ばして座り、アサルトライフルを置くとラナは正面から膝に乗ってきた。




 『えへへ…ご主人。』

 「ん………?」




 ラナは両腕をこちらの背中に回して抱き着いてくる。




 『大好きなの………。』

 「ああ…俺もだ………。」


 『えへへ………。』




 こちらの体にラナは頭をくっつけてすりつき、目を瞑った。

 ラナを抱き返して頭を優しくなでてそのまま同じく目を瞑る。




 1時間ほど休んで目を開けた――――――。

 ラナはすでに半目を開けていた。




 「ん……………。」




 ラナは起きたことに気が付くと、とても不安そうに声をだした。




 『ご主人………。』

 「どうした………?」


 『やっぱりなんでもないの………。』




 ラナは軽く服にしがみついて少し強く抱き着いてきた。

 この先に行くのが嫌そうにも見える。



 災いカタストロフィが始まった地にいけば何が起こるかわからない。

 不死の力があるとは言え殺される可能性だってある。


 勝てるかはわからない。

 それでも俺がやらなければならない――――――。


 俺が元凶でもあり、約束もある――――――。




 全てを終わらせる為に――――――。




 「………行くのが辛いなら俺一人で終わらせて来る。」

 『んーん…ラナもついてくの………。』


 「無理はするなよ………?」

 『うん……………。』




 アサルトライフルを右手に持ち、ラナと一緒に立ち上がって異界のゲートの方に体を向けた。




 「行こう…異界のゲート、エステルの所へ!」




 俺とラナは異界のゲートの方へ歩き始めた――――――。




 異界のゲートの周辺は赤く、薄暗く、建物の残骸や電柱、コンテナなど様々な物が浮いている。

 薄暗いためあまり遠くは見えず、横幅10mほどの一本道だけで他の地面は深くえぐれていて底は見えない。


 落ちたらまず戻れないだろう――――。


 異様な空間の中に一本道をゆっくりと進むと徐々に中央地点が見えてくる。

 中央は約100m~150mほどの円形の地面で、星の記憶が20~30ほどあり薄っすらとたくさん輝いていた。

 反対側には同じ道がありE区域の方へ行くことが可能になっている。

 中央の頭上にはガラスのようにひび割れていて10mほど空間が裂けた異空間も見える。

 異空間異界のゲートの中は紫色の宇宙空間のようで前世でみた同じ空間だ。


 そして中央には170cmほどの女性。

 頭には黒い鬼の角が2つあり、肌は青白く微かにピンク色をしている白いロングヘアで右目は金色に輝き、左目は赤い目。

 服はなく、レースのあるゴシックの下着だけで胸はロングブラジャーで十字架が付いている。


 前世の記憶で見たエステル・サースト、前世の幼いリオは時の流れが止まったように今も存在していた。

 エステルは変わらず幼いリオの首を掴んだまま動けずいた――――――。



 中央へたどり着くとエステルはニヤリと笑って喋った。




 『また養分が来たか………。 あははは!!』

 「………45年ぶりだな、エステル。」




 エステルは目を細めて観察して考え、エステルは気づく。




 『ん…? ほう、なるほど…貴様の魂、転生して戻ってきたのか!!』


 『ラナの罪…終わらせるの!!』


 『あははは!! 二人もあの時と変わらぬな!! 二人ともまた別世界へ行くと思ったがな!! まさか戻ってくるとはな!』




 別世界、頭上にある空間が割れている異空間異界のゲートの先のことだろうか。

 別世界はどんな場所かわからないが、別世界に繋がっているのは間違いない。




 「エステル…前世の続きを始めようじゃないか………!」

 『今度は二人一緒なの!!』




 アサルトライフルを両手で構えてラナはナイフを腰から右手と左手でそれぞれ取り出し、左手のナイフは逆手に持って構えた。


 エステルは鋭く尖った鉄、家の残骸、岩など様々な物を近くに寄せ、そのまま浮遊している――――――。

 重力操作の能力だ。




 「やってやる――――――!!」

 『来いッ――――――!!』




 浮遊していた物がこちらに勢いよく飛んで来る――――――――。

 大きなものは避けて小さなものはラナがナイフで次々に切り落とした。

 その隙にエステルにアサルトライフルを向けて残りの10発、全弾撃った――。


 エステルの前で弾丸は止まっていて1発も当たっていない。




 『無駄だ………!』




 エステルの前で止まった弾丸は、圧縮されたように潰れて足元に落ちていく。

 ラナは走り、接近してエステルに向かって飛び込んだ――――――。




 『はぁぁぁッ――――――!!』




 ラナが切り込もうとした瞬間、飛び込んだ勢いが一気に止まり空中で完全に静止し、ラナは後ろに吹き飛ばされてコンテナに激突した――――――。

 コンテナはぶつかった衝撃でへこんでラナはそのまま地面に滑り落ちた。




 『うッ――――――!!』

 「ラナッ――――――――――!!」




 アサルトライフルのグレネードランチャーに左人差し指をかけてトリガーを引いてグレネード弾をエステルに撃ったがグレネード弾はエステルの目の前で上に吹き飛び、空中にある瓦礫にぶつかり爆発した。




 『あはははははは! 花火だな!!』




 ラナは立ち上がると同時に右手のナイフをエステルへ投げた。

 風を切り裂きながら弾丸と同じぐらいの速度で飛んでいったナイフはエステルの前で一瞬にして勢いを失って止まり、静止したナイフをエステルは左手で持った。




 『この程度か? つまらぬな。』




 グレネードランチャーをスライドして開き、最後のグレネード弾を左手で取り出してグレネードランチャーに装填が完了する寸前、エステルはナイフをこちらに投げて飛んでいる途中にナイフは突然加速し、対応できないまま避けられず右腕にナイフが刺さった――――――。

 刺された反動でアサルトライフルが吹き飛んで血が出る――――――。




 「ぐッ――――――!!」

 『ご主人!! ………ゆるさないの!!』




 ラナは左手のナイフを再び投げてナイフを太ももから右手と左手それぞれ2つ取り出して左手は逆手に持ち、長距離から強く踏み込み飛びかかった。

 エステルは飛んできたナイフを目の前で止め、空中でラナの方にナイフが向いてそのままナイフはラナに飛んでいった。

 飛んで来るナイフをラナは空中で左手のナイフ使い左下から右上にかけて振り、受け流した勢いでそのまま右に1回転して、右手のナイフで切りつけようとするがエステルの目の前で急に真下に落ちて地面に叩きつけられた――――――。




 『っぅ――――――!!』

 「くっ…。 聞いてた通りだな………。」


 『無駄だと言ったはずだぞ………?』




 俺は右腕に刺さったナイフを左手で引き抜いて投げ、近くの地面に突き刺した。




 「ッ――――――重力操作…思ってた以上に面倒だな………。」

 『分かっていたところで対処できまい………!!』


 「………これならどうだ!!」




 ホルスターからリボルバーを素早く左手で取り出して構え、撃った。

 大きな衝撃波と共に赤い軌道を描きながら弾丸が飛んでいく。


 しかし弾丸はエステルの目の前で減速して弾丸は止まらずゆっくりと回転しながら進み続けた。




 『ほう…変わった弾だな? 当たったらさぞ痛かろう。』




 エステルは左手を弾丸にかざし、握りつぶす動作をするが弾丸は潰れず進み続ける。




 『潰れぬか。 面白い。』




 エステルが左手を下から上に上げると、弾丸がこちら方に向いて飛んで来る――。




 「なっ――――――――!!」




 クリリアの能力を使って地面から氷の壁を作り、飛んできた弾丸を氷で閉じ込めたが爆発はある程度抑えられたものの氷は砕け散り、爆風で後ろへ吹き飛んで崩れたコンクリートの壁にぶつかった。




 「ぐぁっ――――――!!」

 『あははは!! そのような弾薬を作れるとはな!! 面白いではないか!!』




 ラナは重力に抗いつつ徐々に立ち上がる。




 『ぅぅ…ああぁぁっ――――――!!』


 『ほう…この重力に耐えるか。』




 エステルは尖った鉄パイプを引き寄せた後、ラナに尖った鉄パイプを飛ばしてラナの胸に尖った鉄パイプが貫通し血が飛び散った。

 ラナは再び倒れ込んだ――――――。




 『がぁっ――――――!!』


 『致命傷を負っても死なぬとは…不死のようだな?』




 ラナの元に近づこうとした瞬間、重力が全身にかかり、うつ伏せに倒れてしまい身動きが取れなくなる――――――。

 潰されるような重さだ。




 「――――――!! くっ…そ………!!」

 『遊びはここまでにしておこうではないか。』


 「なんだと………!」

 『そうだな…今度は先にこちらから痛めつけてやろうじゃないか。』




 ラナは浮かび上がり、エステルの方に引き寄せられる。




 「ラナッ!!」

 『動けない…の………!!』




 ラナはエステルの前で浮いたまま止まり、エステルは右口角を上げにやりと笑う。

 それと同時に何本もの鋭い鉄パイプが引き寄せられエステルの手元へ集まってくる。




 『絶望するがいい――――――――――!!』














 『To be continued――』

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