Episode.5-2『記憶と罪』
パンダ耳の災いの子が喋る――――――。
『この場所に人間を入れるなんて珍しいわね、クリリア。』
『人間一人なら殺していた。』
『ふぅーん? ところであなたの名前は?』
パンダ耳の子はクリリアを疑いの目で見た後、自分に問いかけてきた。
「リオだ。 リオ・メサイア。」
『ラナ・フォリアなの!』
名前を教えると黒髪の子と白髪の子も名前を教えてくれる。
『あてはディーナ!』
『あ…み、みいは…フィーナ…。 え、えっと…みい達…双子…。』
黒髪の子はディーナで気が強く、破壊する能力を持っていて白髪の子はフィーナで気弱だが、治す能力を持っているようだ。
パンダ耳の災いの子も名前を教えてくれる。
『リオ君ね。 意外と可愛いわね、私はレーネ・ベリタスよ。』
パンダ耳の子、レーネはこちらを見て可愛いと言ったことに対しラナは嫉妬し始めた。
『ご主人様はラナのものなのー!』
レーネはラナに近づき頭を撫でるがラナは頬を膨らませている。
『よしよしっ…。 …あなたは?』
『セリカ・アレスティよ。』
『可愛い子たちじゃないの、クリリア。』
クリリアの方を見るとラナとセリカに嫉妬しているように感じた。
『知らん。 だがもし住むのであればこの子達は受け入れるが人間はだめだ。』
『あらあら、やっぱりだめなのね。』
『当たり前だ。』
『リオ君ごめんなさいね。 クリリアは両親に殺されかけた子なの。 だから難しいところがあるの。』
『なっ! なんでもすぐに言うんじゃない!』
クリリアはレーネに少し怒っている――。
過去に色々あったのだろう。
忌み子として扱われる災いの子は少なくとも生きるだけでも大変なはずだ。
ラナだってそうだった。
皆からは冷たい視線と助けようとしない人たち、両親は殺され…もし自分がいなければ本当に壊れていたかもしれない。
誰も助けなかったらどうなっていただろうか。
きっとクリリアと同じ…いやそれ以上に酷くなっていた可能性もある――。
ここにいられないとなると、ひとまず装備を手に入れ、二人で過ごせる場所を探すのがいいだろう。
「少し準備ができたら出ていく…自分は別の場所を探す。」
『ラナもご主人様についていくの。』
セリカは手を軽く握り、指を口にあて、どうするかを考えていた。
『私は…少し考えるわ。』
「自分は武器をもらえると助かるが………。」
『倉庫にあるのを好きに持って行くがいい。 元々そのような武器は必要ないからな。』
『あら、優しいわね。 今日は頭でも打ったのかしら、クリリア。』
武器はなんとか入手できそうだ。
クリリアは普段はもっと冷たいのだろうか?
下手したらB区域にすら入れなかったかもしれない。
『ふんっ。 レイとミーアには助けられていたからな。 その返しだ…まぁしかし、レイとミーアは他の災いの子を助けると言って出て行ってしまったがな。』
『………ごめんなさい。』
セリカは下に俯き、謝りだす。
レイとミーアを守ってあげられなかった罪悪感だろうか。
『ん…? 何かあったのか。』
『大規模な魔物の軍団にレイとミーアは………。』
『そうか…言わなくていい。 そんなもの全部私が蹴散らしてくれる。』
クリリアは察していて、大規模な襲撃にも負けない自信があるようだ。
デビル2体を氷で貫いているのを見た時から感じるが、相当な力を持っているのだろう。
レーネはクリリアに問いかけた。
『ところでこの子達は見なくていいのかしら。』
『そうだな。 一応頼む。』
「見る…? 何をだ?」
『過去だ。』
何を見ようとしているかはクリリアが答えた。
レーネは過去を見る能力があるのだろう。
「過去? …能力か。」
レーネはラナに近づき、自分とラナを見て聞いてきた。
『まずはラナちゃんから…いいかしら?』
「ラナ…行けそうか?」
『わかったの………。』
レーネはしゃがんでラナと頭同士を密着させ、目を瞑った。
レーネは能力を使い、ラナの過去を見だしてラナは表情をあまり変えず涙を流す。
ラナはつらい過去をまた思い出してしまったのだろうか。
『………なるほどね。 ごめんなさいね。』
レーネは謝り、ラナを優しく抱きかかえた。
ラナは、ぼーっとしてしまっている。
『ふえ………?』
レーネは立ち上がり、クリリアはレーネにラナの過去を聞いた。
『何が見えた?』
『ここでは言えないわ…クリリア。』
『そうか。』
『次はセリカちゃんね。』
『………私のなんか見ても面白くないわよ。』
レーネは同じくセリカに近づきしゃがむと、頭同士を密着させ能力を使い過去を見始めた。
しかし、レーネは急に涙を流し、セリカは目を逸した――――――。
『………クリリア、この子達は平気よ。 それどころか被害者だわ。』
『わかった。 あとは人間だけだが大丈夫そうか?』
『ええ…平気よ。 少し取り乱してしまったわ。 セリカちゃんの左腕も治してあげてフィーナ。』
『う…うん。』
フィーナはセリカに近づき、セリカの左腕にフィーナは手をかざし、治療を始めた。
青い光が傷口に集まり、セリカの傷が癒えていき、傷口を縛っていた破いた服をほどいた。
『ありがと………。』
レーネはこちらに近づいてくる。
「………自分のを見てもなにもないと思うが。」
『でもこうしないと落ち着かないの。 ね、クリリア。』
『安全な奴か気になるだけだ。 人間のも頼む。』
『………それじゃあ…いいかしら?』
自分の頭とレーネの頭が密着し、自分の過去が見え始める――。
レーネが過去の記憶を見ていると自分も同じく過去の記憶が見える。
過去を見ているとラナと出会う日の朝にノイズが起き、レーネは一度少し離れてしまう。
『っ――――――。』
「ん………?」
クリリアは1歩踏み出し、手を強く握っている。
『大丈夫か!?』
『平気よ…おかしいわね、今までこんなことなかったのに………。』
『何があった?』
『ちょっとノイズが走っただけよ。 ごめんなさいね…最初から見てみるわね。』
「あ、ああ………。」
リオが生まれる前の記憶、母の記憶だろうか。
街は魔物に支配され、次々に破壊されている。
血まみれで倒れた父、そして倒れた母。
薄っすらと見える母の視界にはラナと同じ身長、似た髪型で黒髪のたれうさ耳の後ろ姿が見える。
ゴスロリ服を着ている。
たれうさ耳の災いの子がゆっくりとこちらに振り向くが意識が途絶え顔は見えないまま終わる――――――――――。
どこかで見たことがある……………。
そして異様な狂気を感じ、血の気が引く光景に自分は少し苦しんだ。
『………リオ君の両親。 災いの子に殺されたのね…。 あなたが生まれる前に殺されてるわ。』
「ああ…そう聞いている。」
『両親が殺されて母のお腹を切り裂いて取り出された。 そして叔母も魔物に殺されちゃったのね…その後、周りとは違う道に進んでるのね。 少し変わった人間みたいだけど、大丈夫そうよクリリア。』
『なるほどな。 ならいい。』
そして再びラナと出会う日の朝を見ようとするが再びノイズが軽く走り、レーネの頭は少し離れる。
『っ――――――。 あなたがラナちゃんと出会う日の朝…見ようとすると変に途切れるわね。』
『………前世も頼む。』
『そんなに調べなくても平気だと思うわクリリア………。』
『その原因が前世にあるかもしれない、頼む。』
『………わかった。 ごめんなさいね、もうちょっと我慢してて。』
「大丈夫だ………。」
『深く…より深く……………。』
レーネはこちらの手を握りながら頭同士を密着させ、自分とレーネの意識は遠のいていった――――――――――。
『To be continued――』
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