344 なんか共感してるんだが……なにこれ?

 準備室で発見したM-80を持って カジグチの居る教室に戻って行った俺と奈緒さん。


以上!!(`・ω・´)ゞ


***


 さてさて、話の途中なんだが、此処で、ちょっと注釈させて貰おう。


今まで何事も無かった様に、奈緒さんと会話をしていた訳だが……

『何故、海外のレーベルと契約した彼女が、日本に居るのか?』

……っと、疑問に思った方も多いと思う。

摩訶不思議な事なんだが、これには、これで、れっきとした理由がある。


では『何故そうなったか?』と言うとだな。


あの例の、全員で出場した崇秀主催の湘南ライブ。

あれが、全ての謎を解き明かす『鍵』になる訳だ。

此処には、仲居間崇秀と言う男が立てた、恐ろしく綿密な計画が隠されていたのは言うまでもない。


あのライブ……実は、以前から、こうなる事を予測していた崇秀が用意していたライブで、本質は、残り物を売り出す為のライブじゃなかったんだ。

早い話、あのアホンダラァは、お節介な事に、奈緒さんを日本で有名にして、日本に残らせる為だけに、あのライブを企画してやがったんだよ。


まぁこれでは、少し端折り過ぎていて、意味が解り難いと思うので要約して言うとだな。


①まず崇秀は、奈緒さんの歌唱力をメディアを使って、全国に彼女を露出する。

②それと同時進行で、ライブ中に『ZaP』の前田及び『アルファー』高見崎を使って、両名が奈緒さんのプロデュースする事を証明する。

③それによって、丸っきり無名の海外で売り出すよりも、日本で売り出した方が利益が上がると、奈緒さんの両親が勝手に契約した相手側のレーベルに思い込ませた訳だ。


そこで崇秀は、相手方のレーベルにある交渉話を持ちかける。


④奈緒さんが日本在住期間中の売り上げる35%を、契約会社Like-Punksに献上する事により、日本の最大手企業であるスリーストライプに委託して欲しいっと。

⑤当然、なにもしなくても利益の上がる話だから、交渉はスムーズに成立。

⑥それと共に、スリーストライプは奈緒さんを得。Like-Punksは、日本進出の足掛かりを掴む。


っとまぁ、兎に角だ。

金に汚い大人同士の嫌な取引を、奴が巧みに操って、奈緒さんを日本に在住させる事に成功したって訳だな。


しかしまぁ、今思い出しただけでも、アイツは恐ろしい男だ。

大人の欲望を手玉に取るなんぞ、ほんとアイツは大したタマだよ。


三国志の姜維も、裸足で逃げ出す肝の持ち主だ。



さて、奈緒さんの説明はこれぐらいにして、話を戻そう。


***


「いやいや、悪ぃ悪ぃ。長々と待たせたな。準備室で中々良い奴が見つからねぇでよ。豪く時間が掛かっちまった」

「いや、別に、それは構わねぇんだけど。クラっさん、そんなに迷うほど、準備室にはギターがあんのか?」

「まぁ、軽く15~6本ぐらいは有るんじゃねぇか」

「そんなにあんのかよ!!仲居間さん、一体、此処で何やってたんだ?」

「あぁ、俺も詳しい話は知らねぇけど。聞いた話じゃ、なんでも、此処に初心者を集めて、ギター講座とかしてたらしいぞ」

「ギター講座って……相変わらず、仲居間さんのする事は、訳わかんねぇな」

「まぁな」


その通りだ!!

アイツの頭の狂った思考なんぞは、誰にも読めない。

正に奴こそが、訳がわからん生き物の代名詞だと言っても過言じゃないぞ。

寧ろ、UMAと言っても、世間じゃ通るんじゃねぇか?


ってか、既に世界で認定済みかもしれない。



「ところで倉津。田中さんのギターは見つかったのか?」

「あぁ、お蔭さんでな」

「どんな奴だ?見せてくれ」

「あぁ……奈緒、見せてやってくれ」

「はい」


奈緒さんは、山口に、あの汚いギターを渡した。


すると、手に取った山口は驚愕の表情を見せる。

……って事は、やっぱり、凄いもんなんだな。


けど、なんで山口の奴が、そんなギターの知識があるんだ?



「こっ、これ……GUILDのM-80じゃないか!!」

「あっ、ご存知なんですか?」

「あぁ、楽器に関しては、少々知識が有るもんでな」

「そうなんですか、凄いですね」


おやおや、山口さん、意外な特技をお持ちなんでゲスな。

バンドマンであるアッシですら知らない情報をお持ちだなんて、大層な物知りでゲスなぁ。


けど、山口……オマエ、奈緒さんに近付き過ぎ。


あんま調子に乗ってると……殴るぞイケメン。



「しかしまた、豪い物を見付けて来たものだな」

「ですよね。私も、まさか自分が手に出来る日が来るとは思ってませんでしたよ」

「確かにな。GUILDのS・F(スター・ファイヤー)シリーズなら、偶に見かけるが。このM-80は、兎に角、タマ数が少ない型番だからな。ビンテージ物と言って良いだろうな」

「ですよね。見付けた時、腰が抜けちゃいそうになりましたもん」

「だな、これは……」

「ですよね。中々……」

「……だろ」

「……ですよね」


オイ、ちょっと待て……いつまで続くんじゃ、この話は?

それに山口の奴、奈緒さんに対して、ちょっと馴れ馴れし過ぎるんじゃないか?


こればかりは流石に、色んな意味でイラっとしてきたぞ。



「なぁ、クラっさん。あの話って、いつまで続くんだよ?練習するんじゃなかったっけ?」


あぁ、俺の横に同意見の奴がいた。


って言うかな。

俺よりも、梶原の方が確実にイライラしてる様だ。

まぁそりゃあ梶原にすりゃあ、山口の為に時間を割いて付き合ってやってるのに、その張本人が、女と楽しそうに喋ってりゃ気分良い訳ねぇわな。



「だよな。なんか、完全に放ったらかしだな俺等」

「あぁやってらんねぇ。やってらんねぇ。おいグチ!!オマエ、一番下手糞なんだからよ。くっちゃべってないで、ちょっとは練習しろよな。ヤル気ねぇなら帰るぞ」

「あっ、すっ、すまん。楽器の話が出来る子が、ズッと近くに居なかったもんでな。ついな」

「オイオイ、話すんのは良いけど。せめて練習終わってからにしろよな。クラっさんだって、この後、用事があんだぞ」

「すっ、すまん。本当にすまん。それに倉津にも迷惑を掛けたみたいだな」


山口の奴、反省してるか……じゃあまぁ、今回だけは勘弁してやるよ。


俺は無言でベースを構えて、練習再開の意思を表示する。

梶原も同様にマイクスタンドを持って、準備万端の様だ。


それを見た山口は、慌ててドラムの席に着いて準備を整える。


んで、そんな中、奈緒さんはと言うとだな……



「あっ、あの、先輩。私、まだギターの調整終わってないです」


なんて言っちゃう訳だ。


そして、その姿は、相も変らず可愛い。


しょうがないので俺は……



「あぁ、だったら、準備室で調整して来い。終わったら合流で良いから」

「あっ、はい。わかりました♪」


っと、言い残して準備室に向かって行く訳なんだが……当然、悪さをしていく。


それは、俺とすれ違う瞬間の話だ。



「(ふふっ、嫉妬しちゃったの?クラ、可愛いね)」


っと、俺以外には聞こえない様な小さな声で、そんな事を言って行く。


中々俺の心理を読んだ的確な言葉だ。

要するに、遠回しに『怒るな』って言いたいんだろうな。


別に、そこまで怒ってねぇんだけどな。


まぁこれは、奈緒さん也の配慮って奴だろう。


さて、そんな奈緒さんを見送った後、練習を再開するんだが、2人が急に上手くなったりする筈もなく。

3人による、素人丸出しで、スカスカの隙だらけの演奏が続いた。


ぐぬぬぬぬぬ……


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


山口君も、奈緒さん同様の蘊蓄マシーンだった様で。

蘊蓄マシーン同士が共感して、倉津君とカジ君は放ったらかしにされてしまいましたね(笑)


まぁけど、頼み事をして来た本人に、そんな真似されたら怒りますよね。


そんな中、準備室にギター日調整に行った奈緒さんが抜けたまま、3人は練習を続けているみたいですが。

次回は、その奈緒さんが準備室から復帰しますので、どうなるかお楽しみにして下さい♪


また、悪戯好きな奈緒さんは波乱を巻き起こすのか?


そこは次回の講釈。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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