345 コイツ等……本気で優勝狙ってるのか?

 探してた奈緒さんが好む様なギターを携えて、準備室から戻ってきたまでは良かったが、まだ調整していないギターだったので、奈緒さんは再び準備室へ(笑)


その間、イケメンコンビ+俺の練習は続くんだが……


やっぱスカスカやな(;´д`)トホホ


***


 ……15分後、奈緒さんが準備室からヒョコッと顔を出した。

しかも、満面の笑みを携えている。


俺は瞬時に、そんな奈緒さんに危険性を感じたが。

他の2人は必死に演奏してるので、奈緒さんが準備室から出た来た事にすら気づいていない。


……っで、俺は彼女に向って視線を投げると、彼女はギターを指差しながら、口パクで、こう言ってきた。



「(これ……当たりだったよ♪)」


俺には、なにが『当たり』なのか良くわからなかったが。

兎に角、奈緒さんが嬉しそうにしてる事だし、これに関しては特になにも言う事は無い。


かと言って、なにも言わないのもなんだし、取り敢えず、口パクで……



「(良かったッスね)」


って言うと、彼女は、本当に嬉しそうに『コクッ』っと頷いた。


奈緒さんが笑顔なんで、俺満足。


***


 そうこうしてる間に、曲が終わって、奈緒さんが中に入って来た。



「すみません。お待たせしちゃって」

「あぁ、奈緒ちゃん。どうだった?上手くチューニング出来た?」

「はい。お陰さまで、良い感じに仕上がりましたよ」


なんて言いながら、ガッツポーズをとる。

モッタ臭い格好なのに、矢張り奈緒さんは、自分を可愛く表現する方法を良く心得ている。

……ってかな、芸能界でなにがあったかは知らねぇが、なんかその辺が、妙にパワーアップしてんだよな。


俺の独占欲がモリモリと音を立てて湧いてくる。


しかしまぁ、ホントこの人は、ナンデモカンデモ吸収する人だな。

体がスポンジで出来てんじゃないか?


後で、ゆっくり調べよ。

(↑俺エロス!!でも『スポンジ』って言ったら、また怒られそうなんで辞めとこ(序章38話参照))



「じゃ、じゃあ奈緒ちゃん、音出し、お願いしても良いかな?」

「はい、喜んで」


ってな訳でだ。

奈緒さん音が入る事によって、初めてフルバージョンが成立する。


何故なら、この曲の最初ってギターソロがあるからな。


チューニングを終えたM-80が、どんな音を奏でるのか、ちょっと楽しみだな。

奈緒さんだけに期待が高まる。


けど、その反面、不安が無くもないがな。



「そんじゃあ、一発行ってみますか」


おぉ~おぉ~おぉ~おぉ~、梶原の奴。

そんな風に勢い良く仕切ってるけど、その勢いは何所まで続くかな?

奈緒さんの音は、俺なんかとは比較にならない程、良い音を出すから、ビックリして腰抜かすなよ。


そして、奈緒さんのギターソロが始まる。


♪----♪♪----♪♪----♪----……


げっ!!なんちゅう~良い音が出るんだ!!

オンボロギターと侮っていたが、とんでもない良い音を出しやがるな。


なにが良いって、まずにして音の伸びが尋常じゃない。

フロントピックアップから出される音は、兎に角、伸びがあり、凄くしっとりした音を出してきやがる。


確かに、この音は、奈緒さんの言う通り、若いギターでは絶対に出ない音だ。


なんとも言えない良い音だな。


あっ、あれ、あれ?

なんか知らねぇけど、あのギター……やけに格好良く見えてきやがったよ。


なんの幻覚だよ、これ?



「あっ、あれ?あっ、あの、先輩方、Aメロ入ってますよ。どうしたんですか?」

「あっ、あぁ、ごめん、ごめん。奈緒ちゃんの弾くギターの音を聞き入っちゃったよ」

「くすっ。お上手なんですね。でも私の音なんて、仲居間さんに比べれば、雑音に等しいですよ」

「いやいや、そんな事ないって、仲居間さんに匹敵する上手さだよ」

「またまたぁ」

「カジの言う事は、本当だ。俺も聞き入って、完全に自分のすべき事を忘れてた」


フッ……わかってねぇな。

正直言って俺も、奈緒さんのギターを上手いとは思ったけど、崇秀に匹敵する程の音とは思わなかった。


奈緒さんには大変失礼だとは思うが、アイツの音は、こんなものじゃない。

もっと化物染みた音で、聞く者を瞬く間に魅了して、その世界に引き込み、没頭させる。


正に、地獄に引きずり込む魔王の音だ。


まぁつっても、この感覚は、直接聞いた者にしか、わかんねぇ感覚だけどな。

だから奈緒さんも、それを重々承知した上で『雑音』なんて言葉を使ったんだろう。


故にあれは、謙虚さを表現する為に言った言葉では無い筈だ。

逆に彼女からすれば、M-80を使っても、崇秀には勝てないと痛感したとも思われるしな。



「おいおい、御二方、奈緒をナンパする気か?そんなに褒めてどうすんだよ。それぐらいの音、奈緒にとっちゃあ当たり前の音だぞ」

「マジかよ、クラっさん?」

「あぁ、奈緒を、此処に呼んだのは他でもねぇ。このレベルの人間が、この神奈川には山ほど居るって事を思い知らさせる為だ。オマエ等、ちょっとは目が覚めたか?ちょっとやそっとで優勝なんて見えてこねぇぞ。……これが現実ってもんだ」


いやはや、こう考えたら、奈緒さんの登場は本当に有り難いな。

またまた奈緒さんには悪いけど、この馬鹿共の甘さを抜き去るには、凄い効果的だったからな。


ホント奈緒さんは、いつも良い所で、俺を助けてくれるな。



「しかしだな倉津。彼女が手伝ってくれるなら、優勝も見えてくるんじゃないのか?」

「バカタレ。そう言う部分を人任せにしてどうすんだよ。バンドつぅのはな、全員の音が重なり合ってこそ成立するもんなんだぞ。一人だけ上手くても、意味なんてねぇんだよ」

「そっ、そうか……」

「それに奈緒は、他のメンバーと登録済みだ。手伝えるのは練習のみだ」

「違うメンバーと登録だって……って事は、事実上は、敵同士って事か?」

「そういうこった」


嘘です。

プロで絶賛活躍中の奈緒さんが、今更、こんなちんけなコンテストに出る訳が無い。


なのでまぁ、俗に言う『脅し』って奴でさぁ。

……ってか、これもまた良い機会だから、コイツ等の本気度でも序に調べて置くか。



「マジで?それって、絶望的じゃん」

「はぁ?なんも絶望的な事なんて無いぞ。第一俺も、まだ今日は、一回も真面目に弾いてねぇからな」

「えっ?どういう事だよ、クラっさん?」

「オマエ等のレベルに合わせてたから、真剣には弾いちゃいねぇって言ったんだよ」

「なんで、また、そんな事したんだよ?」

「舐めてるからだよ。どうせいい加減な気持ちでやってると判断したから、適当に弾いてたんだよ。なんなら本気で弾いてやろうか?」

「オイ、幾らなんでも、あんま人なめんなよ、クラっさん!!俺だってマジでやってんだぞ!!」


おぉ~~、カジの奴、こんな単純な挑発に乗ってきやがった。

このカジのノリの良さは、山中クラスのノリの良さだな。


……単純な奴め(笑)



「あんなぁ、真面目にやっただけで優勝出来んなら、誰でも優勝出来るつぅの。良いか、今から奈緒と2人で曲を何曲か弾いてやる。それでも優勝を狙う気が有るなら、俺も、オマエ等に本気で付き合ってやるよ」

「ぬかしやがったな!!なら、そのクラっさんの本気とやらを見せてみろよ!!」


うむ……じゃあ、シッカリ体験してくれ。


オマエ等が思ってる以上に、音楽の道は厳しいんだぞ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


湘南ライブでクビに成ってから数カ月。

倉津君なりに、バンドのHELPにも沢山行っていたので、それ相応に自信があるんでしょうね。


此処に来て、カジ&グチ君の本気度を調べに来たみたいです。


その結果がどうなるのかは、次回の講釈。

変な所で、ドジを踏まなきゃ良いのですが……


その辺が気になりましたら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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