Episode.4-4『残された力と能力』


 辺りを見回すが、軍用車がスピンした時にアサルトライフルもどこかに飛んで行ってしまったようでどこにも見当たらない。

 B区域にたどり着き、武器を入手したほうが良さそうだ。




 「セリカ、ここから徒歩だとどれぐらいかかる?」

 『スピードを上げて走っていたからもうすぐよ。』




 自分とラナが倒れていた場所にD区域から出る時に持ってきていたやつと同じナイフが落ちていた。

 しかし、D区域から持ってきたナイフはC区域に向かう途中でブローダーに破壊されている。


 さっきまであっただろうか――――――?


 落ちていた位置は自分が倒れていた時の右手あたりで、疑問に思いつつも自分はナイフを拾い上げた。




 「ん………? これD区域から持ってきたナイフと同じだな。」

 『新品なの!』


 「一応、持っておくんだ。」

 『わかったの!』




 ナイフをラナに渡し、ラナはナイフをホルスターベルトにしまった。

 銃のホルスターにはラナのハンドガンがなく、周りにも落ちていない。




 「ラナ、ハンドガンは?」

 『車がぶつかったときに投げちゃったの…。』


 「なるほど…。」




 無法地帯を見てきたが、無法地帯に弾薬が落ちていることはあまり期待できない。

 その為、弾切れのハンドガンを探すのもあまり得策ではないかもしれない。

 無法地帯で弾薬を探すより装備が入手できそうなB区域に行った方がいいだろう。


 自分はラナに背を向けながらそのまましゃがみ、後ろに手を置きラナを背負えるようにした。




 「ラナ、乗っていいぞ。」

 『えへへ…嬉しいの………。』




 自分の肩にラナは手を乗せ、背中に乗り、ラナの足を掴んで背負い、立ち上がった。

 軽く感じる…ラナの体が軽いのか自分の力が強くなったのかはわからないがこのまま移動するのに支障はなさそうだ。




 「これで行こう。」




 セリカは疲れたように呟いた。




 『もう魔物が出て来ないことを願うわ………。』




 アサルトライフルは無くし、ラナのハンドガン、対戦車ライフルの弾は0発。

 銃はリボルバーのみしかなく、リボルバーに装填されている残り5発と、予備弾薬は青いシリンダーに6発、赤いシリンダーに6発のみだ。


 シリンダーは夜の見た時より多少色が帯び、星のように輝いているように感じる――――こんなに輝いていただろうか?


 現状の装備を考えると戦闘を避けつつB区域に向かい、急いで武器を補充しなければならない。




 「あるのはリボルバーのみだ。 これ以上魔物と戦うのは厳しい。」

 『全く…無法地帯をたったこれだけの装備でよく出ようと思ったわね………。 普通の人間ならとっくに死んでるわよ。』


 「色々あってそうもしてられなかったんだ…。 それにラナがいなかったらとっくに死んでいる。」

 『そういうことね…私一人なら逃げ回りながら戦えるけどそういうわけにもいかないわ………。』


 「できるだけ足を引っ張らないようにする………。」

 『ラナちゃんがいるから別にいいわよ…とりあえず行きましょ。』




 自分はラナを背負い、セリカと共にB区域へ歩き始めた。



 周りは1、2階ほどの建物が多く、ほとんど崩れていて元住宅街のようだ。

 その奥にはB区域と思われる5mほどの壁が見える。

 B区域の周りは壁で覆われているようだが、壁は亀裂や穴が空いていたり、崩れていたりでどこからでも入れそうな状態だ――。


 進行方向の遠くにはデビルとブローダーが1体ずついるのが見える。




 「どうする?」

 『回り込むしかないわ、こっちよ。』




 崩れた家を壁にしながら左側を迂回して壁から顔を出し、辺りを見るとブローダーが1体いるのが見える。




 「ここら辺は魔物の巣窟なのか………?」

 『知らないわよ…そもそも無法地帯なんてこんなものよ。 こっちに行くわよ。』




 セリカについて行き、さらに左側へ迂回する。




 『ご主人様…もう平気なの。』

 「ん………わかった。」




 自分はしゃがんで背中からラナを降ろしてさらに進んだ。

 しかし、その先でも魔物がいないか確認する為、壁から顔を出して覗くがデビルが1体飛んでいるのが見える――――――。




 『もう少しなのに困ったわ…これじゃ進めないわ。』

 「突破するしかないのか………?」




 B区域には大分近づいているが、魔物が行く手を阻んでいる。




 『ご主人様危ないのッ――――――!!』




 突然、自分はラナに引っ張られ、後ろに下がらせた瞬間、自分がいた場所の壁が崩壊し土煙と共に筋肉質の腕が見える。

 ブローダーの腕だ――――――――――。




 「――――――なっ!」

 『気づかれたわ! こっちよ!!』




 自分たちは壁を曲がりに曲がって、壁を遮蔽物にしながらB区域に向かいつつ逃げるがブローダーは壁を破壊しながら追いかけてくる。

 この音により、さっきまでいた魔物達がこちらに集まってきている――――――。




 「くそっ! 追いつかれる――――――!!」




 足を止め、振り向きブローダーにリボルバーを構え撃った――――――。

 ブローダーは両腕を前に出し、ガード体勢になりながら突進してくる。

 リボルバーの弾丸は小さな衝撃波と共に放たれ、ブローダーの左腕に命中するも出血と共に左腕が吹き飛ぶだけで勢いは止まらない――――――。

 自分はすかさず2発目、3発目を撃った。

 2発目はブローダーの右腕に命中し出血と共に右腕が吹き飛ぶが、3発目は胸に命中し大きな穴が空き、ブローダーは血を噴き出しながら倒れた。


 リボルバーは残り2発――――――――――。


 自分は再びB区域に向けて走り始め、ラナは魔物に気づき喋り出す。




 『ご主人様! 上からも来てるの!!』




 右側からデビルが2体こちらに飛んで来る――――――。

 空にいるデビルに向けてリボルバーを構えて2発撃ち込むが避けられてしまう。


 リボルバーの弾は0発だ――――――――――。




 「だめだ! デビルには当てれない!!」

 『人間! デビルによる攻撃は任せて!! 正面を突っ切るわ!!』




 セリカは右手で服の中からナイフを取り出した。




 『ラナもご主人様を守るの!!』




 ラナも左手でナイフを取り出しナイフを逆手に構える。

 進行方向にある壁は崩れ、ブローダーが3体出てくる――――――。




 「わかった――――――! 自分は正面のブローダーをやるッ!!」




 シリンダーラッチを押し、使い切った青いシリンダーをリボルバーから外した。

 青いシリンダーが落ちると同時に反動で空になった青い弾薬が散らばった。

 ウェストポーチを右手で開き、赤い弾薬が入った赤色のシリンダーを右手で取り出してリボルバーへ装填する。


 2体のデビルは生成した槍を空中から投げてくる。

 ラナとセリカはナイフで飛んでくる2つの槍をそれぞれ真っ二つに切り落とし、切り落とされた槍は自分たちを避け飛んでいき地面に突き刺さった――。



 自分は正面のブローダー3体のうち、真ん中にいるブローダーに向けてリボルバーを両手でしっかりと構えて狙いを定め、トリガーを引いて撃った――――――。


 リボルバーの銃口から大きな衝撃波が発生し、両腕は反動で頭の上まで上がってしまうが、凄まじい音と共に弾丸は赤い軌道を描きながら飛んでいき、ブローダーに命中すると2階建ての大きな家一つほどの大爆発を起こし3体のブローダーは跡形もなく消えた――――――。


 自分とセリカは驚愕する。




 『ちょっと何事!?』

 「なんだこの威力は…!!」


 『すごい威力なの!!』


 『まぁいいわ! この隙に行くわよ!!』




 自分たちは正面の進行方向を走り続け、2体のデビルは槍を生成しながら追いかけてくる。

 ラナとセリカはデビルが投げてくる槍をナイフで切り落としながらこちらについて来ている。



 B区域に近づき、B区域の手前までたどり着くと一人の災いの子が大きな瓦礫の上に立っているのが見える――――――。


 170㎝ほどの女性で青いつり目に青いポニーテールの髪型と狼耳の災いの子。

 黒茶色のオフショルのへそ出し衣装に、紺色のショートズボンを履いている。



 辺り一面冷たい冷気と、冷たい視線を感じる。

 狼耳の災いの子が喋る――――――。




 『鬱陶しい――――――――。』




 辺り一面、狼耳の地面から凍結していき氷煙と共にデビルが2体いる方向に凍り、地面から2つの氷の柱が一気に伸び、デビルに突き刺さる――――――。




 「なんだこの能力は――――――!?」

 『ご主人様危ないの!!』




 狼耳の災いの子は手元から氷の剣が出来ていき、氷の剣を完成すると一瞬にしてこちらへ近づいた。

 辺りの出来事とあまりの速さに反応できず、狼耳の災いの子は氷の剣を自分の首元に刺さる寸前で止めて構えた――――――――――――。











 『To be continued――』

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