第3話 夢と冒険の物語

 人気のある物語には一定の「物語を構成する共通点・パターン」があります。

 お約束と言っても良いでしょう。


『夢と冒険の物語』は7w8(現実主義者)が主人公の物語。


 第1・2話で考察した『ドラゴンに囚われたお姫様を王子様が助け出す物語(9w1)』『姫騎士の物語(6w5)』に次いで3番目に多く見られる人気ストーリー展開。

 一昔前の少年マンガに多く見られ、有名な作品は「ドラゴンボール」「うる星やつら」「ヒカルの碁」等。最近の作品だと「怪獣8号」「進撃の巨人」「リコリス・リコイル」等が7w8が主人公のお話となっています。


『ドラゴンに囚われたお姫様を王子様が助け出す物語(9w1)』(衛宮 士郎・竈門 炭治郎など)や『姫騎士の物語(6w5)』(フリーレン・アルスラーンなど)の主人公は生真面目で「地に足が付いたお話」なのに対して『夢と冒険の物語』の主人公は夢を追いかける楽天家で明るく「浮ついた感じがするお話」が特徴。


しかし一見明るく能天気な雰囲気がする『夢と冒険の物語』ですが、主人公の心の奥底には深い闇が隠されています。「進撃の巨人」や「ベルセルク」など、物語によってはその闇が表面に溢れ出すお話も時折見られます。

7w8の主人公は心の底に深い闇を抱えています。主人公が「夢を追い求める楽天家気質」なのはこの「心の底の闇」から逃げ出したい為。自分の「内」にある深い闇に眼を向けるのが怖いので「外」に対して夢を見出し冒険へと出かけるのです。



今回の記事を書く為に7w8が主人公のお話49作品を並べて分析。すると7w8が主人公のお話は大きく以下の4種類に分かれる傾向が見えてきました。


①【面白おかしいお話】

②【ヒーローを目指すお話】

③【宿敵を追い求めるお話】

④【恋人を追い求めるお話(恋愛もの)】


この4種類のお話は物語から感じる雰囲気が大きく異なっています。その違いと理由について考察していきましょう。


①「面白おかしいお話」


7w8が主人公のお話の基本形。


タイプ7w8(現実主義者)は基本的に明るく人生を楽しみたい(タイプ7)タイプ、それに加えて現実的で社交的、人と仕事をするのを好む(タイプ8)性格。

7w6より仕事中毒の傾向があり、人とのつながりよりも、出来事を引き起こすことに関心がある。ひとりでいることを恐れない。


「表の性格」が前面に出ているストーリー展開。7w8は現状に満足せずに未来に向けて楽観的な行動を行います。それが「夢と冒険を追い求めるお話」。少年マンガに多く見られるお話。

表面上はいつもワクワクドキドキ、楽観的な姿を見せる主人公。しかし心の奥には大きな闇を抱えており、その様子が物語の中で時々現れる事もあります。


【このパターンの主人公達】


アッコ(リトルウィッチアカデミア)

アニスフィア(転生王女と天才令嬢の魔法革命)

一姫(じゃんたま PONG☆)

おじさん(異世界おじさん)

サラ(変人のサラダボウル)

サンラク(シャングリラ・フロンティア)

孫悟空(ドラゴンボール)

パピカ(フリップフラッパーズ)

諸星 あたる(うる星やつら)

ルパン三世(ルパン三世)

レグ(メイドインアビス -烈日の黄金郷-)

ロイド(転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます)

橘 日向(異世界美少女受肉おじさんと)

玉木マリ(宇宙よりも遠い場所)

錦木 千束(リコリス・リコイル)

笹木 美代(泣きたい私は猫をかぶる)

蛇喰 夢子(賭ケグルイ)

進藤 ヒカル(ヒカルの碁)

赤城 りん(逆転世界ノ電池少女)

纏 流子(キルラキル)

藤井 かな(ヒーラー・ガール)

納野 和(であいもん)

輪堂 凛(HIGHSPEED Étoile)



②「ヒーローを目指すお話」


ヒーローを目指すお話は「裏の性格」が強く出ているお話。7w8の裏性格は3w2。


タイプ3w2(魅了する人)は基本的に目立ちたがり屋(タイプ3)の性格、それに加えて他人の事が気になるおせっかい焼き(タイプ2)な面があります。

3w4より人と親密でいたいという衝動を持っていますが、ときに、より充実した私生活や家庭的安定の代わりに、公的な生活やそこで認められることを選びます。感情に動かされやすくのびのびしている。


裏の性格の影響で人々の賞賛を得られるヒーロー(目立ちたがり屋でおせっかい)を目指す主人公のお話。


②【ヒーローを目指すお話】の具体例


基本は①「人生を楽しみ尽くしたい主人公」のお話と同じですが、②の物語はこれに加えて主人公がヒーロー(かっこ良さ)を目指しています。

②の物語では7w8の主人公は「自分勝手に人生を楽しみ尽くす(表の性格の)生き方」に行き詰っています。その壁を乗り越える為に裏の性格(3w2)となり、「みんなの賞賛を得る生き方(ヒーローを目指す)」を行う。①の物語の発展形のお話となっています。


【このパターンの主人公達】


エレン(進撃の巨人)

ルーデウス(無職転生 ~異世界行ったら本気だす~)

愛城 華恋(少女☆歌劇 レヴュースタァライト)

石田 将也(聲の形)

宇髄 天元(鬼滅の刃)

桐谷 進也(THE NEW GATE)

月見 英子(パリピ孔明)

月野 うさぎ(美少女戦士セーラームーン)

桜木 花道(SLAM DUNK)

戦闘員D(戦隊大失格)

渡辺 さらさ(かげきしょうじょ!!)

日比野 カフカ(怪獣8号)

八神 太一(デジモンアドベンチャー)


③「宿敵を追い求めるお話」


「憧れ方向」の影響が強く出ているストーリー展開。7w8の憧れ方向はタイプ1。

タイプ7は真面目で理想を持つタイプ1に憧れます。その憧れの象徴として物語にタイプ1の「宿敵」が登場。主人公(7w8)が憧れの存在に向けて歩みを進めるお話。

ただし「憧れ方向」は同時に「闇落ち方向」。重く暗いお話の傾向があります。


こちらのお話も基本は①「人生を楽しみ尽くしたい主人公」のお話と同じですが、③の物語ではこれに加えて主人公が宿敵・ライバルを強く追い求めています。

③の物語でも7w8らしい明るくおちゃらけた展開は描かれています。しかし同時に暗く重いお話の展開が多く見られます。

暗く重いお話の傾向は「宿敵は強ければ強いほど、怖ければ怖いほどお話は盛り上がる為」と共に7w8の主人公が持つ「心の奥底の闇」に踏み込んだ作品が多いから。詳しくは次の④「恋人を追い求めるお話」で解説していきます。


【このパターンの主人公達】


ヴァッシュ(TRIGUN STAMPEDE(トライガン スタンピード))

ガッツ(ベルセルク)

ガンバ(ガンバの冒険)

トウカイテイオー(ウマ娘 プリティーダービー)

赤星 ビスコ(錆喰いビスコ)

園田 未知(もういっぽん!)

千倉 静留(終末トレインどこへいく?)


このパターンのお話は「明るくおちゃらけた展開」と「暗く重苦しい展開」が同時進行する所が注目ポイント。



④「恋人を追い求めるお話」


こちらも「憧れ方向」の影響が強く出ているストーリー展開。7w8の憧れ方向はタイプ1。


タイプ7は真面目で理想を持つタイプ1に憧れます。その憧れの象徴として物語にタイプ1の「恋人」が登場。主人公(7w8)が憧れの存在に向けて歩みを進めるお話。


このパターンのお話では主人公の憧れである「恋人(タイプ1:ヒロイン)」とは別に主人公に憧れている「幼馴染み(タイプ5:サブヒロイン)」が登場。いわゆる三角関係の物語が定番。

主人公は成長方向の影響(タイプ5)を受ける事によって「闇落ち」せずに「正常な成長」を経て最後に恋人とのハッピーエンドを迎える事ができるのが基本パターン。軽く明るいお話の傾向があります。


こちらのお話は③の「宿敵を追い求めるお話」と似た構成。④「恋人を追い求めるお話」は主人公は「宿敵」ではなく「恋人」を強く追い求めています。


宿敵と恋人は共にタイプ1(タイプ7の憧れ方向)。

異なるのはタイプ5キャラクターの意味合い。


「恋人を追い求めるお話」の人物関係は基本的に三角関係の構成となっており、タイプ5のキャラクターは主人公の幼馴染み(又は気楽に付き合える友達関係)のケースが多いです。三角関係の様子は以下の図で表す事ができます。


③のお話は主人公(タイプ7)に対して「宿敵・ライバル(タイプ1)が圧倒的存在」なのに対して、④のお話では主人公(タイプ7)に対して「恋人(タイプ1)と幼馴染み(タイプ5)が同等」の位置にいます。その為、主人公は憧れ(闇落ち方向)であるタイプ1のみに囚われずにタイプ5(成長方向)の良い影響を受ける事ができるのです。

その事が③のお話に比べて明るく前向きなお話になる原因なのでしょう。ただし、主人公に対して「幼馴染み(タイプ5)」よりも「憧れの存在(タイプ1)」の影響が強すぎる(1と5のバランスが取れていない)場合、暗いお話になる傾向があります。


【恋人を追い求めるお話(恋愛もの)】の具体例


五代 裕作(めぞん一刻)

※主人公の憧れは音無 響子(タイプ1:完璧主義者)

※主人公に憧れを持つのは七尾 こずえ(タイプ5:観察者)


矢口 春雄(ハイスコアガール)

※主人公の憧れは大野 晶(タイプ1:完璧主義者)

※主人公に憧れを持つのは日高 小春(タイプ5:観察者)


わかば(ケムリクサ)

※主人公の憧れは りん(タイプ1:完璧主義者)

※主人公に憧れを持つのは りょく(タイプ5:観察者)


7w8の恋愛ものがとても少ないのでちょっと驚きました。7w8は孫悟空(ドラゴンボール)に代表されるように身近な人物に対して恋愛するよりも外の世界に冒険に出かける方が性に合っているのでしょう。



①~④の物語の違いをまとめると以下の通りになります。


①【面白おかしいお話】

「表の性格(7w8)」の影響がそのまま出ているストーリー。


②【ヒーローを目指すお話】

「裏の性格(3w2)」の影響が強く出ているストーリー。


③【宿敵を追い求めるお話】

「憧れの性格(タイプ1)」の影響が強く出ているストーリー。


④【恋人を追い求めるお話】

「憧れの性格(タイプ1)」と同時に「成長方向の性格(タイプ5)」の影響が強く出ているストーリー。


まだまだサンプル数が少ないのであくまで仮説となりますが今後、この分類を元にして検証を重ねていきたいと思います。


物語を分類してまとめていく事でみなさまの創作活動の参考になればとても嬉しいです。


今日はここまで。


まだまだ勉強不足で、勘違いや、解説に至らぬ点も多くあると思います。

疑問点などありましたら是非教えてください。

この記事があなたの「創作活動」と「物語を楽しむ事」に少しでもお役に立てると嬉しく思います。

みなさんの毎日が楽しく幸せなものになりますように!

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定番ストーリーの考察 がんべあ @gunber

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