311 2人での昼食

 コンビニに、2人分の昼食を買いに行った俺だったんだが。

そこから帰ってきたら、何故かダッツが、タバコを吸いに来た不良の先輩に絡まれていたので、その様子を窺いながらも、ダッツが絡まれた時に対応出来るか確認していた。


けど、結局は、なにも対応出来そうになかったので、その不良の先輩達を撃退した上で、ダッツの舎弟にしてやったんだが、ダッツは何故か困惑気味。


なんでだ?(。´・ω・)?

まぁ良いっか、飯食いに行こうぜ!!


***


 ……てな訳でだ。

体育館裏から屋上に向かって行くつもりなんだが、此処には、ちょっとした難関があるんだよな。


この屋上に向かう階段ってのが、実は、校舎内に一本しかねぇんだけどな。

その上で、この階段の場所ってのが厄介で、下からの直通がねぇんだよ。

故にだ、この階段を使おうと思ったら、授業中の教室の前を、幾つか通過しなくてはいけない訳だ。


まぁ俺一人なら、別にコソコソ隠れて行ったりはしないんだが、今回に限っては津田が同行している。

コイツが俺と居て変な噂でも立ったら可哀想だし、先公にでもバレたら怒られる。


だから此処は、なんとかバレねぇ様に上手くしてやんねぇとイケネェ訳だな。


***


 コソコソと泥棒のコントの様に、2人で、授業中の静まり返った廊下を中腰で移動する。

此処で段ボール箱を被ったら、まさにソリッドスネーク状態だな。


***


 まぁ、等と言いながら、実際は、なんのイベントも起きず、屋上の扉までアッサリと行き着く。


所詮は無駄に緊張した所で、結果はこんなもんだな。



「おっし、着いたぞ」

「屋上?」

「そうだ。屋上だ。どうせ外で飯を喰うなら、景色が見渡せる所が良いだろ」

「あぁうん♪そうだね……あっ、でも、此処の鍵が無いんじゃ」

「心配すんなって、鍵なら、ほら。ちゃんと俺が持ってるからよ」

「なっ、なんで?なんで倉津君が屋上の鍵を持ってるのかな?とかとか」


なんでかってか?


そりゃあオメェさん、あれだよ、あれ。



「いやな。ちょっと前まで、崇秀と、よく此処で喫煙してたんだけどよぉ。イチイチ職員室まで借りに行くのも面倒だから、合鍵を作っただけだが」

「あぁ、いけないんだぁ」


だよな。

勝手に作った公共施設の合鍵は、まずいよな。


でも、そんなもん俺には関係ねぇし。

それに俺は、この学校の生徒だから=関係者。


だから問題ねぇし。



「まぁ、そう堅い事を言うなって、なんならダッツにも1つやるからさ」

「ホント?でも、なんで、そんなに幾つも合鍵を持ってるの?幾つ持ってるの?」

「あぁ、今持ってるのが一個だろ。んで、家にもスペアキーが一個あるな」

「なんでまた?」


そこは、俺の性格の問題だ。



「まぁ、なんつぅか。俺よぉ、結構、鍵とか小さい物とか、直ぐに失くしちまうんだよな。んで、失くしたら、失くしたで、崇秀に借りに行かなきゃなんねぇだろ。そしたらアイツのこった。絶対にゴチャゴチャと文句を言うだろ。だから、その為の保険って奴だな」

「ふ~ん、倉津君って、意外とダメダメさんなんだね」

「まぁよ。それに関しては反論しねぇ。つぅか、そんな訳だからよ。ダッツ、これ1個やるよ。賄賂代わりにな」

「あっ、うん。ありがとう」


そう言ってから俺が鍵を投げたら、ダッツは何気に、ソレを受け取ってしまう。


アホが……俺の罠に掛かったな。



「うっし!!それを受け取ったから、これでオマエも共犯な」

「えっ?嘘?」

「良いじゃんよ。偶には悪い事もしとかねぇと、息が詰まっちまうぞ」

「あっ、うん、そうかもね」


共犯にされたのに津田は、なんだか嬉しそうだ。


まぁ、事がどうあれ、そりゃあ良いこった。

女子が喜ぶ姿を見て、悪い気はしないしな。


でも、これって多分、可愛いとか、ブスとかって関係ねぇんだろうな。

女子が喜んだ顔ってのは、一種独特な、なんとも言えない可愛さがあるもんな。


いやはや、良い勉強だな。

(あぁ因みにだが、津田の事をブスだとは思ってねぇぞ)



「ほらほら。しょうもねぇ事に感動してねぇで、サッサと扉を開けてくれよ。腹が減ってかなわねぇよ」

「あっ、うん。じゃあ、今すぐに開けるね」


津田は少しドキドキした様子で、鍵を廻す。


そうなるとあれだな。

こんな程度の事でドキドキするって事は、コイツって、相当、真面目な人生を送って来たんだろうな。


緊張して、上手く廻せないでやんの。



『ガチャ』



「あっ、開いたよ。開いたよ、倉津君」

「いや。そりゃあ、鍵を廻しゃあ扉は開くわな」

「うんうん、だよねだよね」

「つぅかダッツ。早く外に行こうぜ。こんなジメジメした校舎なんか、おさらばしてよ」

「うん♪」


本当に楽しそうだ。


津田は嬉しそうなまま、外に飛び出していった。


外は快晴。

違った意味で、外食日和だ。



「うあぁ~~~、気持良いぃ~~~」

「だろ」


クルクルと回りながら、外の気持ち良さを体感していく。


そして俺の前でピタッと止まって、こんな事を言い始めた。



「ねぇ、倉津君」

「なんだよ?」

「……ありがとう」

「うん?なんだよ改まって?」

「だって、凄く嬉しかったんだもん。こうやって、人に気を使って貰えるのが、凄く嬉しかったって言うか……なんて言うか」

「あほ。此処にオマエを連れてきたのは、賄賂の代わりなんだよ。気なんか、なんも使ってねぇし」

「あぁそっか、そっか」

「つぅかよ。飯喰うぞ」

「うん♪」


なんかなぁ~。

こんな程度の事で、こうも楽しそうにされると、津田が、ホントに、なんか悩んでたのが良くわかんだよなぁ。

こんなショウモナイ事で、普通は、此処まで一喜一憂する事はねもんな。

こりゃあ、相当ストレスが溜まってたっての事だろう。


しかしまぁ広田の奴、マジで、津田に一体何をしたんだ?

深く干渉をするつもりはねぇけど、矢張り、それがなにかは気にはなるな。


いや、今は、そんな事よりも、津田のストレスを少しでも解消してやって、広田との関係を上手く行く方向に持って行ってやらないとな。

俺も散々、色んな人に世話になったんだから、目の前に自分に出来る事があるんなら、誰かに、なにかをしてやんねぇとイケネェよな。



「オイ、ダッツ。折角だから、あの上で飯喰おうぜ」

「えっ?でも、私、スカートだし。あそこに登ろうとしたら、パンツが見えちゃうんだけど……」

「あほか?心配しねぇでも、俺が先に上がってからオマエを引き上げてやるよ。そうすりゃあ、どうやってもパンツは見えねぇだろうに」

「あっ、そっか。なら、行きたいかな」


ホント、津田って単純な生き物だな。

奈緒さん以上に一喜一憂が激しい。

凹んだり、喜んだり……なんとも忙しいこった。


でもよぉ、それだけに、津田が今不幸なのは、ちょっと頂けねぇな。


兎に角、なんとかしてやらねぇとな。


俺は、そんな津田を見ながら、学校の一番高い所へ引き上げてやった。



「わぁぁぁ~~~、綺麗ぇ~~~♪」

「だろ。この時期なら、此処からの眺めが最高なんだよ。んで、そこで飯を喰えば、嫌な事も少しは忘れられるって寸法だ」

「それって、やっぱり、気を使ってくれてる?」

「まぁ、多少はな」

「そっかぁ。倉津君、ありがとう」


なんかなぁ。

ヤッパ、不味いぞ広田。

2人の関係に、なにが有ったかはシラネェけどよぉ。

ちょっとぐらい、自分の彼女に気を使ってやっても良いんじゃねぇか。


これって、不器用とか、朴念仁で済む問題じゃねぇぞ。


津田は、こんな良い奴なのによぉ。


俺は、そんな事を思いながら、その場にシートをひいた。

まぁ珍しくも『津田のケツが汚れんじゃねぇか』と思ったから買って来たもんなんだが……どういう反応をされるのかは未知数だ。



「えっ?なんでシートまであるの?」

「いや、まぁ、あれだ。『オマエの尻が汚れたら嫌かな』って思ったから、一応、買って来ただけなんだが」

「凄いね。そこまで気を使えちゃうもんなんだ」

「いやいや、そんな大層な話じゃねぇんだよ。こうすりゃあ、多少はピクニック気分にでもなるかと思ってよ。ちょっとしたサプライズみたいなもんだ」

「なんか、隆弘君とは、全然違うね。ホント、倉津君って優しいよね」

「オイオイ、ダッツ。自分の彼氏と、ただの知り合いの俺を比べて、どうすんだよ?それに俺にだって、下心とかが有るかもしんねぇぞ」

「下心……あるの?」


津田は初めて、此処で身を引いた。



「まぁ、あれだ。この場で無いと言えば、嘘になるだろうけど。俺は、奈緒さん以外の女にゃ興味はねぇから、正直言っちまえば、下心はねぇと思うんだがな。……これバッカリは俺にも正確にはわかんねぇよ」

「あっ……」

「つぅかよ。そろそろマジで飯喰いたいんだが、マジで飯を喰わねぇか?」

「あっ、うん、そうだね」


今度は凹んだか……


その証拠に津田は、ランチパックを喰ってるが、モソモソと喰ってて、全然、美味そうに喰ってる様には見えない。


ったくもぉ。



「おい、津田!!」

「えっ?なっ、なになに?」

「しみったれた顔して飯喰ってんじゃねぇの。さっきまで何回もグゥグゥ腹鳴らしてたんだから、もっと美味そうに喰えよな」

「あっ、うん……あぁでも、そんなにお腹グゥグゥ鳴らしてないと思うけど」

「よく言うよな。あんなデッカイ音を鳴らしておいてよ」

「えぇ~~~、だって、あれは、その……自然と、お腹が鳴っちゃたんだから、しょうがないじゃない」

「でも、スッゲェでかい音だったぞ」

「むぅぅ~~~、意地悪!!」


怒った。


まぁ、怒ったとは言っても、凹んでるよりはマッシだろ。


この後、津田は黙々と沢山の飯を食べ。

気付けば、俺が買ってきた物は、全て無くなっていた。


恐るべし、ヤケ食い。

そして喰い終わると、ダッツはソッポを向いた。


まぁけど、この程度、奈緒さんに比べれば可愛いもんだ。

俺は、あの人に、散々こんな目に遭わされて慣れているから、こんな事じゃ動じない。


正に、俺の精神は『動かざる事山の如し』だ。


だから、そんな津田を見て、少し安心した俺は、ポケットから『セッタ』を取り出し、火を着けた。

そして寝転がって、紫煙を空に向って吐き出した。



『プファ~~~~』


こうすりゃあ、少々怒ってい様とも、真面目なダッツの方から、なんか話し掛けて来るだろしな。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


なんか、少々喧嘩をしもってでも、それ也には楽しく昼食を終えれたようですね。

なら、取り敢えずの所は、倉津君にしては上出来でしょう。


さて、そう成ると問題は【ダッツちゃんと、広田君の間になにがあったか?】問題。


一体、何が、二人の仲を不仲にさせてしまっているのか?

そして、その原因となった経緯とは如何なるものなのか?


そこら辺を、次回は書いて行きたいと思いますです。


なので、そこが少しでも気になった方が居られましたら、是非、また遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ


待ってまぁ~~~す♪

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