308 ダッツちゃんからの賄賂の要求

 脳内愚痴を散々放った後、昼食を【学校外】で摂りに行こうとする俺。

そこに、別クラスの知り合い【津田里香】ちゃんが声をかけて来たんだが。

何故か、なにやら話している内に、俺の彼女である奈緒さんの話に移行してしまう。


(;´д`)トホホ、なんでそうなった!!


***


「まぁ、まぁあれだ、俗に言う普通の人だ」

「ふ~ん。『人』って言うって事は、倉津君の彼女さんって年上なんだ」

「ぐっ。まっ、まぁな」

「写真とかは?」

「いやいや、ダッツよ。なんで、そんなに俺の彼女に興味を持ってんだ?」

「えぇ、だってさぁ。『倉津君って格好良いのに、彼女作らないね』って、みんなで噂してるんだよ。そりゃあ女子なら、誰だって興味が有るよ」

「はぁ?なんじゃそりゃあ?」


コイツは、一体なんの話をしてるんだろうか?


いや、寧ろ、誰の話をしてるんだ?



「なんで『はぁ?』なの?」

「いや、だってよ。そんな話は聞いた事もねぇぞ。つぅか、それ以前によぉ、みんな俺にビビッちまってるから、俺に話し掛けて来る奴なんて、この学校には殆ど居ねぇしよ」

「ビビッてるかぁ。……それ、多分、男子だけだよ。女子は、倉津君と話したがってる子も多いもん」

「んな、馬鹿な」

「いやいや、本当だって」

「じゃあ、なんで話しかけねぇんだよ?」

「うん?カッコイイから、話し掛け難いんだって」


これまた、おかしな事を言う奴だな。

カッコイイから話し掛け難いんだったら、崇秀は、どうなるんだよ?

口惜しいがアイツは、見た目が良くて格好良いし、誰に対しても気も利く。

その上、頭も良いし、財力もあれば、運動部の連中にひけを取らない処かブチ抜く位に運動神経も抜群。

序に言えば、ギターもプロ以上の腕前で、髪のカットなんかも出来ちまう万能の化物。


普通なら、アイツの方が話し掛け難くないか?



「いやいや、ダッツよ。だったら、俺なんかより、馬鹿秀の方が話し掛け難くないか?」

「あぁ……崇秀くんは、ちょっと特殊なのよ」

「特殊とな?」

「うん。あの人って、基本的に、自分から話し掛けてくるでしょ。だから、なんて言うのか、向こうから、女子が普通に話し易い雰囲気を作ってくれるんだよね。だから、あんまり気構え無くて済むのよ」

「あぁ、まぁ、確かにアイツはそう言う奴だな。……しかしだな」

「しかしも、案山子もないの。それが現実なんだから」

「まぁ……なぁ」


いやはや、しかしまぁなんだな。

俺って、別に女子から嫌われてた訳じゃないんだな。


これは意外だった上に、知らんかったわ。



「ふふ~ん。そんな事より、倉津君の彼女さんの写真見せて」

「あぁ、別に構わんが……多分、信用しねぇぞ」

「『信用しない』って、どういう事?」

「まぁ、論より証拠。見りゃわかるよ」

「ふ~~~ん」


俺は、生徒手帳を、そのままダッツに手渡した。



「写真って、どこに入ってるの?」

「あぁ、悪ぃ。手帳の1枚捲った所に入ってる」

「あっ、うん、そうなんだぁ……ぶっ!!」


そりゃあ吹くわな。


今、世間で一番話題に成ってる人の写真なんだから、当然だよな。



「すごぉぉ~い、倉津君って、奈緒の彼氏なんだ!!」


うん?なんだなんだ?

やけにダッツの奴、アッサリと信用しやがったな。


なんでだ?


普通だったら、妄想だとか、哀れな精神病患者だとか思うのが相場だと思ってたんだが……津田は、そんな思考にすらならない単純な生き物なのか?



「信用するのかよ?」

「そりゃね。こんな写真を見せられたら、誰だって信用するよ」

「『こんな写真』?って、いや、ちょっと待て、なんだそりゃ?」


おかしいなぁ?

なんで、そんな変な事を言うんだ?

そこに入ってる写真と言えば『蓮高の制服姿で笑顔の奈緒さんの写真』が入ってるだけの筈なんだが……


『!!』


って!!オイオイ、まさかあの人……



「ダッツ!!悪いが、直ぐに、それ返してくれ」

「あっ、うん」

「ぶぅぅぅぅうぅぅううぅぅ~~~!!あの人だけは……」


あの人には、芸能人としての自覚ってモノが、本当に無いのか!!

自分の立場ってもんを、少しは理解したらどうなんだよ!!


なに勝手に『2人のチュ~写真』に入れ替えてんだ、あの人は!!


ったくもぉ……メンタマ飛び出したわ!!( Д)゜゜



「でもでも、凄いね、倉津君。そんな写真を堂々と生徒手帳に入れるなんてさぁ」

「いやいやいやいや、ちょっと待とうな、ダッツ。これには、海よりも深い訳が有ってだな」

「ふふ~ん、なになに?それって公表するなって事だよね」

「あっ、あぁ、まっ、まぁ、そういうこったな」

「じゃあ、秘密にするから、せめてなにか賄賂が欲しいな」

「賄賂とな!!」


コイツ……ヤクザの組長の息子である俺を脅すとは良い度胸じゃねぇか。


そんな事してタダで済むと思うなよ……


……っで、なにを所望だ?

一応、その賄賂の条件だけなら聞いてやるから、言ってみろ。

(↑雑魚な俺……いや、フェミニストと言え)



「そぅそぅ、賄賂。言葉が汚かったら、口止め料でも良いよ」

「まぁどっちでも良いんだけどよぉ、……っで、なにが欲しいんだよ?」

「あっ、あのね。さっきの話の続きになっちゃうんだけど。一回ね、学校の外で、ご飯が食べてみたいなぁ……とかとか」

「はぁ?なんだよ、それ?俺を脅した割りに、豪くショボイ要求をしてきたもんだな」

「あっ、うん。それとね。実は、もう1つお願いが有るんだ」

「まぁ、別に幾つでも良いけどよぉ。オマエ、授業をサボっても大丈夫か?俺が此処に帰って来るのって、多分、5時限目が終わったぐらいだぞ」

「えっ?えっ?そんなに時間掛かっちゃうの?」

「まぁ大凡な。俺の昼食は優雅だからな」

「優雅なんだ」


実際は、優雅なんてものには程遠いがな。

ただ単に何処かでランチを喰って、コーヒ啜って、漫画読みながら煙草を吹かす。


その程度のショボイ優雅さだ。



「っで、どうすんだ?」

「あぁっと……じゃあ行く」


意を決した様に津田は、俺を必死に見ながら、そう言ってきた。


いや、ただ飯を食いに行くだけの話だから、そんな覚悟のいる話でもないんだがな……



「そっか。んじゃま、取り敢えずは行くとするか」

「うっ、うん!!」


そう言って、いつも通り呑気な俺と、やや緊張気味の津田は、体育館裏の一番低い壁に向って歩いていった。


多分だが、あそこなら、あまり身長の高くない津田でも飛び越えられるだろう。


学校をエスケープするゾーンとしては、最良の場所だからな。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


なにやら、ダッツちゃんに脅されて。

学校外での昼食を2人で摂る事に成ったみたいですね。


まぁ、お互いが彼氏持ちの彼女持ちなので、特に問題は起きないとは思うのですが……倉津君ですからねぇ。

なんか不安な事に成らなければ良いですけど(笑)


さてさて、そんな風に、校舎裏からの脱出を図ろうとする2人なのですが。

この後、矢張りおかしな展開がやってきますので、次回は、そこをお楽しみにして下さい♪


そしてまた良かったら、遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ

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