Episode.1-2『終わりと始まり』
戦闘教育学校に到着し、教室入る手前で教室を見ると先にラナが座って待っていた。
ラナは軽く俯きながら不安そうに周りをキョロキョロと見ている。
周りの雰囲気は相変わらず冷たい。
教室に入り、席に近づくとラナは挨拶をしてくる。
『リオ、おはようなの…。』
「…おはよう。」
挨拶を返すとラナは嬉しそうにし、安心している。
(こんなやり取りをするのはいつぶりだろうか…6年は誰とも関わっていなかったはずだ。)
自分は席に着き、昔を思い出す。
人と関わらなくなって学校にまったく行かなくなったのは10歳の時。
叔母が魔物によって殺された時だ。
自分の実の親、母と父は黒い少女の災いの子に殺されと叔母から聞いた。
両親が殺され時はまだ母のお腹の中に自分は居たらしい。
かなり危険な状態で自分は発見され、安全な場所に連れていき、母のお腹を切り込み、取り出されたと聞いている。
当時は相当な激戦状態だったらしい。
そんな中で自分は生まれ叔母にそのまま育て上げられていった。
しばらくして防衛体勢が強化され、ある程度平和になり学校に通っていたが魔物の侵入があり、家に帰ると叔母が魔物に殺されてしまっていた。
その時はみんな恨んだ。
みんな憎かった。
(自分が弱い…どうせこれからも自分は弱い――。)
何もかもが嫌だった。
だけど気持ちはすぐに変わった。
(こんな世界になったのが悪いんだ…このまま壊されていくぐらいなら――ぶっ壊してやるッ!!)
そう、弱いんだ――力なんて元々ない。
ならどうする?
力がないなら技を極めればいい!
技がダメなら知識を強めればいい!
(一般的な強くなる方法じゃだめだ…探して自分で編み出そう…!)
決意を抱き、5年間は一人で修行を続けた。
その結果、一般よりは強くなった。
だけど人間には限界があった。
並外れた力を持つ魔物や災いの子たちの能力には勝てない。
それを知ってから何もかもがどうでもよくなり適当に生きるようになった。
自分は俯きながら昔を思い出していると、心配したのかラナが声をかけてくる。
『リオ…? どうしたの…?』
「ん…いや、ちょっと考え事をしていただけだ。」
『大丈夫そうならよかったなの…。』
(少し昔のことを思い出しすぎたな…。)
昔のことを思い出しているうちに授業が始まる時間になっていた。
自分はいつも通り変わらず授業は聞かず、適当に過ごす。
ラナに近接戦、体術戦などのわからないところを聞かれ、昨日と同じく簡単に説明した。
昼まで授業が2回続きチャイムが鳴り授業が終わる。
「昼か。」
『お昼…学校で一緒に食べてみたいの…。』
「あー…っと…すまない、メダルを持ってくるの忘れた。」
わざと持ってきていないと言ったが普段メダルは持ち歩かず、貯金もしていない。
そして、お昼には大体帰ってる場合が多い。
戦闘教育学校で食べるこも可能だが学校のは高級でメダルが12枚必要で2枚足りない。
『ラナが奢るの…。』
ラナはどうしても一緒に食べたいようだった。
「いいのか…?」
『うん。』
誰かと一緒に食べるのも何年ぶりだろうか。
「すまない…今度別な時に返す…。」
普段、戦闘教育学校に行かないからメダルはないが、まさか幼い子に奢ってもらうとは…。
少し恥ずかしくなった。
他の生徒は食べ物を持ち込んで食べていたり、一度帰宅して食べている者もいる。
戦闘教育学校の食堂に移動しメダルを予定通りラナに奢ってもらい、カウンターで食べ物を受け取り、席は隣同士で食事することになった。
食べ物はパン、牛乳、肉の缶詰。
普段食べている物より断然豪華だ。
『えへへ…初めて他の人と一緒にご飯食べるの…。』
一緒に食べたかった理由は他の人と食べてみたかったからなのだろう。
ラナはとても嬉しそうだ。
「まさか本当に奢ってもらうことになるとは…。」
『いいの…来てくれて嬉しいの…。』
ラナに言われ自分は少し照れてしまう――。
久々の一緒に食べる豪華な食事に自分も嬉しかった。
「そういえば、この学校に来る前はどうしてたんだ?」
ラナは災いの子というのもあり、食事をしながら色々聞いてみることにした。
『うーんと…学校に行けないからお家でパパとママに色々教えてもらったりしてたの。 でも…お外には全く出られなかったの…災いの子だから…。』
災いの子という言葉でラナは少し落ち込んだ様子になっている。
「やはりそうなるか…基本的には中央施設の隔離場か無法地帯にしか居ないことになってるからな…。」
『でも…パパがどうにか許可を得るために中央施設で働いて管理者にお願いしたの。 そうしたら厳密調査とデータ提供をしたらD区域に入れてもいいって…言われたの…。』
「ここのD区域にある結界も入れたのか。」
『うん…でも攻撃性のある子は通れないってパパが言ってたの…。』
「それでここまで入って来れたわけか…。」
『リオは…怖くないの…?』
ラナは不安そうに聞いてきた――。
「ん…何がだ?」
『…災いの子。』
「怖くなんかはない、災いの子だからと言っても普通の人間と変わりないだろう。 確かに能力とかは人間にはないが、こうやって話をしていれば普通に同じだ。」
『えへへ…嬉しいの…。』
人間達が災いの子に示す道を間違えなければきっと災いの子も悪にはならないだろう。
ラナの顔が穏やかになりラナの気持ちが晴れたようだ。
『でもどうしてリオは他の人とお喋りとかしないの…?』
「んー…えっとな…。」
自分は少し考え、過去を簡単に説明することにした。
「10歳の時に魔物に叔母が襲われて死んでから一人で修行をしてて誰とも関わらなくなったからなんだ…。」
『リオは一人、寂しくないの…?』
「寂しい…? わからない…。」
寂しいなんて考えたこともなかった――。
『リオがよかったら…この先もずっと…一緒に居たいの…。』
ラナは照れているのが見てわかる。
たまには誰かと居るのもいいかもしれないな…。
そしてラナを一人にさせたくない気持ちも強い。
「…別に構わない。」
『えへへ…。』
少しの間、沈黙が続いた――。
自分は話を変えることにした。
「…ラナは何歳だ?」
『11歳だよ…? 再来週誕生日なの!』
「5個下か…再来週…ん、同じ誕生日なのか。」
ラナはもじもじとしながら喋る。
『え、えっと…誕生日、お家来てほしいの…。』
「お邪魔していいのか?」
『うん…おいしいもの一緒に食べたいの…!』
「…わかった。」
ラナは嬉しそうににっこりとし、食事を終えた後、授業を再開した。
授業を2回受けそのまま変わらず、この日は終え帰宅することになった。
戦闘教育学校手前でラナは手を振りながら喋り帰って行く。
『また明日なの!』
「ああ、また明日。」
自分もそのまま家に帰宅し、いつも通り1日を終えた。
戦闘教育学校にラナが来る日は毎日向かった。
変わらず日々を過ごしていると中央施設の管理人から災いの子の情報を出し商店街に行ってもいい許可が下りた。
そのこともあり誕生日の前日、自分はラナに誘われ商店街に向かうことになった。
『To be continued――』
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