Episode.1-3『終わりと始まり』


 自分とラナは商店街に入るが災いの子と一緒にいることもあり人々の視線はこちらに向いていた。

 商店街は今日も変わらず露店で立っているが店は多くはない。

 日常品、戦闘用品、食料品など色々ある。

 ラナは人目を気にせず、とても楽しそうに周りを見ている。

 初めて見る光景に興味津々なのだろう。




 『色んな物がたくさんあるの…!』




 ラナは色々な露店を見渡していき、日用品の露店を見た。

 日用品の露店にラナは駆け寄り、本がある場所を重点的に見て何かを探しているようだ。


 読んでいる本でもあるのだろうか。

 自分は本にあまり興味がない。




 『うーん…やっぱりないの…。』

 「ん…? 何か探してるのか?」


 『んーん! 大丈夫なの!』

 「そうか…。」




 ラナは戦闘用品を揃えてある露店に移動して色々みている。

 ハンドガン、サブマシンガン、ロケットランチャー、スナイパーライフル、アサルトライフル、ショットガン、グレネードや閃光手榴弾…ほとんど揃っている。

 ナイフ、剣などがある露店を見たが剣は今の時代に使える物なのだろうか…。




 『どれも使いづらそうなの…。』

 「聖剣でもあれば簡単に魔物も世界も…。」


 『聖剣があってもきっと倒せないの!』

 「そうかもな…。」




 ラナは別の方を見て、視線を止めた先には服屋があり、ラナは近づく。




 『服がいっぱいなの!』

 「あー…食事奢ってもらったの返してなかったな。 よかったら好きなの1つ買うぞ。」




 ラナに奢ってもらったことを思い出し、好きな物をプレゼントすることにした。

 服屋には、かっこいい服や可愛い服、ロングコートやメイド服など色んな服がたくさんある。

 ラナは頷くと服を選び始め、少しすると服を持ってきた。




 『これ…ほしいの!』




 黒めの服に襟先は丸くフリル付いており、4つのとめるボタンと裾前と裾周りにもフリルが付いている。

 少し赤みがかった黒いスカートに白いフリルが付いた物を持ってきた。




 「似合いそうだな。」




 ラナはにっこりと笑みを浮かべた。

 ラナと一緒に店員のところへ服を持って行き服を購入する。

 若い女性の店員は元気よく喋る。




 『15メダルになります!』

 「これで15メダルだ。」




 ポケットから15メダルを取り出し、店員にメダルを渡した。




 『毎度ありがとうございます!』




 購入した服をラナに渡し、プレゼントした。




 『リオ、ありがとうなの!』

 「ああ、前のお返しだ。」




 ラナは大事そうに持ち、とても嬉しそうにしている。


 服屋を離れ、別の場所に行こうとするとラナは手を繋いできた。




 「ん…?」




 ラナの方を向くと目をそらし、とても照れたようにしていた。

 自分は微笑み、手を握り返した。

 アイス屋の前に差し掛かりラナは足を止め聞いてくる。




 『あれ…なあに?』

 「あれはアイスだ。 冷たくて甘いぞ。 食べてみるか?」


 『食べてみたいの!』




 自分はポケットからメダルを取り出し、店員に3メダルを渡し、アイスを1本頼んだ。

 アイスは牛乳を凍らせ固めたもので棒アイスだ。

 アイスを受け取り、ラナに渡す。




 「あっちに座ろう。」




 近くにあるベンチに一緒に座りラナはアイスを食べ始めた。




 『おいしいの!』




 ラナはとてもゆっくりアイスを食べていて、アイスが少し溶け始めていた。




 「早く食べないと溶けるから気を付けてな。」

 『わかったの!』




 それを聞いたラナは急いでアイスを食べ始める。




 『ふぁ…頭があ…。』




 急いで食べて頭に冷たさがのぼったようだ。




 「そ、そんなに急がなくても大丈夫だぞ…。」




 ラナはアイスを食べ終え、ラナが寄り添ってきた。




 『リオ…。』

 「どうした?」




 何かを言おうとしているが息が詰まっているようだ。

 かなり言いづらそうに喋る。




 『…好き。』




 声が小さくて聞き取れなかった――。




 「ん…なんて言った?」

 『やっぱりなんでもないの…。』




 気になったがかなり恥ずかしがっている表情で自分はなんとなく察した。


 少し休んだ後、また商店街を見回り始め、しばらくして自分とラナは商店街を見終えた。

 ラナはとても嬉しそうに喋った。




 『えへへ…楽しかったの!』

 「楽しめたようでよかった。」


 『ラナのお家の場所教えるの!』

 「ああ、そういえば教えてもらってなかったな。 教えてもらうついでに家まで送る。」


 『うん!』




 ラナに案内され、商店街を出てしばらく歩いてラナの家の前までたどり着く。

 辺りは住宅街、そして中央施設よりかなり離れており、結界が貼られている外側に近い。

 周りに建物はあるものの住んでいる人は少なく感じる。

 しかし、近くには警備場がある。

 ラナは災いの子でもある為、何かあった時の為に近くにあるのだろう。


 家は2階建てで傷が少なくかなりいい家だ。




 『えっと…今日はありがとうなの…明日お家でまってるの…!』

 「ああ、また明日な。」




 ラナはにっこりとしながら手を振り、家に入っていく。




 「誕生日か…誰かと一緒にいたことなんてなかったな…。」




 母と父は生まれる前に亡くし、叔母も忙しく友達は居たものの誕生日は一人だった。

 誰かが隠れた足音のようなものが聞こえ、何かの気配を感じ振り向いた――。




 「ん…? …気のせいか。」




 振り向いた先には誰もおらず、そのまま結界の外を見た。




 「しかし、ここ2週間ほどで結界の外の魔物がかなり増えたな…。 何かいてもおかしくはないが…。」




 結界の外は普段より魔物がかなり多くいる。

 小さくてよく見えないが、デビルがたくさん飛んでいる。

 デビルは緑色でゴブリンに羽が生えたような生物だ。


 気配のことは気にせず帰宅し、そのままいつも通り過ごした。




 次の日――――――。


 ラナと自分の誕生日だ。

 緊張しつつもラナの家の前までやってきた。



 ラナの両親と会うのは初めてだ。


 深呼吸をしてドアをノックした。

 中からラナの母だろうか、声が聞こえた。




 『はーい。』




 少しするとドアが開き、ラナの母と対面する。

 私服でエプロンを付けたまま出てきた。

 容姿はラナに似ているところがあり、黒髪ロングヘアーだ。




 『こんにちは、リオ君かい?』

 「あ、ああ。」




 ラナの母は笑顔で喋ってくる。




 『ラナと仲良くしてもらってるのは聞いてるよ、ありがとうね。 ささ、あがって。』


 「お邪魔する…。」




 ラナと一緒にいたことは色々と聞いていたらしい。

 緊張が少し解けた。




 『ラナー?! リオ君が来たよー!』




 ラナの母は2階に向かって叫ぶ。

 するとラナは2階から降りてきた。


 ラナの姿がみえ、ラナを見ると昨日買ってあげた服を着ていた。

 ラナが着ている服は似合っている。




 『リオ、いらっしゃいなの! 2階に来てなのー!』




 ラナはこちらの腕を掴み引っ張るように部屋へ呼び込んだ。




 「おわっ…!」




 引っ張られた勢いで少し転びそうになる。

 それを見ていたラナの母は安心したかのようにふふっと笑い、リビングに戻っていった。


 2階に上がり部屋の扉を開けると、低いテーブルの上に手作りの食事が置いてあった。

 周りには本棚、ベッド、クローゼットや押し入れがある。

 そして床には1冊の本が置かれている。


 絵本にはメイドと主人と書かれている。

 この絵本に目がいき、少しの間止まってしまうが、ラナに押され部屋に入った。


 テーブルがある場所に座り、ラナはくっついて、にっこりと笑う。




 『えへへ! 一緒に食べよ!』




 小さく微笑み、ラナの頭を撫でた。

 ラナはとても嬉しそうにしている。



 ラナと出会ってからは自分は変わった。

 本当は誰とも関わらないつもりだった。




 しかし、何かに引き寄せられていた――残酷な運命という始まりと共に。




 ラナはべったりとくっつき喋る。




 『リオ…。』

 「ん?」


 『ずっと、一緒…約束なの。』

 「ああ…一緒だ。」


 『えへへ…。』




 ラナは幸せそうにしていた。

 しばらくして、一緒に食事を終えると、1階から悲鳴が聞こえた――。




 『パパの声…!!』

 「なっ…!!」




 一目散に部屋の扉を開け、階段を降り、悲鳴が聞こえた部屋に向かった――。


 悲鳴が聞こえたリビングの扉を開け、入ると血の付いたナイフを持った知らない男がいる。

 ラナの両親には無数の刺し傷があり、血を流し倒れているのが目に入り、知らない男はこちらに振り向く。

 ラナの両親には息が感じられない――――――。


 返り血が付いた男は大柄だが顔は痩せこけている。




 「お前ッ…!!」




 殺意が湧くが、こちらは武器を持っていない。




 『なあ…災いの子はどこだよ…。』

 「何だ…!」


 『復讐だよ…俺の両親は災いの子に殺されたんだよッ! あァ!!』




 男はナイフをちらつかせている――。


 ラナも降りてきてしまい、自分の後ろで足を止める。




 『パパ…ママ…!』

 「来ちゃだめだ…!」




 血を流し倒れている両親がラナの視界に入り、それと同時に男は災いの子のラナが視界に入った。




 『へへっ…いるじゃねぇか…おめぇも用済みだ、死ねェ!!』




 男はナイフを突き立て襲い掛かってくる。

 やったことはないが、一か八かやるしかない――!



 自分で昔、知識と共に編み出した技を使う。

 実戦ではやったことはない。


 武器を持っていないと油断して突っ込んでくる。

 こういうやつは単純だ――――。



 左腕と体の間でナイフを回避し同時に男の腕を掴み、刃先のない横側から手のひらで殴りこんでナイフを吹き飛ばした。

 そのまま男を蹴り飛ばし、吹き飛ばしたナイフを拾った。




 「はあああぁぁぁッ!」




 自分の両親が殺されたことを知った時の怒りが蘇り、ラナの両親を殺した怒りが共に込み上がっていた自分はそのまま男の心臓にナイフを刺し、殺した。




 『がぁッ!』




 男は崩れ落ち、血を流したまま息がなくなった――。


 昨日の商店街からつけられていたことに気づく。




 「くそっ…あの時の気配…もっと早く気づいていれば…。」

 『パパ…ママ…。』




 ラナは棒立ち状態で驚きを隠せないまま涙だけを流し、泣いていた――。













 『To be continued――』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る