会社事情と特別手当

 ごきげんよう、ドッペルゲンガーです。


 今日は朝から、自分の仕事でバタバタよ。昨日は少しずつ依頼をこなしていったものの、どっちかというとゆったりとしたかったから。


 で、その分、今日は仕事ハードモードな私よ。


 んもうーんもうー、やるっきゃないじゃない!?働かざる者食うべからずよ!?バシバシさばいていかないとね!?


 いやー…


 今月の収入は大丈夫かしら? フリーランスは自分のペースで仕事ができる分、収入がドキドキものなわけよ。


 まぁ、大丈夫なんだけども。


 なんたってね、


 私、失敗しないので。


 …ふっ


 申し訳ないわね…よく見る医療系ドラマのセリフみたくなっちゃっただけなのよ。


 あ、それは置いといて(置いとくんかい)


 風邪をひいて、しっかり休んだ本体ちゃんと言うと、まだ少し鼻声だけど元気に仕事に行ったわよ。


 おかゆ飽きたよぉ~お肉食べたいよぉ~とか、朝からほざいていたけれども。


 まあ、元気になった証拠ね。


 しかし、しかしだ。


 職場に行った時、どんな反応されるのかしらねぇ。それだけ少し心配だけど、まあ、なるようになるわよね。


 だってね、私がムカつきすぎて仕掛けたことだからねぇ…


 いやでも!(バァン)


 仕方ない! あれは私、間違ってないわ! 勤勉に仕事して! 結果残した人は! ちゃんと評価されるべきなのよ!


 あの子は気付きすらしなかったようだけども!好転すればいいけどねぇ…


 で、今更気づいたんだけどもね。


 私って、あの子と入れ替わる予定のドッペルゲンガーじゃない?


 なんでこんなに、あの子の仕事関係の心配してるのかしらね? 別に、私が気にしても仕方ない事なんだけども。


 まあ、入れ替わったら、私の勤務先になるわけだから、あながち関係なくは無いんだけど…


 なんだかね、放っておけないのよね。


 本体とかドッペルゲンガーとか関係なく、一個人としてね。


 あーあ、なんか感傷的になっちゃうわ。自分は自分の仕事しましょっと…


 コーヒーを淹れてきて、啜りながらPCを立ち上げる。メールや依頼フォームに来る案件を一つ一つ確認していって、期限が早いものをソートかけていってと…


 よーし、やりますか。


 ではみなさま、少しの間、黙りますね←


 …


 …


 …


 …


 …


 あーーー肩こるわ!

 背伸び背伸びー!ぐーーーーっとね!


 一通りの整理が終わって窓の外を見ると、もう薄暗くなって来ているわ。


 あらもう、こんな時間なのねぇ。あの子が帰ってくる頃じゃないの。


 ずっとPCの前にいると体が固まっちゃうわ。お夕飯でも作って、気分転換したいところね。


 最近は寒くなってきたし、温かいものが食べたいわ。あの子もまだまだ鼻声だし、栄養とれるものでも。


 んー… お鍋かな! あの子もお肉が食べたいとか言ってたし、余ってるお肉や野菜をがっつり入れて、おネギたっぷりいれてね。


 いいわね。それでいこう! ふんふんふん~♪


 そんなこんなで野菜を刻みまくってると、インターホンが鳴る。


 あ、本体ちゃんが帰ってきたみたいね。


 玄関のドアを開けてやると、まだ鼻水ズルズルの本体ちゃんが笑顔で帰ってきたわ。


『ただいまぁ~~!』


「おかえり、体調は大丈夫そう?」


『大丈夫ぅ~☆ 鼻かみまくってぇ、ティッシュが一箱無くなったけどぉ~☆』


「そうなるわよね。明日1箱持っていきなさいな」


 本体ちゃんがバッグを放り投げてソファに座ってひと息いれている内に、お肉と刻みまくったお野菜をぶち込んで、鍋で一気に煮てやる。


 すぐに煮上がるそれをリビングに持っていき、テーブルに置いておいた鍋敷きの上に置くと、本体ちゃんが目を輝かせた。


 食べたいのね、はいはい、食べましょうね。


 取り皿だけ持ってきて、好きなものを取り分けてハフハフと。美味しいわね~。


 なんて思ってると、本体ちゃんがハフハフしながら今日の出来事を話し出すわ。


 うん、気になってた所だし、しっかり聞いておかなきゃね。


『ドッペルさぁん~、本当にぃ~なにしてきたのぉ~?』


「な、なにも? し、してないけど? なにかあったの?」


『今朝ねぇ~、会社に着いたらねぇ~、営業さんが近づいてきたのねぇ~』


「営業野郎? 図太いわね、あいつ」


『でもねぇ~、なんかぁ~、いつもと様子が違くてぇ~』


「へぇ?」


『今までの経緯を教えて下さいってぇ~、頭下げてぇ~、敬語使ってきてぇ~』


 思わず、食べていた白菜を吹き出しちゃったわ! 笑えるじゃないのよ!


「ちょ、どゆことよ 笑」


『いつも通りですよぉ?って言ったらぁ、それが解らないんだよ!ってぇ~、なんか逆ギレしてきてぇ~』


「逆ギレするとか 笑」


『あたしぃ~、なんの事かわかんないしぃ~? 困ってたら先輩がきてぇ、営業さん連れてったぁ~』


「態度を〆られたのかしらね 笑」


『なにがなんだかだよぉ~?』


 キョトンとしている本体ちゃんの横で、笑いを隠せなくなる私よ。


 一通り笑ってから、スープを飲み込んで落ち着くわ。本体ちゃんはまだまだ何かを話そうとしているわね。


『それからぁ~、上司さんが来てさぁ~?』


「ほう?」


『今までの分~、営業手当を出すからってぇ~? 追加補填って形でやるからねってぇ~』


「へぇ!」


『なんか話たくさん聞かれてぇ~? 色んな事話されすぎてぇ~頭に入ってこなかったんだけどぉ~? メインで管理してたぁ~1年くらいの分を~まとめて貰える事になってぇ~?』


「え! 良かったじゃないの!」


『今日はぁ~、書類にサインしたりぃ~、ハンコ押したりしてたぁ~』


「どのくらいなの?」


『営業手当としてぇ~? 2万円×1年分だってぇ~』


「ええ!? すごいわね!?」


『でぇ~、営業さんもぉ~、全然引き継いでないからぁ~? 今の仕事受け持ってる間はぁ~? 営業特別手当出してくれるってぇ~』


「あらま~… あんたの会社、太っ腹ねぇ…」


 一気に話して疲れたのか、少し冷めたであろう鍋の取り分を、本体ちゃんはバクバクと食べだしたわ。


 美味しそうに食べるね、この子は。


 私も負けじと食べて、風邪をひかないように体力を付けないとね。


 バタバタと食べて、すっかりと無くなった鍋を前に、2人で満たされたお腹をさすっちゃうわ。


 そんなこんなで幸せを噛み締めてると、本体ちゃんがまた話し出すわ。


『ドッペルさぁん~… もしかしてぇ~? ここまでなるって解っててぇ~? 色々してくれたんだぁ☆ あらりがとねぇ~~~☆』


「あ、いや、そこまでとは思ってなかったけど…まあでも、良い結果に落ち着いたようね」


『えへへへぇ~☆』


 ほくほくとした顔になる本体ちゃんに、私も少し言いたいことがあるわ。


「あんたは気付いてなかっただろうけどね、自分で頑張った事が、こうやって形になってさ、どう思った?」


『頑張った甲斐があったぁ~!ってぇ~、すごく嬉しくなったぁ~☆』


「でしょ? 早くそーゆーのに気づいて欲しかったわ。周りの人達もそう思ってたんだと思うわよ?」


『うん~ ちゃんと気付くようにがんばるぅ~!』


「まぁ、それがあんたの良い所でもあるけどね。でもね、自分を犠牲にする事は無いわ。しっかりと頑張った事、ちゃんと意識しなさい」


『はぁい~☆』


 んん、いい感じに落ち着いたようね、良かったわ!


 私も何となく充実感に溢れている。自分の仕事にもやる気が出るってものよ!


 って思ってたら、本体ちゃんがまた何か言い出すわ。


『そんでぇ~、ひとつだけわかんない事あってぇ~、教えて欲しいんだけどぉ~?』


「ん?なに?」


『営業さんにぃ~、「音声の件は勘弁してください」って言われただけどぉ~、なんの事ぉ~?』



 あ


 あ


 あ


 あー…


 えっと、説明しなきゃかなぁーーー?


 あは、あはは…


 ではみなさん、また今度ですわ(白目)

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