Episode.7-1『家族と安息』


 『Episode07.家族と安息』





 意識がゆっくりと戻る――――――。


 長い夢を見ているような感覚だった。

 どれぐらいの時間が経ったのかわからない。


 気が付くと俺は涙を流していた――――――――。




 「ん…………………。」




 意識が完全に戻り視界が広がった。


 セリカと一緒に倒れていた俺は体を起こして辺りを見渡した。


 辺りは切り刻まれたデビル、シャドウ、そして打撃だけでブローダーを倒した死体が40から50体ほどあり、少し離れた場所には立ったまま硬直しているラナの後ろ姿が見え、ラナの腹部には槍が刺さっていた。

 ラナはデビルの槍やシャドウの鋭い爪の切り傷があっただろう箇所がいくつもあって服もぼろぼろになっている。


 俺は慌てて声を掛けた――――――――――。




 「ラナっ……………!」

 『ご…主人……………………。』




 ラナはこちらに気づき振り向くが、弱っているラナは咳き込むと同時に血を吐き出し、俺は急いで起き上がりラナの元へ駆けつけた。




 『ラナ………ちゃんと守れた…かな…。 ラナちょっと疲れたの……………。』




 ラナはふらふらとしていて今にも倒れそうだ。




 「ああ…すまない………。 お腹に刺された槍…抜くぞ………?」

 『うん……………。』




 ラナに刺さっていた腹部の槍を抜くと出血と共にラナはよろけて俺の方へ倒れ込んだ。




 『うっぅ………。』

 「大丈夫か…?」




 ラナの血の止まりが遅く、腹部の治りも遅くなっている。

 能力の使い過ぎなのだろうか。


 ラナの腹部の傷に手を当ててフィーナの力を使い、ラナの腹部に空いた穴と傷を治した。




 『ラナ…ちょっと休むの………。』

 「ああ………休んでくれ……………。」




 ラナを優しく抱くとラナは抱き返してきた。

 ラナは弱々しく喋り続ける。




 『えへへ…ご主人にぎゅーされたの……………。』




 ラナを横に抱えて持ち上げ、近くの壁に運んで座り込ませた。




 「終わらせたら…平和なところで一緒に暮らそう。」

 『うん………ご主人とずっと一緒にいるの……………。』




 ラナが目を閉じた後、体の力が抜けていった。

 ラナも不死の能力が発動しすぎたことが原因で気絶状態なのだろう。


 俺は確信した。

 間違いない、ラナの能力は不死で俺の能力は災いの子の能力を同じく使うことができる。

 しかし、何故人間の俺が使えるかはわからない。


 飛んでいったアサルトライフルを拾い上げて肩に掛けた。

 感覚を研ぎ澄ませて辺りの気配を感じ取るとまだ魔物の気配が感じられた。

 建物の壁の裏に潜んでいる魔物に目掛けて左手でリボルバーをホルスターから取り出し、構えて最後の弾を撃った――――――――。

 建物の壁は炸裂して破片が飛び散り、大きな穴が開いてブローダーの頭に命中し、頭は吹き飛び、血を流しながら倒れた。




 「また能力を使いすぎたら倒れるかもしれない………一気に片づけてやる…!」




 シリンダーラッチを押し、空になった青い弾薬シリンダーを外して投げ捨て、ウェストポーチから赤い弾薬シリンダーを取り出し、シリンダーをリボルバーに装填した。

 赤い弾薬シリンダーは弾薬とシリンダー共に赤く輝いているのがはっきりと見える。

 そして、赤い弾薬だけは作れそうにない。

 作成するには今現在の許容量を超えて作成しなければ不可能に感じる。




 「さぁ……………今度は俺が相手だッ――――――――――――――!!」




 右手にアサルトライフルを持って左手にはリボルバーを持ち、目立つように走り出して俺が囮になるようにラナから離れた――――――。


 能力をはっきりと使えるようになってから体が軽い。

 人間とは少しかけ離れた速度で走れて魔物の動きも目で追える。


 隠れている魔物は次々と姿を現し、追いかけてくる。

 デビルが投げる槍は目で追うことにより当たる寸前でギリギリ避けることができ、飛んでくる槍を避けながら追いかけてくるシャドウにはセリカの能力を使い動きを鈍らせ、右足をスピンさせて振り向いてデビルの槍を飛んで後ろに避けたあとアサルトライフルをシャドウに向け、腰で構えて撃ち続けた。




 「遅いッ――――――――――!!」




 1体、2体、3体………次々とシャドウに命中し、シャドウは血を流し倒れていく。


 再び走り始めて前方から出てくるシャドウやデビルにもアサルトライフルを腰で構え撃ち続け、ブローダーを避けつつ異界のゲート方面のA区域出口まで走ってA区域出口で立ち止まり、後ろを振り向きリボルバーを構えた。

 デビルとブローダーが数十体止まり戦闘態勢に入る。

 それに合わせ左手でリボルバーを構えた。




 「こんなもんか……………じゃあな。」




 リボルバーのトリガーを引くと大きな衝撃波と凄まじい銃声が鳴り響き弾丸が発射された。

 反動は以前よりも耐えることができて片手でも問題なく撃てるがそれでも大きく上に腕が上がってしまう。

 弾丸は赤い軌道を描きなが魔物が数十体いる中央のブローダーに命中し、命中した場所から大きな1軒家を吹き飛ばすほどの爆発を起こして爆発は魔物をすべて吹き飛ばしていく。


 爆発の煙が晴れる頃には魔物たちの姿は塵となっていて何も残らなかった。

 リボルバーをホルスターにしまい、アサルトライフルのマガジンリリースボタンを押して空のマガジンを落とし、新しいマガジンを腰のベルトから取り出しアサルトライフルに装填してリロードを済ませ、アサルトライフルを肩に掛けた。


 残りの弾薬は装填合わせてアサルトライフルのマガジン2つ、グレネード弾3つ、赤い弾薬4発、青い弾丸6発だ。




 「……………戻ろう。」




 ラナの所へ戻る途中、セリカが撃たれ落としたナイフを拾い上げて俺はナイフを見てセリカの過去を思い出した――――――――――。



 辛い過去を持ちながらもセリカは強く生きていたんだ。

 その過去があったからこそ人間の男が苦手だったのだろう。

 そんな中でもついてきてくれて手助けをしてくれた。



 俺は何もしてやれなかった――――――――――――――――――。



 エリナから受け継がれた大切なナイフ、そしてうさぎのヘアピン。

 ナイフを貸してくれなかった理由もわかった。

 大切な物だったからだ。



 だけど、今度は俺が――――――――。




 「エリナからもらった大切なナイフ………セリカ、俺が必ず終わらせてやる。」




 ナイフを背中のベルトに挟んでしまい、ラナの元へ戻った。

 ラナが居た場所に戻るとラナは薄っすらと目を覚ましていた。




 『えへへ…ご主人おかえりなさいなの………。』

 「大丈夫か……………?」


 『もう平気なの………。』




 俺が気絶していた間、長い戦いの中で大変だっただろう。

 ラナを休ませてから時間があまり経っていない為、ラナはまだ辛そうに見える。


 ラナの前で後ろを振り向きしゃがんだ。




 「………こっちにおいで。」




 ラナは後ろからゆっくりと抱き着いて来てラナを背中に背負い、俺は立ち上がった。




 『えへへ………ご主人に背負われるの好きなの…。』

 「ああ…もう少し楽にしてていいからな……………。」


 『うん……………!』




 セリカが倒れている目の前に立って俺は目を閉じ、セリカの過去にあったことを思い出しながら喋る。




 「約束だからな………。」

 『約束……………?』




 ラナはなんの約束か理解できていないがセリカの過去にあったことは誰にも言わないことにした。

 俺は目を開き、簡単に説明した。




 「この世界を終わらせる約束だ。」

 『ラナも一緒なの!』




 異界のゲート方面に体を向け決心する。




 「行こう、終わらせに。」

 『うん!』






 ラナを背負いながら歩き続けてA区域を抜けた先、異界のゲート手前のひらけた場所。

 異界のゲートの周辺は薄暗く赤く光っていて、瓦礫や物が沢山浮いている。

 周りの地面はえぐれていて一本の道がある程度。


 手前の場所は道路などなく土がほとんど露出していて、瓦礫はあるものの、建物があったであろう物がほとんどで、地面から少しコンクリートが飛び出ている程度で隠れれる場所はほとんどない。



 無数の魔物の死骸と人間の死体の数々があり、つい最近の新しい死体や腐敗している死体など様々で奥には一人の幼い災いの子が立っているのが見える。


 140㎝ぐらいの災いの子は薄紫色のショートヘアにたれ猫耳で、血や土汚れが付いた大きい白いTシャツを着ている。

 手にはお腹が縫われ、お腹が膨らんだ熊のぬいぐるみを持っている。

 災いの子の近くには元々は人間だったであろう骨が2人分ある。


 ラナを背中から降ろして近づいていくと、災いの子はこちらに気づき喋り出す。

 アサルトライフルを肩から取り出し構えた。




 『あなたも私の家族にしてあげる。』

 「お前は敵か………?」


 『私はルル・トラジディー………。 敵? 家族だよ…?』




 災いの子、ルルはゆっくりと口を大きくにっこりとさせ笑った――――――――。














 『To be continued――』

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