Episode.7-3『家族と安息』
(手榴弾をまた生成して目の前で爆発するしかないのか…? だめだリスクが大きすぎる。)
『またおもちゃを出しても無駄だよ? 可愛いお人形さんが粉々になっちゃうかもしれないよ? あはは!!』
(……………いや、ある。)
『ご主人…ラナのことは気にしないでほしいの………。』
「………ラナ、約束したはずだ。」
火薬の入っていないピンが抜かれた状態の手榴弾を目の前に生成し始めて完成すると同時に手榴弾が地面に転がり落ちた。
『あはは!! 言ったよね! 粉々になっちゃうよって!!』
ルルはラナを操り手榴弾に覆いかぶさるようにラナを地面に滑り込ませる。
その隙にもう一つピンが抜かれた状態の閃光手榴弾を生成して自身の後ろから地面に転がり落ちた――――――。
俺は目を瞑り、閃光手榴弾は爆発して強烈な光と強い音を放った。
後ろで炸裂したことや目を瞑ったことである程度光は抑えられたがそれでも眩しく、音は防ぐことができなくて周りの音はキーン!という音で何も聞こえない。
閃光弾の不意打ちを食らったルルの能力は緩み、同時に動けるようになった。
素早くアサルトライフルを構えてルルに5発撃ち込んだ――――――。
「なっ……………。」
しかし、銃弾は横から飛んできたシャドウの死体に防がれてしまう――――――。
音はすぐに治り、ルルの声は普通に聞こえる。
『あはは!! 悪い子はお仕置きだよ!』
後ろの死体から細長く鋭い鉄を背中から刺され、体を貫通して血が前に飛び散り、口から血が垂れた――――――――――――――。
「がぁっ………。」
能力の使い過ぎで意識が大分薄くなってきている――――――――――。
これ以上、他の能力もしくは致命傷を負って不死の能力が発動すれば意識を失うだろう。
『ご主人を………これ以上いじめないでッ…!!』
ラナはナイフを強く握りしめて力を振り絞り素早く起き上がると同時にルルをナイフで切り込んだ。
ルルは少し回避が遅れて右頬をナイフがかすったがラナはすぐにその場で動けなくなった――――――。
『いたた………私の能力を破るなんてすごい力だね…? でも悪い子はお仕置きだよ?』
ラナも二体の死体から細長く鋭い鉄で両腕を刺されたままになった――。
『ぅっ………。』
「やめろっ…!!」
『ちゃんといい子で居てね! あはは!』
(こうなったら自己犠牲になってでもッ……………!!)
俺は意識を失う覚悟で能力を使おうとした瞬間、急激に寒くなり始めた――。
後ろから聞こえる声は、聞いたことがある。
クリリアの声だ――――――――――。
『無様な姿だな人間ッ………。』
クリリアの姿を見ると、凄まじい殺気と共にこちらに向かってくるのが見える。
クリリアの瞳には輝きがなく、顔や髪、服には血が付き、服は所々破れてぼろぼろになっている。
「クリリア………! 来ちゃだめだ! 俺らは操られてる!!」
『操りだと…? 殺してやるッ――――――!!』
操りという言葉にクリリアは殺意はさらに強くなり、鋭く睨みつけて冷気を放った。
『あなたも家族にしてあげるよ!』
『家族だと…? 私の家族はディーナとフィーナ…そしてレーネだった!!
それなのに…あいつに……………!! くそがあああぁッ!!!』
「一体何があった………!?」
『大規模な魔物と共にミーミってやつが来たんだ……………そいつがみんなの精神を乗っ取って…乗っ取って!!! あああぁぁぁァァァ!!!!』
クリリアは発狂して壊れている――――――――――。
一体何があったのだろうか。
精神を乗っ取って何をされたのかわからないがクリリアのについている血と他の子がいるからB区域をでないと言っていたことを考えると他の子は殺された可能性が高い。
ミーミという人物に何かされたのは間違いない。
そしてミーミという言葉に俺は何故か血の気が引いた。
「く、クリリア………!?」
『みんな殺し合いを……………殺し合いをさせやがったッ!!!』
やはりそうだ。
ミーミが仲間同士に殺し合いをさせたとなると壊れていてもおかしくはない。
クリリアの精神も乗っ取られているのであればこちらも殺される可能性がある。
しかし、乗っ取られている感じはしない。
だが今の精神状態だと何をされるかわからない。
『私の家族になったら死んでもずーっと一緒だよ!!』
無数の死体がクリリアの方へ向き、動き始めた。
『殺してやる………殺してやる…殺してやるッ!!!』
クリリアは右手で自身の頬から血が出るほど引っかいて叫んだ――――――。
『みんな死んでしまえェッ――――――――――――――――――!!!』
死体が一斉に襲い掛かる瞬間、クリリアの足元から凍っていき、クリリアの近くから複数の死体が一瞬にして凍り付いて氷の塊ができた。
凍り付いた死体は動くことができないまま凍り続けている。
あまりの状況にルルは驚きを隠せないでいた。
『え……………?』
クリリアは右手に氷の剣を作り出して周りの死体を凍らせながら凄まじい勢いでルルに距離を詰めていき、10秒もたたないうちにこちらの目の前まで迫ってきた。
ルルは急いで指示を出した――――――。
『動いて――――――――!!』
俺とラナは一緒にルルを守るように体が勝手に動かされた――――――。
「まずい………!!」
『逃げてなの!!』
『黙ってろッ――――――――――!!!』
クリリアに俺とラナの手足は凍らされ、その隙にクリリアはルルに飛びついて氷の剣でルルの心臓を貫いた――――――――――――――。
『ぁ…っ………。 あは………あはは………………………。』
ルルは両手でクリリアにしがみつき、クリリアは身動きが取れなくなる。
『お姉ちゃん………捕まえたよ…。 私は家族とずっと一緒――――――!!』
ルルが持っている熊のぬいぐるみから、ピッ――――っと音を立て、カチカチと時計のような音が鳴り始める。
クリリアは抵抗して離れようとするがルルの力はとても強く、離れられていない。
『くっ――――――!!』
クリリアは熊のぬいぐるみを凍らせるが、音は止まらない――――。
『………そうだったな。』
クリリアは抵抗をやめ、全身の力は抜けてすべての感情がなくなり、こちらに手をかざして俺とラナ、ルルとクリリアの間に分厚い氷の壁を作った。
『レーネ――――――――――――。』
クリリアの呟く声が聞こえた瞬間、光に包まれた――――――――――。
6時間前――――――――――――――――――。
リオ、ラナ、セリカが出て行った後。
レーネが私に話しかけてくる。
『もし、あの子たちが困ってたら助けてあげてね。』
「なんでだ? 人間は助けん。」
『もうあなたはそんなに冷たくならなくていいじゃない。』
「それは私が決める。」
『人間を凍らせるだけで殺してないことも知ってるわ。 クリリア、本当のあなたは氷のように冷たくなんかないからね。』
「…………………………。」
レーネは私の目の前でにっこりと眩しく、温かく笑う。
記憶を見られていないがレーネには敵わないな…すぐに見抜かれてしまう。
レーネ…私は結局………。
『だから今度からは助けることね、約束――――――。』
最後まで冷たくなれなかった――――――――――――――――――。
大爆発の音と共に分厚い氷の壁にひびが入った――――――。
「クリリアッ――――――――――!!」
ルルの能力が解け、自由に動けるようになった。
凍らされた手足をラナは力を振り絞り勢いよく氷を破壊し、俺はディーナの力で氷を破壊して抜け出した。
氷の壁を回り込み、ルルとクリリアが居た場所を見に行くとそこには飛び散った血と大量の血だまり、そして下半身がないクリリアの死体――――――――――。
口から血が出ているクリリアは半分、目を開けたままで生気がない。
ルルは粉々に吹き飛んだのか跡形もなかった。
「…………………俺のせいだ。」
『ご主人は悪くないの…。』
「また………俺は…何もできないまま…。」
ラナが抱き着いてくる。
『ご主人………大丈夫なの。』
「ああ…すまない。」
クリリアのところまで移動して目の前でしゃがんでクリリアの目を手で動かし閉じさせた。
するとクリリアの記憶の断片が頭に流れ込んでくる――――――――――。
『To be continued――』
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