346 付き合うのは良いが、どうするかは自分達で決めろ
奈緒さんがギターの調整を終えて教室に戻って来たので、みんなで練習。
それを聞いて俺は、序に、文化祭の出し物の1つである歌謡コンクールに向かうイケメンコンビの本気度を確かめようと考える。
いやまぁ、そうは言っても、カジグチが出来が、そんなに悪い訳なんじゃねぇんだぞ。
ただなぁ……( ˘•ω•˘ )
***
「良いぜ。奈緒、曲は何が良い?」
「う~ん、そうですね。じゃあ『Dash eater』と『Serious stress』の即興アレンジバージョンで、お願いします」
「OKだ。じゃあ、それで行ってみっか」
また奈緒さんらしい難しい事を言ってきたな。
まぁ、それはそれで面白いけどな。
確かに以前の俺だったら、こんなムチャブリに対応する事なんか、全くもって不可能だっただろう。
なにも出来無いまま、誰かの音に必死で合わせて、曲を終わらせるのが良いとこオチだったと思う。
だが今は、少々勝手が違う。
バンドの脱退後、俺は2ヶ月に渡って、色々なバンドを渡り歩いて来て、様々な音の作り方を学ばして貰った。
だから、この程度の課題なら、実のところ、そんなに難しい課題じゃない。
まぁ、その辺をジックリと味わってくれや御二人さん。
俺は、奈緒さんにアレンジポイントを簡潔に告げると、音を紡ぎ始めた。
♪♪--♪♪----♪♪♪♪-----♪♪♪♪-----♪♪--♪♪♪♪--♪♪♪♪-----……
『Dash eater』スローバラード・バージョン。
歌詞の変更はしないが、スピ-ドパートを一切排除し、全体的に哀しい曲に奏でる。
主人公の腹の減り具合や、食い逃げに至るまでの心境を、徹底的に表現する。
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪--♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪-----♪♪♪♪♪♪♪♪----……
『Serious stress』ハイスピード・バージョン。
コチラは以前に大失敗をしたハイスピードバージョンを、更に一段階ギアを上げた演奏。
兎に角、スピードのみを重視して、最後まで突っ走る弾き方だ。
曲調を簡単に変化させただけなんだが、聞いてるだけの2人にだったら十分な程に俺の実力は伝わる筈だ。
なので後は、奈緒さんとのセッションを楽しむだけ。
久しぶりだから、超楽しいのぉ。
……にしても奈緒さんは、やっぱスゲェな。
ほんの2~3言、口伝えでポイントを言っただけなのにも関わらず、完全にポイントポイントを抑えて演奏すんだもんな。
ヤッパ、師匠越えは、簡単にはさせてくれねぇな。
いやはや、いやはや。
まいった、まいった。
***
……数分後。
2曲を引き終えた俺は、ゆっくりとベースから手を離した。
一応は、カジやグチが納得出来る程度の演奏は出来たと思う。
そんじゃまぁ、後は奈緒さんの満足度を調べた後に、カジグチの感想でも聞いてみるかな。
「まぁ、大体こんな感じだな」
「うん。流石ですね先輩。かなり良い感じでしたよ」
「オイオイ、あんま生意気言うなよな」
「テヘッ、ごめんなさい」
よし、奈緒さんも、ある程度は満足出来たみたいだな。
その証拠に、勢い任せになって、いつもの奈緒さんの口調にはならなかったしな。
完璧だ、いやはや完璧だ。
……っと成ると、後はカジグチの感想だな。
「さて、お2人さん。これを聞いて、どう判断する?ヤル気が出たのか?それとも、打ちひしがれて諦めるのか?オマエ等はドッチだ?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
ヤッパ、此処は沈黙しちまったか。
まぁ、その気持ちは解らなくもないわな。
自分達が思っていた以上に、奈緒さんの演奏のレベルが高かったのかして、落ち込む気持ちは解らなくもないからな。
今の現状にあって、自分達がどうすべきかを考えてる所でもあるだろうしな。
『続行するべき』か?
『此処で手を引くべきか?』ってな感じで。
それに俺だって、伊達や酔狂でバンド巡りをやってた訳じゃねぇ。
それ相応の実力ぐらいは付いてる筈だしな。
なので、この2人が、こうなってもおかしくは無いしな。
「ふぅ。まぁ、解答は急がねぇ。今すぐに答える必要はねぇからよ。明日までにシッカリ考えておいてくれ。奈緒、帰るぞ」
「はい……あっ、あの~~倉津先輩、このM-80持って帰って良いですか?」
「良いんじゃねぇか、別に。あんな所に置いて置いた物なんか、どうせ誰も憶えてねぇだろ」
「あっ、はい。じゃあ、ちょっとお借りしちゃいますね」
「おっ、そうしろ、そうしろ……んじゃあな、お2人さん」
俺は、音楽室の鍵を2人の前に置くと、奈緒さんを連れて音楽室を後にした。
さてさて、明日、どうなる事かな?
カジと、グチが無駄にヤル気を出してくれりゃあ良いんだけどな。
折角の縁なんだからよ。
頼んだぜ。
おっ!!なんだなんだ?
なんか今回の俺、意外と格好良く終わってね?
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【後書き】
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
これにて第一章・第四話『悪戯な妖精は忘れた頃にやって来る』はお仕舞に成ります。
この四話では、文化祭の出し物であるメイド喫茶の準備をしながらも。
カジグチ君の依頼を受けて『歌謡コンクールの優勝を目指す』事に成ったり。
そこに奈緒さんが変装をして現れて、一悶着あったりはしたのですが。
意外と、全体的に上手く事が運んでいる様ですね。
倉津君自身も、かなり満足した結果だったみたいですしね。
……ただ。
奈緒さんが出て来て、その程度の事で上手く行く筈もなく。
次回、また彼女は『倉津君の事を想って』色々な動きを見せて来ます。
それが何なのかは、次回からの講釈。
また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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