Episode.4-1『残された力と能力』

 『Episode04.残された力と能力』





 C区域を出発し、車を走らせ、B区域を目指して進んでいる中、日が落ちて辺りが暗くなり始めた――――――。

 ビルや家などの建物は崩れ、破壊された街がひたすらに続き、辺りは壊れた街灯や無事な街灯はあるもの電気は通っておらず、光は一つもなく軍用車のライトのみが暗闇を照らす。




 『お外が大分真っ暗になってきたの…。』

 「そろそろ安全な場所で夜を明かそう…暗いまま魔物に遭遇するのは危険だ。」




 セリカは相変わらず何も喋らず別方向をずっと見ている。

 遠くに一夜を明かすために良さそうな場所を見つけ、そこを目指して軍用車を走らせ続ける。




 「ここでよさそうかな。」




 ビルが倒れていたり崩れている地帯に到着し、車を止めてエンジンを切り、自分達は車を降りた。

 アサルトライフルを取り出して移動を始め、セリカは何も喋らず、ただただついてくる。

 2階以降崩れ落ち、空が丸見え状態のビルへ向かう。



 入り口はガラスのドアだがすべて割れており、中に入ると太い四角い柱と広い空間があり、周りは瓦礫や物が沢山散乱しており、未開封の缶詰なども7つほど転がっている。


 平和だったころは大きな建物にお店があったとも聞いたことがある――。




 「今日はここで休もう。 …セリカは?」

 『見張りをしてるの…?』




 セリカは少し離れた場所、入り口付近で壁を背にして見張りをしている。

 こっちに来る気配はない。




 『…好きに休んでて。』

 「さすがにそれはだめだ。 2時間で交代する。」


 『勝手にして…。』


 『ラナも見張りするの!』




 こんな経験をしたことないからかラナも見張りをしたいように感じ、セリカはラナの言葉で折れた。




 『はぁ…わかったわよ。』

 「まぁ無理はするんじゃない。 何かあったらすぐ知らせてくれ。」


 『ふんっ…。』




 セリカは人間の自分に対しては変わらず言うことを聞いてくれず、首を横に逸らした。


 紙類やダンボールを集め、落ちていたマッチの箱を拾い、マッチを取り出して箱についているやすりにマッチの先端を手前から奥に擦り、火を起こした。

 燃える物を集めた場所にマッチを放り投げて燃え始めた後、近くに落ちてあった缶詰を拾うが開けるための物やナイフは一つもない。




 「セリカ…すまないがナイフを貸してくれないか?」

 『はぁ!? 嫌よ!! そんな物の為にナイフを貸すわけないじゃない!!』




 セリカはナイフを大事そうに持っている。

 貸したくない理由が何かありそうだった。




 「困ったな…。」

 『ラナが開けるの!』




 ラナは鋭いとは言えないが10㎝ほどの鉄の破片を持ってきて缶詰に対し思いっきり刺したが勢いのあまり刺し込んだ反動で中から水分が周りに吹き出してしまいラナ自身に水分がかかった。




 『ううー…。』

 「…やっぱり鋭い物で開けないとだめそうだな。 だけど、その隙間から少しずつ食べたり飲むことはできそうだな。」




 セリカがラナと自分の方へ近づいてくると、こちらへ缶切りを投げ捨てた。

 缶を開けるための物を探していてくれたようだ。




 『まったく…もう少し周りを探すことを覚えるといいわ。』

 「すまない、ありがとうセリカ。」


 『べ、別にラナちゃんの為よ! ふんっ!』





 セリカはツンとしたまま定位置に戻り見張りを続ける。

 他の缶詰と一緒に缶切りを拾い、缶切りを上下に動かしながら缶詰を開けてラナと一緒に食べ始める。




 『…これおいしくないの。』




 確かに不味い――――――。

 無法地帯にある物は基本45年前以上の物で、45年前は腐敗させることなく保存が可能になっていたらしいが、味が落ちることだけは避けられなかったようだ。

 消費期限などはないが賞味期限は12年前に過ぎている。




 「食べるものはこれしかないから我慢するしかない…。」

 『うん…。』




 ラナは食べづらそうに食べていた。

 壁に背もたれながら外を見ているセリカの方を見て喋りかけた。




 「セリカは食べないのか?」


 『私は平気よ。』

 「…残しておくから後で食べておいた方がいい。」




 セリカはそれ以降、喋らなかった――――――。

 まだ何か思うことや考えていることがあるのだろう。

 これ以上話しかけず一人にさせてあげたほうがよさそうだ。


 ラナと缶詰を2缶ずつ食べ、落ちていた缶詰を3缶残しておいて休むことにした。

 自分は横になり、ラナは向き合うように横になり、こちらにくっつきラナは目を瞑った。




 『ご主人様、おやすみなの…。』

 「あぁ、おやすみ。」




 目を瞑り3時間ほどが経過した後、自分は物音で目が覚め、目を開けるとセリカは火の向かい側に来ていて、缶詰を食べていた。

 缶詰を2缶とも食べてあり、空の缶が転がっていてセリカがこちらに気づき1缶だけ左手に持ったまま硬直した――。




 『あ……………。』

 「………交代する。」




 危うく何時間も寝るところだったが物音で目が覚め、交代を逃さずに済んだ。

 セリカ一人に負担をかけるわけにはいかない。




 『はぁ…わかったわ。』




 セリカは何かを諦めたようにため息をつき、手に持っている食べ終わった空の缶詰を置いてそのまま後ろを向き横になった。

 ラナはぐっすり眠っている為、起こさないように離れてセリカと見張りを交代した。


 自分は入り口側の壁に座り込み、夜空を見上げた。

 暗いためかはっきりと見える沢山の輝く星。

 星を見ながら、ふと呟く――――――。




 「約束………。 約束…?」




 ラナとずっと一緒にいる約束、この世界を終わらせる約束、そして違う意味での約束という言葉が不意に頭によぎって出てきた。

 星を見ていると不思議な感覚に陥り、記憶にない約束を感じる――――――――。




 「………考えすぎか。 ひとまず魔物は来そうにないな。」




 受け取っていたリボルバーを背中から取り出し、シリンダーと弾薬を念入りに調べた。

 よく見るとシリンダーと弾丸は普通とは違い、微かに青色を帯び、星のように薄っすらと輝いている。


 ウェストポーチを開け2つ入っていたシリンダーを取り出し、シリンダーを再びよく見ると片方は青色のシリンダーと青色の弾丸、もう一つは赤色のシリンダーと赤色の弾丸が装填され入っていてどちらも同じく薄っすらと輝いていた。


 最初は何も感じられなかったが見ているうちに不思議な力を感じられるようになっていた――――――。




 「これが赤色の弾丸か…? あの時は疲れていただけなのか…? ………ただの気のせいだろうか。」




 火の明かりだけがある暗闇の中、辺りは静寂が続いた。

 魔物は夜になると基本は活動をしない――。

 魔物も人間と同じく夜には休んでいる為だ。

 しかし、大きな物音を立て続けると魔物は活動を再開し、襲われる可能性はある。

 ラナとセリカはぐっすり寝ており、魔物の気配はなく時間が過ぎていき自分はこのまま朝まで見張りを続けた――――――。










 『To be continued――』

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