Episode.1-4『終わりと始まり』


 近くにある警備場から警備隊員がハンドガンを構えながら家に突入してくる。

 フルフェイスヘルメットで覆いかぶさっていて顔は見えず、防弾ベストも着ている。




 『何事だ!』

 「災いの子は何もしていない…!」




 警備隊員は事件が起こった時や結界外からやってくる者を調査する部隊だ。

 ナイフを投げ捨て、手を上げた。




 『ふむ…事情は警備場で聞こう。』




 自分とラナは警備場に連れていかれ、ラナの家に調査が入り、取り調べが行われた。


 ラナの両親や両親を殺した人間のこと、その人間を殺したことや災いの子のラナについても詳しく聞かれたが災いの子は何もしていないことを証言した。

 中央施設と警備隊員に1週間調査され、殺した人間は犯罪者だったこともあり、自分は要注意人物とされたが正当防衛とみなされ解放された。


 ラナと一緒に警備場から出て、ラナを見るとラナの目は少し輝きを失っていた。

 ラナは両親を失ったショックが大きいのだろう。

 ラナの家に行かせるのはよくないかもしれない――。

 自分の家にラナを呼ぶことにした。




 「自分の家でよければ一緒に住まないか?」




 ラナは暗く返事をした。




 『うん…。』




 ラナと手を繋ぎながら自分の家まで一緒に帰り、家に入る。




 「自分の家はぼろぼろであまりいいものではないが…まぁ…自由に使ってくれて構わない。」

 『わかったの…。』




 泣きそうになっているラナを優しく抱きかかえた。

 静かにラナは涙を流しているのが分かる。



 自分にはこれしかできない――――――。



 少しするとラナは自分の体から顔を離した。




 「落ち着いたか…?」




 ラナは抱いたまま頷いた。




 「今日はもう休もう。」




 ラナをベッドに寝かせ、自分は床で寝ようとするがラナは嫌がり、袖を軽く引っ張られベッドに引き寄せられた。




 『一人…嫌なの…。』

 「ああ…すまない…。」




 自分とラナは同じベッド一緒に寝ることにした。

 ラナは抱き着いてくる。


 しばらくすると落ち着いたのか、抱き着かれたままラナはぐっすりと寝ていた。

 とても寝づらい――。

 しかし、睡魔に襲われ気づかないうちに寝てしまった。




 外から光がさし、鳥の鳴き声が聞こえる――――――。




 「朝か…。」




 ラナはまだ寝ているようだ。


 食べるものが何もないのを思い出し、ラナが起きないようにそっと起き上がり、テーブルに置いてあった6枚のメダルを手に取り、一人で商店街へ向かい、商店街でメダルを6枚使い、二人分の食べ物を買って家に戻った。


 家に着き、家に入るとラナは起きていた。

 ラナは不安になっており、また泣きそうになっている――。




 『リオ…寂しいの…。』

 「ああ、すまない…朝食を買ってきてた。」




 この様子だとあまり一人にしないほうがいいだろう。

 ラナが起きていた為、そのまま朝食を食べた。




 『…学校行くの。』

 「大丈夫なのか?」


 『行かないと…迷惑かけちゃうの…。』




 自分とラナはメダルの持ち金は多少あるものの

 二人となるとすぐになくなるだろう。


 メダルを貯めていなかったことを後悔した――。




 「じゃあ…行こうか。」

 『うん…。』




 ラナと一緒に準備をして戦闘教育学校へ向かった。




 戦闘教育学校に着き教室に入ると一段と生徒たちの視線は冷たかった――。

 そして、普段まったく登校しないガラの悪い3人の生徒がいる。

 3人とも両親は災いの子に殺されたと耳にしたことがあり、他にもこの3人の生徒は悪い噂をよく聞くことがある。


 久々に見るがラナの状況を考えると最悪のタイミングかもしれない。


 席に着き、いつも通り授業を受け、チャイムが鳴り休み時間になった。




 『お手洗いに行くの…。』




 ラナは席を立ち、教室から出てトイレに向かって行った時、ガラの悪い3人の生徒が寄ってきてこちらに話しかけてきた。




 『なあ…本当は災いの子が殺したんだろ?』




 ラナの両親が死んだことや、その犯人を自分が殺したことの噂が生徒たちに広まっていたようだ。




 「…あの子は関係ない。」

 『能力ないくせして、授業もろくにやってないリオがそんなことできると思えないんだよなあー』


 「…お前になにがわかる。」

 『ちょっと来いよー、話そうぜ?』




 挑発しているのだろう。

 面倒だが今のラナにみられるわけにはいかない。


 自分は立ち上がり、そのまま生徒について行き、廊下に出て階段を上り、生徒は屋上の扉を開けて屋上の外に出て奥側で3人の生徒に囲まれた。




 「で、何なんだ…?」


 『なんであの子を庇うんだー? 災いの子だぜ?』


 『そうだそうだ、あの子たちのせいで俺たちはこんな生活をさせられているんだ!』


 「なんでみんな災いの子のせいなんだ!? あの子たちが一体何をしたっていうんだ!!」




 災いの子のせいにする人間達に対し自分はかなりの怒りを覚えていた。




 『わかんねーのかー? あの能力で魔物を呼んだんだろうがよー。』


 『なあ、こいつ災いの子の味方してるしよ、敵って言うことで殺そうぜー。』


 『それは流石にまずいんじゃね?』




 自分はすでに言葉も出なかった。



 ラナが一体何をしたって言うんだ。

 何故、災いの子というだけでこうなる――。


 何も知らないくせに――!!




 『アホだな! 災いの子がやったことにすればいいんだよ!!』


 『そうか! そうだよな!』




 怒りが止まらない――。

 一人の影が近づいてくると同時に一人の生徒はハンドガンを取り出し、構える。




 (ラナに手をだすなら…殺すまでだッ――!!)




 そして銃の番号が見える――。



 5317番、新しい数字だ。

 教室のロッカーにある銃は番号が付いており、生徒にそれぞれ与えられる銃の番号だ。

 5317番はラナ用に支給された銃だ。

 もし使われてしまえば弾が減り、ラナが使ったことにされ罪をかぶされてしまうかもしれない。

 早い段階でロッカーから銃を取り出されていたのだろう。



 抵抗しようと動こうとしたその時、ラナの声が聞こえる――。




 『なんで――。』

 「っ――ラナッ!」




 生徒たちは思わず振り返る。

 ラナは屋上の扉にいて、ラナの声が響き渡る――。




 『どうしてッ――!!』




 銃を持っている生徒は焦る表情を見せ、ラナに銃を構える。




 『まずいっ!』


 『くそっ! 予定が狂った!』


 『どっちも殺せ!!』




 残り二人の生徒もナイフを取り出し構える。

 ラナが叫ぶ――。




 『リオをいじめる人はみんな嫌いッ――!!』




 自分が動く間もなく、一瞬だった――。


 銃を構えている生徒が1発撃つがラナは素早くしゃがみで避け、ナイフを持った生徒が走り、横に大きく切りつけようとするが、自分がナイフを奪い取った時のようにナイフを手のひらで上に弾き飛ばし、そのままラナはジャンプして空中でナイフを右手に取り、右に回転しながら生徒の首を切り裂き、血が噴き出し倒れ、もう一人のナイフを持った生徒に飛びつき頭に突き刺し、刺された部分から血を流し倒れた。


 銃を持った生徒は慌ててもう1発撃とうとするが、人間では不可能な速度で近づき生徒に飛びついて心臓にナイフを突き刺し、引き抜くと生徒は倒れながら血が噴き出し、ラナの髪と顔、そして服に返り血がかかる。



 一瞬で決着がついた――――――。




 「ら、ラナ…。」




 辺り一面、血だらけでラナも血だらけだ。

 ナイフから血を滴らせながら、ラナはゆっくりとこちらへ振り向き、喋る。




 『えへへ…ご主人様はラナが守るの…。 誰にも邪魔させないの…。』




 こちらに対し、ご主人様と言っているのだろう。

 理由は不明だ――。


 自分は考え込み歯を食いしばる。




 「っ――!」




 頭に過る。




 壊れていく…。




 魔物がD区域に入り込み、遠くから悲鳴が聞こえ、サイレンが鳴り響き、緊急アナウンスが流れる。




 『災いの子が死亡したことにより結界が解除されました! 皆は直ちに非難するように! 繰り返します――!』




 何もかも壊れていく…。




 結界が消えたことにより結界の周りにいた魔物はすでにD区域にたくさん流れ込んでいて、デビルという魔物が1体飛んで来る。

 体格は人間に少し似ていて160cm前後あり、全身は緑色でゴブリンに翼が生えたような魔物だ。

 デビルは唯一生成の能力を持っていて槍を生成し、槍を投げつけ攻撃してくる。

 槍は棒状で先端が鋭いだけの物体だが、投げつける速度は弾丸のように速く威力がある。


 デビルの手から槍が生成されていき構え始める――。




 「ラナ――! 逃げるぞ!」




 しかし間に合わない――。

 ラナはこちらを見てしまい不意打ちを受けてしまう。

 ラナに目掛けて魔物、デビルが生成した槍が飛んで来る。




 「危ないッ――!!」




 ラナを庇うように自分が目の前に出た――。

 自分の心臓に槍が突き刺さり、血が溢れ出し、体が倒れる。




 自分も…。




 『いやあああぁッ!!』

 「逃げ…ろっ…!」




 体が動かない――血が止まらない。




 『ご主人様と約束…ずっと一緒にいるって言ったの!! ご主人様が死ぬぐらいなら…ラナは…。』




 壊され続けたラナの目は輝きを失っていた――。




 ラナも…。




 意識が遠のいていく。

 ラナは座り、手を掴み涙を流し、体を寄せてくる。




 (だめだ…ラナだけでも――!)




 …そうだ。




 (守るんだ…。)




 壊されるぐらいなら――――。




 (動け…。)




 全部ぶっ壊してやるッ――――――!!






 (動けッ――――――――!!!)







 体が起き上がる、死んでいてもおかしくない血の量を流していても――――――。














 『To be continued――』

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