322 まぁ、こうなったら仕方がねぇな

 広田とダッツの不仲を解消しようとした俺だったが。

矢張り、お互いの意見の食い違いから上手く行かず。

酷い口論の末……その言葉に耐え切れなくなったダッツは、その場から逃げ出してしまった。


そんな彼女をフォロ-する為に、一緒に居た素直が追いかけて行き。


広田君と俺は、男2人で、その場で残る羽目に成った。


なにこれ?(。´・ω・)?


***


「あぁ~~あっ、やってくれやがったよ。最悪だな。オイオイ、オマエのせいで楽しい筈のランチが台無しだよ。どう責任を取ってくれんだよ?」


そんな中、これは何気に吐いたセリフなんだが。

俺の中で、このセリフを吐くまでの間に、幾つかの選択肢があった。


①「津田……行っちまったぞ。オマエどうすんだよ?」

②「オイ、なにダッツ泣かせてくれてんだ?オマエ、ちょっと面貸せや」

③「あぁあぁ、オマエのせいで、楽しい筈のランチが台無しだ。どうしてくれんだよ?」

の3点だ。


だが①を選択した場合は、今の広田の心境からして、反論する恐れがある。


此処では、下手に奴の感情を刺激すべきでは無いと判断したので、この選択肢は却下。


②の場合は、広田自身に負い目がある分、付いては来るだろうが……俺も、俺なりに津田の事を想っている気持ちが有るから、お互いが思いっきり感情的になって、ガチの喧嘩になりかねない。


これじゃあ、本末転倒になっちまう。


故に、この選択肢も削除。


③の場合は、広田は、津田の事より、コイツの性格からして、俺に大きな負い目を感じる筈。

これは、津田の事をどうとも思ってないのではなく、広田が津田に甘えてる証拠だ。


故に、この③を選択するのが、正しいと踏んだ訳だ。



さて、この選択肢はどう出る?



「申し訳ない事をしたな。まさか、こんな事態になるとは、俺も予想もしてなかったんでな」


オッシ!!ビンゴだ!!

広田のこの反応からして、一応は俺の思惑通りの思考に成ってくれてるみたいだな。


ならば!!此処はもぉ1押しすべき所だな。



「オイオイオイオイ、幾らなんでも、そんな謝罪だけをして終わりとか言うなよ。ダッツも、素直も、俺の為に、飯まで用意してくれてたんだぞ。それを心の篭ってねぇ様なそんなチープな謝罪じゃ、罷り通らねぇ事ぐらい解るよな」

「では、俺に、どうしろというんだ?」

「なぁんって事はねぇよ。喰う飯が無くなったから、オマエが飯を奢れ」

「それで、倉津に対するスジは通るのか?」

「あぁ、通るな。但し、俺の昼食は外食と決まっている。そこに今から行くから、オマエも付き合え」

「午後からの授業は?」

「そんなもん知らねぇよ。つぅかオマエ、自分のやらかした事の責任ぐらい取れよな。テメェでやった事だ。午後の授業をサボるぐらいのリスクを背負えよな」

「あぁ、確かに……それには一理あるな」

「じゃあ、早速で悪いが、付き合って貰うぜ」

「あぁ」


思ってた以上に、アッサリ承諾してくれたな。


まぁ、この場合……俺に対する負い目よりも、広田自身も、こんな蟠りだらけの状態じゃ、勉強も、仕事も手に付かないと判断したんだろう。

それに、幾ら朴念仁だとは言え、津田と、俺との関係も薄々感じ取ってる筈だ。

だから此処が気になっても、おかしくはないしな。


矢張り、今日も俺は不幸だが、完璧だ。


……なんて言ってる場合でもないよな。

取り敢えず、なんにしても場所移動だな。

これだけの騒ぎになった以上、此処に長く滞在する訳には行かないしな。


しかしまぁ、困ったな。

流石に、話が話だけに、学校で堂々と話す様な内容じゃないしな。

かと言って、どこかの店に入って話したとしても、お互いの感情の昂ぶりから声がデカく成って、店に迷惑を掛ける可能性すらある。


故に、外食とは言ったが、店に入る訳にもイカンなぁ。



っとなるとだ……あそこしかねぇよな。


不本意だが、しゃあねぇか。


***


 俺は、無理矢理広田の帰り支度をさせてから外に出た。


最初は、このサポタージュに対して、多少の文句を言ってくるものだと踏んでいたが、奴は、なにも言わずに俺の後ろを付いてくる。


どうやら自分自身が、俺以外にも、何か負い目を感じる所があるんだろう。

勿論、それがある以上、津田の事を諦め切れてもいない証拠でもあると言えるだろう。


ってか、この様子からしてだな。

恐らく広田は、津田の件も然り、仕事や様々な環境の変化に適応出来ていないのだろうな。


これについては、ほんの少しだが同情する。


何故なら、俺には、そんな広田の気持ちがよく解るからだ。

特に『彼女』と言うカテゴリーの方は、手に取る様にわかる。

お互い、必要以上に出来の良い彼女を持ってしまい、彼女達に甘え放しだもんな。


自分のやりたい事をやって、相手の気持ちを、中々汲んでやれないジレンマ。

そんで気付けば、泥沼の精神状態。

まぁ、これを自業自得と言ってしまえば、それで御仕舞いなんだが。

今、奴は、津田が居なくなって初めて知る『彼女の有り難味』ってもんを感じてる筈だ。


……ただな。

此処に行き着くまでの状況で、俺と広田に違いが有るとすれば、彼女の思考の大きさが、大きく影響している。


奈緒さんっと言う人間は、俺が言うのもなんだが、かなりの変人。

俺の性質の悪い所すら、なんでも受け入れるし、しかも、それを糧にして、自分の成長に変えてしまう事が出来る。


故に、あの人の精神力の強さは尋常じゃない。


それに比べて、津田の精神状態は、まだまだ幼い。

あの年齢にしては、かなり良く出来た性格なんだろうが、まだ恋愛の残酷さと言うものが良くわかっていない。


勿論、その年齢のせいもあるんだが、まだ『恋愛を楽しいだけのモノ』だと思ってる節が多く見え隠れしている。


故にだ、他の事ならいざ知らず、事、恋愛事になったら冷静な判断出来ず、感情に身を任せてしまう。


此処の精神的な部分の差は大きい。


勿論『恋愛を楽しいモノ』と想定するのは、決して悪い事じゃないんだが……男女関係ってのは、それだけじゃ乗り越えられない壁が多く存在し、彼氏の為に必死に成れば成る程、その壁は高く聳え(そびえ)立ち、津田の思考を混乱に導く。


そして、解答がある向こう側を、簡単には見せてはくれない。

故に、心と体が上手く噛み合わず、この試練を中々乗り越えられないんだよな。


でも、実は、この試練ってな。

お互いが手を差し伸べあえば、意外にも簡単に乗り越えられる事が大半で、基本的には大した問題ではない。


だが、矢張り、テンパってしまっている思考では、これにも中々気付けない。

正に、先程も言った、精神的な泥沼に行き詰ってしまう。


そして・・・・・・2人の意見が激しく食い違い。

最終的には、最悪な結論に至ってしまう可能性すら孕んでいる。


お互いを好きなままで、別れを切り出してしまう。

相手を想ってるのに、別れたんじゃ本末転倒だと言う事にすら気付けずに。


特に恋愛初心者って言うのは、こう言う最悪なケースに陥り易い。

これが、今の津田と広田の関係と、俺と奈緒さんの関係の違いだと、俺は認識している。


故に、2人には、精神的な成長をして、なんとか仲直りをして欲しい訳だ。


まぁ、そうは言っても、別に広田なんぞ、どうでも良いし、どうなろうと知ったこっちゃねぇが、津田は良い奴だからな。

馬鹿男の為に、そんな津田が泣くのは、どうにも許せないんだろうな。


まぁ、俗に言うお節介って奴だな。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


流石に、序章で、嫌と言う程、恋愛関係を学んだだけに。

倉津君も、この辺りの考えについては、かなりシビアに考えられる様に成ってるみたいですね。


しかも、この第一章に入ってからは、女子からの恋愛相談を沢山受けて来ただけに。

どうやら、その辺りの心理状況も、よく理解しているみたいです。


まぁ此処は『牛にひかれて善光寺参り』って所ですかね(笑)


さてさて、そんな中。

なにやら外食する為に、何処かに移動しているみたいですが……倉津君達は、一体、何処に行くんでしょうね?


次回、その場所が明らかに!!


……ってまぁ、そんな大層な話ではないのですが。

少しでも気に成りましたら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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