Episode.'!$#&%『セリカ・アレスティ』


 私は親に捨てられた災いの子。

 別の災いの子に育たれて私は生きていた。

 けど、その子は魔物によって殺され、当てもなく無法地帯をさまよい続け…そして私はE区域の中央施設に――――――――。




 あの日になるまで私は――――――――――――――。




 無法地帯に居た私は眼帯を着けた人間によって捕まっていた。

 私はE区域の中央施設にある無能力者施設にいる。

 無能力者施設は何も能力を持たない者を研究、解体、調教…様々なことをされている。



 そんな中、私は人間のペット…いや、おもちゃにされていた――――――。



 人間離れした力?

 能力を使えば逃げられる?



 そんなこともできなかった。



 首輪によってその力は制御されていた。

 黒みがかった灰色のドーナツ形の首輪。

 小さな四角い緑色の発光と細長い透明な部分。

 透明な部分には赤い液体が入っているのが見える。


 この首輪はただの首輪じゃない。

 災いの子の魔力、もとい血が入った首輪。

 災いの子から抽出された血、その子の能力は力の弱体化だった。



 私は…どれぐらい犯されたのだろうか。

 私は…どのくらい汚されたのだろうか。

 私は…このまま朽ちていくのだろうか。



 わからない――――――――――――。



 薄暗い部屋の中、少し湿った匂いと男の匂い。

 周りには縛り付ける物や痛みつける道具もある。


 副管理者の男は私をおもちゃのように扱っていた。




 『ちゃんと言わなきゃだめじゃないか。』

 「ご主人様………私を…好きなように使ってください……………。」




 私は言われたことを言うだけ………。

 心も体も壊され続けていくだけ……………。



 ぐちゃぐちゃに犯された中、副管理者が雇っていたメイドは私に優しくしてくれた。


 私の中で唯一の光だった――――――――――。


 メイドの名前はわからない。

 うさぎのヘアピンを前髪に着けた黒髪ロングヘアで155㎝ほどの人間。


 副管理者が居ない時、いつも私の体を洗ってくれたり周りのお掃除をしたりなど世話をしてくれた。

 そして私にいつも話しかけてきてくれた。




 『どうしてこんな世界になっちゃったんだろうね…ごめんね…私何もできなくて………。』

 「もう…生きたくない………ねえ…私を殺してよ…もうこんなの嫌よ………。」


 『私が殺した所であなたと一緒に死ぬだけよ…? でも、もしセリカがそれを望むなら私はセリカを殺してあげます………。』

 「あなたは助からないの………?」


 『私は………力もなく…無力だから…ごめんね…。』




 メイドは優しく私を抱きかかえてくれた。

 私を殺せば、メイドは犯人とされ、殺されてしまう可能性がある。



 私はどうしたら――――――――――。




 その後もひどく犯された時や何も言わなくなった時でも、メイドは私の体を洗いながら優しくし続けてくれた。




 『私の両親は災いの子に殺されたの。』

 『でもそのことは恨んでないの。』

 『どうしてって…? それはね、本当に悪いのはこの世界を作り上げた人だから。』




 私はただただ聞いていた。




 『私ね、もし力があったらこの世界を救いたいの…。』

 『私も災いの子の力があればって…いつも思うの…。』

 『でも………叶わない…。』



 『セリカはもし、この世界を変えられるとしたらどうしたい…? そのまま壊してしまいたい………?』




 私は………わからない――――――――――。



 救う?


 こんな世界になった今、救ったところでどうなるの?



 だから壊す?


 それも違う…わからない――――――――――。




 『もし………もしも…ここから逃げ出せるとしたらセリカはどうするの…?』




 逃げ出せたらどうする?


 わからない、わからないよ――――――――――。




 『私ね、見つけたの。』


 『カードキー。』

 「……………!!」




 その時、私はぼーっとしていた意識が少し戻った。


 メイドはカードキーを取り出すとこちらに見せた――――――。

 そのカードキーは首輪の装置を外すための物だった。




 『これでどこにでも逃げれるよ………?』

 「……………どうして。」


 『私のことは気にしないでいいの。』

 「わからないわよ………私、どうしたらいいのかも…。」


 『じゃあ、私のお願い…聞いてもらっていい…?』

 「お願い………?」


 『副管理者を殺して――――――。』




 私は言葉を失った――――――――――。



 殺す………?

 どうして……………?

 少なくともメイドには何もされてないはずなのに何故?




 『まぁ…いきなり無理もないよね………。』

 『あの人が生きている限りセリカのような子をまた見つけ出して壊し続けるわ。』

 『もう疲れたの…これ以上、災いの子達が壊されて行くのを見たくないの…。』




 メイドはとても辛い表情をしていた。

 メイドは他の災いの子も世話をしている。

 私以外の災いの子も壊されていっているんだ。


 私の首輪にカードキーを近づけると認証音と共にガチャっと外れ、首輪が落ちる。

 メイドはさらにナイフを取り出し、ナイフを一本渡され、右手で受け取った。




 『並外れた力でこのナイフだけでも出られるはず………。』




 メイドは部屋のカードキーを取り出し、ドア横にあるカードスキャナーにカードキーを縦にスライドさせ認証すると部屋のドアが開いた。




 『もうセリカの自由よ………? 殺すも殺さないも…あなたの自由…。』




 メイドは笑顔でこちらを見ている………けど、その笑顔はとても辛そうなのが分かる。


 副管理者を殺せばこの子は救われるの?

 災いの子達も捕まらずに済むの?

 私の手で………終わらせれるなら……………。



 私は――――――――――。




 「………名前教えて。」

 『私の………? 私はエリナ。』


 「エリナちゃん、今度は私が助けるね……………。」




 魔力弱体化装置が外れたこともあり、エリナちゃんを助ける為に、と思うと力がどんどん湧いて来る。

 私はナイフを強く握りしめて立ち上がり、部屋を出た。

 部屋を出ると長い通路や分かれ道とたくさんの部屋がある。


 通路を走っていくけど警備兵がいる。

 警備兵はフルフェイスヘルメットに防弾ベスト、そしてアサルトライフルを持って巡回している。

 こちらに気づき銃を構えてくる。




 『なっ!! 災いの子――――――!!』

 『は、早すぎるッ――――――!!』




 あの男の匂いを感じる――――――――――。


 匂いをたどり、通路を素早く駆け抜け、ナイフで警備兵の手足や首を切り裂きながら進んでいく。

 今の私は車よりも早く走れる。


 警備兵を退けながら副管理者の部屋にたどり着くとサイレンが鳴り始める。

 私が脱走し、警備兵がやられているのに気づき、警報を鳴らしたのでしょう。

 けど、関係ない――――――。


 扉には鍵はなく、扉を開け、部屋に入った。



 私の能力は使ったことがない。

 でも今なら使い方がわかる気がする――――――――――。




 『なっ! セリカ、何をしている!!』

 「私が………終わらせる。」



 私は能力で副管理者を動けなくした。


 私の能力、捕縛の能力で――――――。




 『災いの子ごときが………能力を解け…っ!!』

 「二人………みんなの苦しみを…返してあげるわ。」




 指一本も動かせなくなった副管理者を蹴り飛ばし、壁に張り付かせて私は副管理者の体、腕、足を何度もナイフで刺した。


 部屋中に血が飛び散り、苦しむ悲鳴を死ぬまで叫ばせ続けた。




 『あぁああああああぁっ!! やめろおおおお!!!』




 私は返り血で体中、血だらけになった。



 副管理者の体には無数の刺し傷ができて完全に死んでいたがそれでも刺し続けた。

 警備兵が何人も攻めてくる足音で正気を取り戻す。




 「エリナちゃんと逃げなきゃ……………!」




 通路を駆け抜けながら警備兵を再びナイフで切り裂き、エリナが居た部屋へと急いで戻った。


 元居た部屋の前にたどり着き、部屋に戻ると警備兵にエリナは捕まっていた――。




 「エリナちゃん――――――!」

 『私はいいから逃げて――――――!!』


 『なっ! やはりこいつが犯人か――!!』




 警備兵がこちらに銃を構えるが能力を使い、警備兵は指一本も動かせなくなり、そのまま首にナイフを刺して殺した。




 「エリナちゃん、一緒に逃げよう!」

 『だめ! 私がいても足手まといになるだけ!』


 「でもこれからどうしたらいいかわかんないわよ!!」




 通路から音もなくやって来ていた警備兵に不意打ちを食らい、部屋の扉外から銃を撃たれて銃声が鳴り響く――――――――――。




 「っ――――――――――!!」




 エリナは私を庇い、銃弾はエリナへ被弾する――――――。

 ナイフを突き立てたまま部屋外に飛び出し、警備兵の首にナイフを刺して殺したけどエリナを見ると銃弾は心臓を貫いていた。

 エリナは心臓から血を大量に流し、メイド服は血でにじんでいく。




 「嫌よ……………こんなの嫌よ…!」




 エリナは血を大量に流しながらも自身の前髪につけていたうさぎのヘアピンを外して私の左前髪にうさぎのヘアピンを付けた。




 『えへへ………似合ってる…。』

 「え………?」


 『セリカ……………。』




 エリナは私を優しく抱きかかえてくれた。


 私は抱き返した――――――――――。




 『この世界を……………終わらせて………セリカ…大………好き…よ………。』




 エリナの体は私の方に崩れていき、最後の言葉を残した。

 涙があふれ出てくる――――――――――――――。




 「うぅ………エリナぁ…………………。」




 エリナは息をしていない。

 私を庇ってエリナは――――――――――。



 警備兵の走ってくる足音が聞こえる――――――。


 私は歯を食いしばり、ナイフを強く握りしめたまま部屋を飛び出し脱出を目指す。

 私は涙を流し続けながら警備兵を退け、通路を走り続けた。

 走る速度は徐々に上がっていき、一瞬で通路を駆け抜けていった。




 「この世界を終わらせる方法を探して……………。」




 E区域中央施設の出口はスライド式の開閉扉で開いていて出口付近には警備兵が沢山いる。

 外から眩しい光を放っているけど警備兵に開閉ボタンを押され、徐々に左右から扉が閉まっていく――――――。

 通路にいる警備兵を避けるために、壁に飛び、壁を走りながら警備兵を避け着地して警備兵は銃を撃たず捕まえようとしてくるけど避けながら走り続けた。




 『撃つな――! 前方にいる味方にあたっちまう――――――!!』

 『捕まえろッ――――――!!』




 涙が止まらない――――――。




 「私が………。」




 怒りも――――――――――――。




 「私がッ――――――――――!!」




 この悲しみも――――――――――――――――。




 「私が終わらせて見せるわッ――――――――――――――――――!!」




 出口の扉が閉まる瞬間、私は飛んで扉から抜け出し、外の光に包まれた――――。














 『To be continued――』

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