Episode.3-1『災いの子と襲撃』

 『Episode03.災いの子と襲撃』





 『お兄ちゃんなの――!?』




 少女が声を上げ、修復された建物の暗闇の中から姿を見せる。

 身長は150cmほどでレイ・アイリアと同じ猫耳のオレンジ色ショートヘアで横髪が肩下まで伸びており、緑色のキャミソールに茶色のショートズボンを履いている災いの子の少女だ。

 腰には弾薬を入れるウェストポーチを付けている。


 レイはその子を見て名前を呼ぶ。




 『ミーア――――――!!』




 レイは嬉しそうに名前を軽く叫んだ。

 レイと同じ猫耳のミーアは涙を浮かべながら駆け足でレイに近づき抱きつく。




 『レイ、無事でよかった…!』


 『ミーアも元気そうで良かった。』




 しかし突然、自分は身動きが取れなくなる――。

 何かに縛られているような感覚で全く動けない。


 かろうじて指先が動く程度だ。




 「――――――ッ!! 動けないッ!!」

 『ご主人様!!』




 修復された建物から少女の怒った声が聞こえる。




 『人間…なんで災いの子を連れてるの…!!』


 『待ってセリカ! レイといるってことは大丈夫なはずよ!!』




 ミーアは止めようとするが縛られている感覚は止まらない。

 そして、もう一人建物の暗闇から姿が見える。


 身長は120cmほどであり、うさ耳の水色ロングヘアでラナと同じく腰まで髪が伸びている災いの子の少女だ。

 左目上あたりの前髪にはピンク色のうさ耳型のヘアピンがついていて髪が少し分けられている。

 ピンク色のラッシュパーカーを着ているがチャックが全部開いており青色ストライプの下着姿が見え、ショーツには小さなリボンとブラジャーの前中心には青い大きなリボンが付いている。



 ラナは戦闘態勢に入り、表情は怒りに満ちていく。




 『ご主人様を元に戻して…!!』




 うさ耳の少女、セリカは人間であるこちらを見ながら喋り出てくる。

 セリカが外に出てくると同時に身動きがさらに取れなくなり、対戦車ライフルを落としてしまう――。




 『人間の言うことなんか聞いちゃ…。』




 セリカの視点がこちらからラナに視点が移ると言動が止まり、硬直した。

 ミーアは硬直したセリカを見て少し驚いて声を掛ける。




 『セリカ…?』




 少しの間、静寂が起きてラナが動こうとした瞬間ラナは身動きが取れなくなる。




 『――――――う、動けないの…!!』




 セリカは瞬時にラナに時速70kmを超える速さで飛びつき、そのまま抱き着くとラナと一緒に後ろに倒れこんだ。




 『ふあっ!!』


 『か、可愛い…。』




 ラナは必死にバタバタと抵抗するが押し倒されたまま身動きが取れない。

 全員驚きを隠せない状態になるがミーアは止めに入る。




 『セリカー!!』




 ミーアは叫びながらセリカの背後から頭に拳骨を入れる。

 それと同時に自分とラナの身動きが取れるようになる。




 『いだぁっ!!』

 「ラナ大丈夫か!!」




 自分はラナに駆け寄るが半泣き状態になっており、ラナを優しく抱き寄せた。

 ミーアは怒りながら喋り出す。




 『セリカ! なんであんなことしたの!』


 『だ、だって…か、可愛いからつい…。』




 レイはセリカのことを知らないようだった。




 『あ、あはは…ミーア、この子は…?』


 『ごめんね、お兄ちゃん…この子はセリカ・アレスティ。 E区域から逃げ出してきた子で悪い子じゃないんだけどね…。』




 セリカは変わらず少し怒った口調でこちらに喋りかけてくる。




 『人間…なんで災いの子と一緒に居るの。』

 「…ラナと一緒に安全にいられる場所を探している。」


 『そういうことを聞いているんじゃないわ…! なんで災いの子と関わっているの!!』

 「ラナを守るためだ…。」


 『わからない…意味が分からないわ。』

 「この子だけは守ると誓った。」


 『人間なんて私たち災いの子を陥れる存在だと思ってた。 だけどあんたは何なの? 守る? 災いの子を?』




 見るに耐えかねたミーアは止めに入る。




 『もうっ! セリカやめなさい!』




 セリカは大きく叫んだ――――――――――。




 『――――――ミーアは黙っててッ!!』


 『せ、セリカ…。』




 セリカは変わる気配がなかった。

 何かしらの理由で人間が嫌いなのだろう。




 『私はもう…人間とは関わる気はないわ。』

 「そうか…でもラナをこれ以上苦しめさせるわけにはいかない。 もしここにいられないのであれば出ていく。」


 『出て行くのなら勝手に出て行って。 …でもラナちゃんは私が守るわ。』




 セリカの表情が柔らかくなる。

 ラナのことが気になって仕方がない様子だった。




 「それこそ意味が分からないが…。」

 『私はラナちゃんが好き。 大好き。』


 「本当にそれだけか…?」

 『大好きの他にも守りたいからよ!!』




 自分はため息をつき、呆れかえる。

 ラナは怖がり、自分の後ろに隠れ服にしがみついてくる。




 『嫌っ…。』




 セリカは再び問いただしてくる。




 『人間、ラナちゃんとはどういう関係…?』

 「大切な関係だ。 それと自分はリオだ。」


 『ご主人様のこと…大好きなの…。 ずっと一緒…。』




 ラナは服にしがみつきながらこちらを見るがセリカはご主人様という言葉にかなりの怒りを出した。




 『というか…ご主人様って…やっぱりあなたは災いの子をペットにするような人なのね!!』

 「ち、違うんだ…ラナがそう呼んでいるだけだ…。」


 『ラナの大切なご主人様なの…!』




 セリカはこちらに対して信用を全くしていないがラナにかなりの興味をしめしている。




 『絶対呼ばせてるのに違いないわ…ラナちゃん、私があなたを絶対助けてあげるからね…!!』

 「助けるも何も奪いたいだけじゃないのか…?」




 セリカはビクッとなり焦りながら喋る。




 『そ、そんなことないわ!』


 『怖いの…。』




 ラナはセリカに対して怒りから完全に恐怖へと変わっていた――。

 ラナが怖がっている以上、このままにしておくわけにはいかない。




 「少なくともラナが恐れている間は近づかせはしない。」

 『ふーん…まぁいいわ…いつかラナちゃんは貰うわよ。』




 セリカはジトッとしながらラナを見てにっこりしている。

 ラナはさらに自分の後ろに隠れた。

 


 ミーアはセリカのおかしな言動にとても心配していた。




 『セリカ…本当にどうしちゃったの…。』


 『…ただ人間がいるのが気に食わないだけよ。』




 セリカは落ち込んだ表情をし目を逸らす。

 セリカは過去に色々あったのだろう、何となく感じられる。




 「仕方がないだろうな…人間は災いの子を利用したりしてるのだからな…。」

 『そうだね…。 ルエも助け出そうとしたんだけど死んでしまったんだ…。』




 レイは悲しそうに話し、ミーアも嬉しさの反面悲しげな顔をしている。




 『そっか…でも私はレイだけでも戻ってきてくれて嬉しいよ!』


 『心配かけてごめんよミーア。 ところでセリカはいつから…?』


 『1ヵ月前、ここに来た新しい子だよ。 …そういえば私のこと紹介してなかったね。 私はミーア・アイリア。 レイの妹だよ、よろしくね。』




 ミーアは自分とラナに自己紹介をするがセリカは首を反らしこっちを見ていない。

 ミーア・アイリア、レイ・アイリアと同じでレイの妹で間違いないようだ。











 『To be continued――』

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