312 んじゃあ、そろそろ悩みを聞こうじゃないか

 屋上での食事を、少々揉めつつも終えた俺とダッツ。


だが、そうやって少し揉めただけに、話を切り出し難いのではないかと考えた俺は、その場でタバコを吹かして、真面目なダッツが注意して来る様に仕向けてみた。


……にしても、酷い興味の引かせ方だな俺(;゚Д゚)


***


「あっ、煙草吸ってる」


案の定、比較的真面目な性格の津田は、俺のタバコを注意して来た。


けど、これで話の切欠は出来た。

っと成れば、後は、此処からどう会話を続けて、悩みを引き出して行くかだな。



「そんな堅い事を言うなよ。食後の煙草は、メッチャ美味いんだからよ」

「むぅぅうぅ、ダメ!!……って、言いたいんだけど。今日は辞めとく。今日は、私も不良さんなんだもんね」

「そういうこった。今日だけは、オマエも不良の真似事をしてるんだから、此処で野暮い事を言うのは辞めとけ」

「だね」


そう言った後、再び沈黙が訪れる。


あれ?

なんか上手く話が続かなかったな。


けど津田が、なにか言いたそうにしてる様子なので、再び、俺が口火を切る事にした。



「……っで、結局、広田と、何があったんだよ?」

「えっ?あっ、うん」

「別によぉ。言いたくねぇんなら、無理には聞かねぇが。もし、なんか蟠りがあるんなら、此処でスッキリしちまえよ」

「あっ、うん……聞いてくれる?」

「あぁ」

「でっ、でも、ただの愚痴だよ」

「あぁ、なんでも良いから、言いたい事があるんなら全部吐き出しちまえよ」

「うん……ありがとう倉津君」


ふむ、津田は、まだまだだな。

男に好印象を与えるなら、此処は敢えて『名前の方』で呼ぶべきなんだがな。


って事はだ、津田は、素直より擦れてないって事だな。


おぉ、意外と理解出来るもんだな。

(↑この時点で、一年の時、津田が崇秀の事を『崇秀君』と言って、女子全員から大顰蹙を買った事を知らない俺)



「っで、結局、広田と、何があったんだよ?」

「うん。実はね。此処だけの話なんだけど、広田君とは、もぉ1年程前に別れてるんだ」

「はい?なっ、なんですと?」


オイオイ、イキナリの衝撃発言だな。

コイツ等2人は、適当に上手く行ってるものだと思ってただけに、この発言には正直吃驚だ。


しかし、なんでそんな事になったんだ?

広田のアホは救いの無い朴念仁だが、そこまで悪い奴じゃない。

それに、平気で女の子を泣かす様な真似をする奴でもない。

なのに突然、別れたと言われても、現状じゃ、なにがあったかサッパリだな。


こりゃあ、もぉ少し探りを入れなきゃダメそうだな。



「ごめん、話が急過ぎるよね」

「いや、構わねぇんだが。なんで急に、そんな事になったんだ?」

「うん、なんて言うのかなぁ。隆弘君ね。私の事を、全然見てくれてないんだぁ」

「照れてたんじゃねぇのか?アイツ、女に免疫がねぇつぅか、強烈な朴念仁だから、自己の表現を上手く出来てないだけとも取れるんだが」


広田同様、俺もそうだし。


つぅかな、崇秀のアホンダラァでもない限り。

中途半端な大人気分の俺達男子中学生では、女子を上手く汲み取る方法なんてシラネェ訳だ。


それによぉ。

なんつぅか、そう言うセリフを吐くのって、照れるつぅか、兎に角、その手の表現が上手く出来ねぇもんなんだよな。


だから広田も、そんな類なんじゃねぇのか?



「うん。そうかも知れないね。……でもね。こう言っちゃあなんなんだけど。なんか、全部が全部、私より仕事を優先されちゃうのって、ちょっと違わないかな?なんかそれって、私の存在意義が無いって言うか……無視されてるって言うか、ちょっと耐えられない感じだったのよ」

「なんだよ。それって広田の馬鹿が、仕事と、恋愛の両立が上手く出来てないって事か?」

「うん、そうなの。あぁでもね。今、隆弘君が重要な時期だって言うのは、私にだって解ってるんだよ。でもさぁ、それでも少しぐらいは構ってくれる位の余裕は欲しいのよね……こう言う気持ちって、倉津君にわかるかな?」

「まぁなぁ。確かに、忙しくても、彼女との時間を作るぐらいの器量がねぇと、彼女としては先が思いやられるわな。そこは俺でも解るぞ」

「うん。だよね。幾ら仕事が忙しくても、完全に放ったらかしにはないよね」

「まぁなぁ」


しかしまぁ、俺が思ってた以上に不器用だな、アイツ。

そんな風に逢う時間が合わねぇなら、電話ぐらい出来るだろうし、それに、いざとなったら、お互いの家が地元にあるんだから、仕事の帰りにでも、津田の家までチャリ飛ばして行って、石でも窓に当てりゃあ、窓から顔ぐらい拝めるだろうに。


そう言う行為もなしに、ただ仕事に追われてる様じゃ、弁解の余地はねぇな。


アホだなアイツ。


津田みたいな良い奴は、早々あたらねぇのにな。



「なぁダッツ。因みにだがよぉ。それに対する、対応策みたいなものはなかったのか?」

「一応ね。隆弘君がカメラの仕事してるから、それなりに『私もカメラの知識が有った方が良いかな』って思って勉強はしたんだけどね。なんか、その話題を振っても、上の空で、あんまり聞いてもくれなかった」


あぁ……なんか光景が眼に浮かぶな。


まぁただあれだな。

これに関しては、広田の奴も本当は喜んでた筈なんだが、アイツは如何せん、リアクションが薄いからなぁ。

多分、その感動が、津田には伝わらなかったんだな。



「そうか……他にも、なんか有るのか?」

「うん。これも一応なんだけど。隆弘君の家に行って、家事とかも手伝ったんだけどね。なんか、これもイマイチな反応だった」


あぁ~~~ダメだ。

あの馬鹿、なんで、もうちょっと気を使ってやれねぇかな?

朴念仁や、不器用なレベルが、俺なんかが歯の立つレベルじゃねぇぞ。


どうしようもねぇな。



「……っで、我慢出来なくなって、別れたと」

「うん。だって、なんか、全然、一緒に居ても楽しくないんだもん」

「まぁ、そりゃあそうだわな。そうなって然りだわな」


だよな。


そうなるわな。



「……ねぇ、倉津君」

「なんだ?」

「倉津君の所は、なんで上手くいってるの?奈緒って芸能人だからさぁ。私達の所より、もっと難しい状況な訳だよね?だったら、なんか上手く付き合う為の秘訣とかあるの?」

「特には、なんもねぇな」

「ないんだ」

「あぁ、なんもねぇな。まぁウチは、なんつぅか、奈緒さんが、ちょっと変った人だからなぁ。あんまり、そう言うのには干渉しねぇんだよ」

「どうして?どうして?そんな風に思えるの?お互いが逢えない状況なんだよ?」


いや、それは、オマエが聞いてもわかんねぇと思うぞ。

奈緒さんと俺の関係って、ちょっと特殊な関係だから、一般の人間が聞いても解り辛ぇんだよな。



「まぁ、あれだな。奈緒さんは俺のものだから、逢えなくてもなんとも思わねぇし。彼女自身も、俺の事を自分の所有物だと思ってるからな。なんか、その辺が上手く噛み合ってるんじゃねぇか」

「それって、全面的に相手を信用してるんだ」

「あぁ、信用はしてるな」

「でも、倉津君、浮気とかは考えないの?」

「全然……まぁ仮にだが、俺が浮気したとしても、奈緒さんはなんとも思わねぇしな」

「はっ、はい?どうして?私だったら、浮気なんて、絶対に許せないんだけど」

「いや、だからな。あの人は、根本的に一般人とは考え方が違うんだよ」

「どう言う事?」


だからよぉ。

幾ら聞いても、奈緒さんの感覚だけは、普通の奴にはわかんねぇって……

まぁ、どうにも気に成ってるみたいだから、一応説明だけはしてやるがな。

多分、あの人の特殊な感覚だけは、ホント、あの人個人にしか解らねぇ感覚だと思うぞ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


なんとか、ダッツちゃんの本音を引き出した倉津君ですが。

今の所、それに対する対応策が見つからなかったので、自身の彼女である奈緒さんの話を出しては見たものの……


冷静に考えれば、奈緒さんの特殊な感覚は、常人には理解しがたいもの。


ダッツちゃんを、余計混乱の渦に巻き込む結果には成りましたが。

それでもダッツちゃんは、そんな奈緒さんに興味を引いたのか、奈緒さんの話を求めてきた様子ですね。


……っと成れば、此処からが倉津君の腕の見せ所。

今まで散々、みんなにからかわれてきた経験を生かして、上手く話す様に頑張りましょう(笑)


さて、そんな訳で次回は。

倉津君が、奈緒さんの話をして、ダッツちゃんの悩みを上手く解決出来るのか?にご注目下さい♪


そんな感じで、良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ

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