Episode.2-1『崩壊と力』
『Episode02.崩壊と力』
体が動く――――――。
ゆっくりと立ち上がると同時に、刺された箇所から血が流れ出る。
「この身が滅ぼうとも、この子だけは…守って見せるッ――!」
異常な光景にラナは呆然としたまま座っている。
デビルは再び能力を使い次の槍を生成して槍を構えた。
「させ…ないッ――!」
生成された槍をデビルは再び投げ、自分の腹部に槍が刺ささり血がでる。
刺された箇所から激痛が走る――――。
それと同時に生徒が持っていたラナの銃を拾い上げ、構えて4発撃つがデビルは素早く横に避け、4発全て避けられてしまい弾丸はかすりもしない――。
「くッ――どうすれば…!」
ふと、作戦を思いつく――。
(槍を投げた瞬間なら隙があるかもしれない…!)
しかし、槍が投げられた時の速さは弾丸のように早く、避けられるものではない。
これ以上攻撃を受けるのは危険かもしれないが現状の打開策はこれしかない。
デビルは次の槍を生成して構え始め、こちらはデビルに銃を狙いを定め、睨み合いの状況が少しの時間おきた。
デビルが槍を投げた瞬間――――――――ナイフの切り込みが一瞬見え、目の前で槍は真っ二つに裂けてあらぬ方向へと飛んで行った。
『ご主人様は…ラナが守るの…!』
気がつくと目の前にラナが立っていて、ナイフを振り下ろした姿が視界に入っていた。
ラナがナイフで槍を真っ二つにしたのだろう。
「今だッ――――――!!」
その隙を逃さぬように1発、銃を撃つとデビルは避けきれず、右側の翼に命中し、赤い血を出しデビルは落ちてくる。
こちらの銃も残弾が無くなり、スライドされたままになった。
しかし、関係ない――。
「――――――全部ぶっ壊してやるッ!」
銃を投げ捨て、自分の腹部に刺さっていた槍を激痛と共に引き抜き、デビルが再び動く前に引き抜いた槍をデビルの頭に刺し止めを入れた。
頭に槍を刺されたデビルは頭から血を吹き出し、辺りは血塗れになり、デビルは息絶えて動かなくなった。
膝をつき自分の腹部に手を当てた――。
血は止まっており、腹部にあるはずの槍で貫かれた傷がなくなっている。
「何故だ…何故――死なない…?」
ラナが駆け寄り、ラナは右横から抱き着いてきた。
(災いの子の能力…? わからない…。)
「ラナ、心臓に刺さった槍を抜いてくれ…。」
『うん…。』
心臓に刺された槍をラナは両手で持ち、引き抜くと貫かれた傷はなくなりすぐに出血も止まるが抜かれる時の激痛はある。
痛みのあまり顔に出てしまう――。
「ラナ…これがラナの能力…なのか?」
『…じゃあどうしてパパとママは死んだの?』
確かにそうだ。
ラナの両親は死んでしまっているのに自分だけが生きていることに違和感を覚えた。
もしラナの能力が他人を不死身にするのだとしたら両親も不死身になっていたはずだからだ。
だが何故自分だけ生きているのだろうか。
わからない――――――。
ラナの両親のことはあまり言わないでおこう。
これ以上、辛い思いをさせたくはない――。
「すまない…また思い出させてしまった…。」
『んーん、いいの…ご主人様がいればラナは平気なの。』
ラナは変わってしまった――。
何故かご主人様と言われることに不思議と違和感を感じなかったが、何故ご主人様なのか問いかけた。
「ラナ…ご主人様って…。」
『リオはラナのご主人様なの。』
「なんでご主人様なんだ…?」
『絵本で読んだの、メイドと主人』
「絵本の内容は?」
『戦うご主人とメイドさんと一緒に戦うお話なの。 サーストとか…クラティアっていう敵とも戦うの!』
ラナの家に置いてあった絵本の名前と同じだ。
詳しい内容は読んだことがないためわからないが、絵本と今を照らし合わせているのだろう。
「なるほど…結末は?」
『最後の絵本だけ、どこにもなくて…最後の結末はわからないの…。』
ラナの誕生日前日、商店街で最後の絵本を探していたのだろう。
ラナはもう元に戻る気配はない。
そして未だにD区域の警報は鳴りやまない――。
結界が無くなった今、周りにいた大量の魔物がD区域に入り込んできている為、ここにずっといるわけにもいかない。
「そうなのか…これからどうする…?」
『ラナはご主人様についていくの。』
少し離れた場所にあるD区域の地下シェルター、中央施設、もしくは無法地帯を通り要塞都市E区域に行く、どれがいいかわからない――。
屋上の周りにある手すりの近くに移動して遠くを見渡すとD区域の地下シェルター、中央施設には大量の魔物が集まっているのが見える。
そして魔物から逃げ惑う市民や銃で対抗する市民、警備隊員がデビルに銃を撃ち、避難誘導などをしており、銃声や爆発音が聞こえる。
多少デビルは倒されているものの銃弾はほとんど避けられ、デビルの槍が投げられ続け、見ているだけでも人間側が押されているのが分かり、このままいけば崩壊するのも時間の問題だろう。
災いの子を連れて行くリスク、大量の魔物を考えると地下シェルターや中央施設に行くのは無謀だ。
残りはE区域、しかし受け入れてくれる可能性は低い――。
無法地帯で安全な場所があるかはわからないが探すしかない。
「無法地帯で安全な場所を探そう…!」
『うん…。』
ラナは少し考えるように頷いた。
正直、安全な場所がある可能性はほぼない。
無法地帯には所々に魔物もいる。
整った防御態勢、魔物が居ない場所を探すのは無理に等しい――。
だが、賭けるしかない。
ひとまず無法地帯を移動する為に、武器の入手が先だ。
「とりあえず教室に戻って支給された銃を取りに行こう。」
銃を入手する為に教室に戻るが廊下や教室には襲撃の痕跡があった。
支給された銃が入っているロッカーはほとんど開けられており、窓ガラスは割れ、壁には弾痕と槍が突き刺さったままで、出血の痕もあるが教室にいた生徒たちは見当たらない。
「さすがにみんな避難したか…。」
『みんなどこにいったの…?』
「今いるD区域の地下シェルターか中央施設の方に向かったはずだ。」
『そこには行かないの…?』
自分は目を逸らし遠回しに喋る。
「大量の魔物がいるから…行けない…。」
『…ラナがいるからなの?』
「災いの子がいるから行けないとかは考えるな…。 大量の魔物がいる以上、行ったところで魔物に壊される…それに約束だろう? ――ずっと一緒にいるって。」
『えへへ…ご主人様…!』
ラナはとても嬉しそうに見つめてくる。
教室の後ろ側にあるロッカーを開け、グレネードランチャーが付いたアサルトライフルのベルトを肩に掛け、ラナには腰にホルスターベルトを付け、新しいナイフだけではなくハンドガンも念のためホルスターに入れる。
『これ…難しいの…。』
「もしもの時の為に持っておくんだ。」
『わかったの…。』
ロッカーの銃は緊急用の為、予備のマガジンなどは実戦練習場にあるため、弾は装填された分しかない。
実戦練習場からは銃声が聞こえる。
「実戦練習場に予備のマガジンを取りに行くのも良くなさそうだ…ここも長くはいられないな。 このまま無法地帯へ行こう。」
『うん…!』
戦闘教育学校から出た後、住宅街にある自分の家に戻り銃や弾薬を取りに戻るのも考えるが住宅街を見ると魔物達が集まっており市民を襲っているのが見える。
家に銃を取りに戻るのはリスクがある。
このまま無法地帯に行き、銃などが残っているかわからないが無法地帯で戦闘があった場所で残った銃や弾薬を回収しつつC区域行くのが賢明かもしれない。
ラナと自分二人でどこまで戦えるかわからない為、魔物と戦うのはできるだけ避けなければならない。
自分とラナはD区域から出るため移動をするが、いたるところから銃声や人々の悲鳴が聞こえてる来る。
このままD区域が崩壊するのも時間の問題だろう。
道中、魔物に襲われた市民の血や死体などが度々見える。
ラナはそれを見ても平気そうに喋る。
『みんな死んでいくの。』
「あまり見ないほうがいい…。」
『えへへ…でもご主人様だけはラナが守るの!』
魔物を避けつつ無法地帯へ向かう途中、突然近くで大爆発が起き、崩れかけていた大きな建物はさらに崩壊し土埃が発生する――。
視界が一気に悪くなる。
「なんだ――!?」
土埃の向こうには薄っすらと人影が見える――。
『To be continued――』
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