Episode.4-2『残された力と能力』


 日が昇り、辺りが明るくなってきた頃。

 ラナより先にセリカは目を覚ましてゆっくりと起き上がった。




 『……………。』

 「おはよう、セリカ。」




 自分が3時間ほど寝た後、セリカと交代して6時間以上は経過している。

 ラナとセリカはぐっすり寝ていた為、自分は起こさなかった。




 『何で起こさなかったのよ。』

 「あまりにもぐっすりだったからな…。」


 『ほんっと最悪の気分だわ…。』

 「そうか…。」




 ぐっすり寝ていたラナは自分とセリカとの話し声で目を覚まし、ゆっくり起きると見張りのことを思い出し、朝になっていたことに残念そうな顔をした。




 『う、うーん…あ…み、見張り…。』

 「おはよう、ラナ。」


 『寝過ごしちゃったの…。』

 「別に問題ない。」




 セリカはまだ眠そうなラナの寝起き顔を見て少し興奮している。




 『か、可愛い…やっぱり最高の気分かもしれないわ…。 おはようラナちゃん…!』


 『うっ…うー…おはようなの…。』




 ラナはまだセリカを警戒しているようで、ラナの眠気はすぐになくなり、立ち上がるとこちらに駆け寄ってくる。




 「みんな行けそうか?」

 『大丈夫なの…!』




 セリカも立ち上がり、こちらの近くまで移動し喋りかけてくる。




 『行けるわ。 …人間、ゲートに近づけば近づくほど魔物も災いの子も多くなるわ。』

 「わかってる。」


 『災いの子は絶対しも人間の味方とは限らない。 敵対する者もいるわ。 あなたはそれでも戦える?』




 災いの子の戦いは想像もできない。

 しかし、敵対するのであれば覚悟を決めなければならない。

 それがたとえラナやセリカと同じぐらいの幼い子であっても――――――。



 「…ラナと敵対するなら戦う。」


 『ラナは平気だよ?』


 『そう。 正直、私は人間とはあまり居たくないわ。 だからもしB区域へ着いたら私はまた目的を果たせれそうなとこを探す旅をするわ。』




 セリカの目的はわからない。

 しかし、何かを探している雰囲気は感じられる。




 「そうか…すまない。」

 『私はただミーアに頼まれたから行くだけよ。 …ラナちゃんもいることだし。』


 「ああ…そうだったな…B区域へ行こう。」




 自分とラナ、そしてセリカは止めていた車まで戻り、アサルトライフルを後部座席に置き、ラナは助手席、セリカは後部座席に乗った。

 自分は運転席に乗り、車のエンジンをかけ、セリカに道を案内されつつ、さらに東へ走り続けた。




 出発して30分ほど時間が経った後、道は穴が開いていたり、物や瓦礫が散乱していたり、崩れた建物がありまっすぐは走れない場所まで来た。

 そしてセリカは昨日と違い、別な場所を見ず前を見ていた。

 どれぐらいまで来たかセリカに問いかける。




 「B区域まではどれぐらいかかる?」

 『もう少ししたら着くはずよ。』




 すると突然ラナは何かに気づき、奥の方に指を指して喋り出す――。

 左奥の方には建物の間に横道がある。




 『ご主人様! 前に何かいるの!』



 指を指した場所へと徐々に近づいていき、目を凝らして見ても建物があり何も見えない――。




 「何も見えないが…。」




 建物との間にある横道を通り抜ける手前で突然、セリカは運転席のシートを掴み叫ぶ――――――――。




 『人間!! スピードを上げて!!』

 「――――――――――ッ!!」




 急いでアクセルを踏みスピードを上げた瞬間、大きな音を立ててラナが乗っている助手席側のサイドミラーが何者かによって切り落とされ、サイドミラーが転がり落ちていった――。


 バックミラーを見ると、軍用車よりは小さいが3mほどの真っ黒な狼が見える。

 目は赤色に鋭く光っていて牙と爪は鋭く伸びている。

 車と同じ速度ぐらい早く、4つの足を動かしながら走りこちらに向かってくる。

 通称シャドウだ――――――。




 『シャドウね! そのままスピードを落とさないで!!』

 「くそっ! 道が不安定すぎてこれ以上あげるのは厳しい!!」




 道は相変わらず物と瓦礫、そして崩れた建物が行く手を阻み続け、ぶつからないように左右にハンドルを回し続けている為、ハンドルが安定しない。

 スピードが出せない現状、シャドウには今にも追いつかれそうだ――――――。




 『私に任せてッ!』




 セリカは対戦車ライフルを持ち上げ、後ろに向けて固定し、迎撃準備をすると今度は右側の横道からもう1体シャドウが飛び出してくる。




 『ご主人様、2体いるの!』

 「ラナも撃てるか!?」


 『やってみるの…!』




 ラナも後ろを振り向いてホルスターベルトからハンドガンを取り出し、両手で構えた。

 運転に集中していないとすぐにぶつかったりハンドルが取られてしまいそうで自分は戦闘に参加できそうにない。

 バックミラーを見るがシャドウに追いつかれそうだ――――――。




 『これでも食べてなさいッ!!』




 セリカは対戦車ライフルのトリガーを引き、大きな銃声と共に対戦車ライフルが発射されるが、不安定な運転のせいか弾丸は避けやすい位置に飛んでしまい、シャドウは横跳びをして避けられ、外れてしまう。




 『人間! もっと安定させて――――――!!』

 「これ以上は無理だ!!」




 ラナもハンドガンを撃つが、かすりもせず全然当たっていない――。

 それもそのはずだ、運転が不安定な状態に加え射撃練習を全くしていなかったからだ。


 セリカは対戦車ライフルのボルトレバーを上に回して引き、空薬きょうが排出され軍用車の外に空薬莢は転がり落ち、ボルトレバーを戻して右に回し、バレルに次の弾丸が装填されて2発目を撃つがシャドウは横跳びをし、銃弾を再び避けられてしまう。

 対戦車ライフルは5発中3発撃っている。

 残り残弾数は2発だ。




 「セリカ――! その銃はあと2発しか入っていないっ!!」

 『弾薬は!?』


 「急いでC区域から出たから何も補充出来ていない!」

 『次で決めないとまずいわね…!!』




 ラナは持っていたハンドガンの弾は全て撃ち尽くし、弾丸が無くなってしまいハンドガンはスライドされたままになった。

 しかし、ラナはそのまま弾切れのハンドガンのトリガーを引き続けた。




 『ご主人様! 弾が出ないの!』

 「弾切れか…!!」


 『人間! 少しスピードを下げて引き寄せて!』

 「わかった――――――!!」




 セリカの言う通りにスピードを落とし、シャドウを引き寄せた。

 セリカは対戦車ライフルのボルトレバーを上に回して引き、空薬きょうを排出させてボルトレバーを戻し、右に回してバレルに再装填した。

 そして一体目が飛びかかってきた瞬間セリカはトリガーを引き、対戦車ライフルを撃ち込んだ――――――。




 『終わりよッ――――――――!!!』




 一体目のシャドウの頭に命中し、血を噴き出しながら頭は吹き飛び、そのまま転がりながら倒れ込み動かなくなった。

 しかし対戦車ライフルを再装填する間もなく、もう一体のシャドウが軍用車に飛びつき鋭い爪で後ろの車輪に切れ目を入れられ軍用車のタイヤはパンクした――――。




 『ッ――――――――!!』


 『危ないの――――――!!』


 「なっ――――――――!!」




 パンクしたタイヤに車体が大きく左右に揺れてハンドルを元に戻せず車体はそのままスピンして建物の壁に激突した――――――――――――――。











 『To be continued――』

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