Episode.4-3『残された力と能力』


 視界が歪み、凄まじい耳鳴りがする――――――。


 声が微かに聞こえる――――――――――呼んでる…ラナの声だ。




 『――――――――――様! ――――主人様っ!!』




 建物の壁に激突して煙が上がった軍用車に自分だけが運転席に取り残されていた。

 運転席に座っている自分はラナに体を揺さぶられている――――――。


 意識は暗転を繰り返していて意識がはっきりしないが意識が徐々に戻ってくる。

 ラナに腕を掴まれてそのまま自分は引きずり出され、軍用車から少し離れた場所でこちらを見ながら泣きそうになっている。



 ラナの後ろでセリカは対戦車ライフルを体と右腕の間にストックを通し腰あたりで構え、最後の1発を撃っているのが見える。

 セリカは小柄ながらも反動を抑える力があり、対戦車ライフルの反動はほとんどないように感じた。

 しかし、シャドウに放たれた1発の弾丸は当たらず、避けられてしまっている。

 対戦車ライフルを戦闘中に構え、狙う時間さえなく撃てばまず当たらないだろう。


 シャドウは避けた後、泣きそうになっているラナの方へシャドウが向き、こちらへ走ってくる――。




 『ラナちゃん危ないッ――――――――――!!』




 セリカは対戦車ライフルを投げ捨て、服の中から右手でナイフを取り出しセリカもこちらに走ってくる。




 『え……………?』




 ラナの方へシャドウは大きく飛びつき、鋭く伸びた爪で引っかいてくる。


 自分の意識がはっきりとした時には――――――――目の前にいるラナの右腕はシャドウの爪で切り落とされ無くなっていて大量の血を流し立っていた。


 アドレナリンが出ているせいか時間がゆっくりに感じ、ラナの右腕は吹き飛びゆっくりと宙を舞い、地面に落ちていった――――――。




 「ラナぁぁぁぁっ――――――――――!!」

 『ご主人…さ………ま……………。』




 自分は叫び、ラナはこちらの方に倒れ、心拍数が急上昇していき自分の意識は持っていかれて目の前が暗くなった――――――。




 (自分はまたラナを……………。)




 暗闇の中でノイズが走り、ラナと容姿が全く同じで白いロングへアでロップイヤーの少女が見え、語り掛けてくる。

 ノイズが掛かっていてはっきりと見えず、顔もよく見えない。


 ノイズが走りながら、ラナよりは少し低い声でノイズと混じった声が聞こえるが、すべては聞き取れない――――――。




 『また…――――――――すの…?』


 「誰だ――――――??」




 ノイズが酷くなり白い少女が見えなくなっていく。

 意識が戻り始め声が聞こえる――――――。




 『に――――――げ――――――――――――――!!』




 セリカの声だ――――――――――。




 『人間!! 戦いなさいッ――――――!!』




 セリカはナイフでこちらを守りながらシャドウと戦っていた。

 守って戦っているせいか、左腕は軽く引き裂かれていて血が流れている。

 セリカの能力によりシャドウの動きは鈍くなっている。


 加勢しなければセリカが――――――!!




 「ッ――――!! 殺してやるッ――――――!!」




 自分は完全に目を覚まし、殺意と共に立ち上がった――――――。

 背中に左手を伸ばしてリボルバーを取り出し、シャドウに向けて構え、リボルバーのトリガーを引き、撃った。


 リボルバーから発射された弾丸は小さな衝撃波と共に放たれ、青い弾道を描きなが飛んでいき、シャドウの胴体に命中した。

 命中した胴体から炸裂したように大きな穴が空き、シャドウは倒れ、穴のまわりから血がじわじわと噴き出し血だまりができた――――――。




 『遅いわよ…。』

 「すまない………。」


 『また…助けれなかった………。』




 セリカはとても辛い顔をしている――――――。

 過去に同じことがあったのだろうか。


 ラナの右腕を見ると大量の出血があったが傷口は塞がり血は止まっていて息も感じられる。




 「まだ…息をしている!! それに…なぜ血が止まっている………?」

 『どうなってるの!? 普通はこんな事ありえないわ………!』




 自分とセリカはあまりの光景に驚愕する。

 この血が止まった感じは自分も似たような感じだが…。




 「ラナの能力…? ラナ自身にも効果があるのか………?」

 『わかりにくい能力ね…。 でも不死の力なら相当な能力ね。』




 ラナの能力は未だによくわからない――――――。

 不死を与え、自身もさえ不死になるのには違和感がある。

 それに自分以外は死んでいる………本当にわからない。


 ラナはゆっくりと意識を取り戻し、自分はラナの体を優しく起こして抱きかかえた。




 「よかった………。」

 『………ご主人様?』




 ラナは状況を理解していないようだったが、自分とセリカは安心した。




 『えへへ…ご主人様あったかいの………。』

 「痛くはないか………?」


 『平気だよ………?』


 『この様子だと治療も必要なさそうね…。 腕は…元に戻らないけれど………。』




 不死でも腕や足がなくなってしまうと元に戻らないようだ――――――。

 死ぬ手前までは治療される感じなのだろうか?

 どちらにせよ自分も気をつけなければならない。


 ラナは弱々しく立ち上がった。




 「歩けそうか?」

 『うん……………。』




 ラナは少しふらついているようにも見える――――――。

 セリカはラナを見て喋りかけてくる。



 『人間、ラナちゃんぐらい背負いなさいよ。』

 「それもそうだな………すまない。」




 自分はセリカの左腕を見ると、出血しているのを目にして、セリカはこちらに左腕を隠した。




 「セリカも怪我してるじゃないか。」

 『私は――平気よ。』


 「見せるんだ。」

 『………何なのよもう。』




 セリカの左腕からは血が少しずつ流れ続け、地面に血が垂れ落ちている――。

 自分の服の左袖部分を引きちぎり、セリカの血が出ている左腕に巻き始めた。




 『ちょ、ちょっと何するのよ!』

 「いいから動くな。」


 『人間のくせに…。 本当にバカみたい………。』




 最初は少し嫌がり、セリカは怒っているが、大人しくしている。




 「もっと早く助けていれば…すまない。」

 『別にあんたのせいじゃないわよ。』




 セリカの左腕に引きちぎった服を巻き終えた。




 「よし、ひとまずはこれでいいだろう。」




 セリカはこちらに聞こえないように小さく呟いた――――――。



 『………ありがと。』

 「ん…? 何か言ったか………?」




 自分は聞き取れず、ラナは少し不満そうな顔をしており、嫉妬しているように感じる。




 『うー………。』




 セリカはツンとした態度をした。




 『な、何でもないわよ! 変態って言ったのよ!』

 「そ、そうか…それはセリカじゃないのか?」


 『ふんっ!』




 セリカは顔を逸らすが、軽くにっこりしているのがちらっと見えた。


 乗っていた軍用車を見ると、バック部分はシャドウの爪で引き裂かれ建物の壁に激突していてフロント部分は潰れ、壁にはひびが入り、煙も出ていた。




 「これにはもう乗れそうにないな…。」

 『車がぼろぼろなの………。』




 軍用車は動きそうにもなかった――――――。












 『To be continued――』

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