Episode.5-1『記憶と罪』

 『Episode05.記憶と罪』




 狼耳の災いの子が冷たく喋る――――――。




 『ここに何しに来た。』

 「セリカがミーアに自分達をB区域まで連れて行ってと頼まれてセリカに案内されてきた…。」


 『それでなんだ? 死にに来たのか? 悪いが人間はお断りだ。』




 狼耳の災いの子が持っている氷の剣が今にも首に刺さりそうだ――。

 セリカは前に出てきて止めに入る。




 『ミーアから聞いてたけど初めて会うわね………クリリア・ネーヴェ。』




 セリカはミーアからB区域のことは聞いていたようで狼耳の災いの子はクリリア・ネーヴェのようだ。

 クリリアは持っていた氷の剣を降ろすと、氷の剣は砕け散り消えていった。




 『ほう…どうやら本当のようだな。 人間だけなら殺すところだった。』

 「相当嫌っているようだな…。 嫌われていても仕方がないかもしれないが。」


 『私だって人間は嫌いよ。 でも必ず殺したいほどでもないわ。』




 セリカには感じられないがクリリアは人間に対し殺意が感じられる。

 災いの子といなければ本当に殺されていたかもしれない。




 『………それで何の用だ?』


 『私は案内役よ。 ミーアに頼まれてB区域まで連れてくるのが役目だったのよ。』

 「ひとまずここで準備したい。」


 『いいだろう、ミーアの頼みなら特別に許可する。 だが何かしてみろ…お前を一瞬にして消し去ってやる。』




 クリリアは人間の自分に対し睨みつけてきたが仕方がないだろう。

 敵対しないだけマシだ。

 ラナは前に出てクリリアに訴えかける。




 『ご主人様は優しいの! ご主人様はひどいことしないの!』


 『そうか、だが私は許すつもりはない。』




 ラナは不満そうな顔をし、セリカは目を逸らし呟いた。




 『まぁ変わった人間よ。』




 クリリアは鼻で笑いB区域に入って行き、少しだけ首を振り返し喋る。




 『ついてくるといい。』




 クリリアに続き自分とラナ、セリカもB区域へと入っていく。

 周りは5mほどの分厚い壁で囲まれているが、外から見た時と同じく亀裂と穴だらけでくずれている部分は多く、D区域と同じぐらいの広さがあり、中には住宅街や小さな軍事施設、ショッピングモールなどもある。

 所々崩れ、壊れているが大体の場所は入れそうだ。


 クリリアはセリカに問いかけた。




 『それにしてもその軽装備でよくここまで来れたもんだな。 能力だけで来たのか?』


 『攻撃系の能力はないわ。 このバカな人間のせいでほぼ装備なしで突破してきただけよ。』




 セリカはこちらを見てくるが、セリカはすぐに目を逸らした。




 「補充できないまま戦闘が続いてしまったからな………。」

 『………急いでたから私も持って来なかったのもあるけど。』


 『ラナのせいなの………。』

 「ラナは悪くない。 無理矢理にでも装備を揃えてから出るべきだった。」




 ちゃんと装備を整えてから出ていればラナの右腕を失わずに済んだかもしれない。

 力のない自分のせいだ…正直、後悔している――――――。

 セリカは考え込んでいる自分を見て喋り出す。




 『まぁ…生きてるんだし、いいんじゃないかしら。』




 クリリアに連れられ、進んでいくと中央には1軒家ほどの広さの場所に土管が1つ置かれている所があり、そこには災いの子が3人見える。


 一人は身長は170cmほどある女性、パンダ耳の黄色髪ショートヘアでオレンジ色の目で赤いメガネをかけている。

 オレンジ色の袖のないニット服に、黒めなショートスカートだ。


 もう二人はたれ犬耳、身長は120cmほどの女の子で片方は白髪のツインテールで、もう片方は黒髪のツインテールだ。

 この子達は双子だろう。

 白髪ツインテールの子は目も白く、水色のキャミソールワンピースを着ている。

 もう片方の黒髪ツインテールの子は目も黒く、ピンク色のキャミソールワンピースを着ている。


 白髪ツインテールの子は気がとても弱そうでおどおどしていて体は丸まっている。

 黒髪ツインテールの子は気が強く、白髪の子を押したり頬っぺたを触ったりいじり倒している。

 パンダ耳の子はとても落ち着いており、土管に座りながらたれ犬耳の双子を見ている。



 中央に近づき、3人の災いの子たちがこちらに気がつくと黒髪の子がこちらに駆け足で近づいてくる。




 『人間だー! 珍しいー!!』




 黒髪の子は自分に対し手を差し伸べてくる。

 握手だろうか?




 「ん…?」




 自分は恐る恐る右手で握るが、握った瞬間に黒髪の子は満面の笑みで喋る。




 『ドッカーンッ!!』




 その瞬間、自分の握った右手が破裂し手首までなくなってしまう。

 爆発したような激痛が走り、血が大量に落ちていく――――――。




 「っ――――――――――!!」

 『ご主人様っ――――!!』




 ラナは自分を助けようと飛びかかるがクリリアに左腕を掴まれ止められてしまう。

 ラナは必死に抵抗している。




 『邪魔しないでッ――――――!!』


 『待て、これは試しでもある。』

 「ラナ、大丈夫だ…!」




 ラナは凄まじい殺気を立てながら様子を見ている。


 白髪の子がこちらに近づくが気が弱く不安そうに喋りだす。




 『も、もう…ディーナ…すぐ壊しちゃだめだよ………?』


 『えー? だって人間面白いんだもんー。』




 黒髪の子の名はディーナだろうか?

 黒髪の子は両手を頭の後ろで組み、白髪の子を見ている。

 気が弱い白髪の子はこちらの破裂してなくなった手の右腕を掴み頭を少し下げたままこちらを見て謝った。




 『ご、ごめんなさい…。』




 白髪の子は能力を使い、こちらの手を治し始めた。

 青い光が手を包み込み、手が無くなった部分から再生していき徐々に元に戻っていく。

 不思議と温かさを感じる。




 「………すまない。」

 『あ、あなたは悪い人じゃない………。』




 自分の手は完全に元通りになり、指を動かす。

 まるで何もなかったかのように元に戻っており、普通に動かせる。

 クリリアはラナの掴んでいた手を離した。




 『これでわかっただろう?』


 『ご主人様を傷つけるのは許さないの…!!』




 ラナは殺気をなくすが怒りつつもこちらの元へ来る。

 黒髪の子がラナの腕を見て喋りだす。




 『あの腕は魔物にやられたのかー?』

 「………そうだ。」


 『恐ろしーね!』




 ラナは自分の後ろに隠れて黒髪の子を見ている。

 白髪の子がラナに近づき、不安そうな顔をしながら申し訳無さそうに喋り謝る。




 『あ、あの…あなたのも治します…。 大切な人、ごめんなさい………。』




 白髪の子はラナの右腕に手をかざし、ラナの右腕に青い光が包み込み腕が徐々に再生されていき元に戻っていく。




 『あ、ありがとうなの………。』




 少しするとラナの無くなった腕も元通りになり動かせれるようになっていた。

 治療を終えると土管に座っていたパンダ耳の災いの子が微笑み立ち上がった。












 『To be continued――』

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