営業野郎のツラがおもろすぎるわ!

 ごきげんよう、ドッペルゲンガーですわ。


 前回に引き続き、風邪っぴき本体ちゃんの代わりに仕事に来ているドッペルゲンガーよ。


 すんごいムカついてたけど、少しスッキリしてるわ。


 なんでかって? 前回までを読ん…ゲフンゲフン


 まあ、前回でね、あの子が押し付けられてた仕事をちゃーんと代わりにアピールしてきたのよね、素知らぬふりで。


 やってやったわ!!!!

 ほほほほほほ!!!!


 あれから訂正箇所を直して、さっさと上司さんに承認印をもらって。 相変わらず顔を出さない営業野郎には何も伝えることなく、取引先に見積書を提出しに出たってわけ。


 結構遠いのかしらね~と思っていたら、2軒隣のビルの2階。歩いて3分のところだったわ。


 なるほど、近隣の会社とも仲良くやる系の会社なのね、本体ちゃんが勤めている所は。


 風邪っぴきのフリをしながら、わざとらしくヨタヨタと歩いて行く私。途中からアホらしくなってきて、普通に歩いていたけども←


 取引先に着いてインターホン押したら、人の良さそうな事務員さんが出てきてくれて、全てを知っているかのように、すぐ受け取ってくれた。


「いつもありがとねぇ! 社長ね、急用で出ちゃったのよ~。急がせといて、本当にごめんなさいね? 後でキツく言っておくから! メールか電話で、連絡させていただくわね? 大丈夫?」


 いやぁー… マシンガンでしゃべるしゃべる… こーゆー事務員さん、いるわよね、うん、いるわ。 むしろ、事務員である中の人(作者 哉子)が、正にこのタイプだわ←


「あ、あのぅー、実はぁー、風邪引いておりましてぇ… 長居もご迷惑になりますしぃー、ご連絡いただけるのぉ、ゆっくりと後日で大丈夫ですぅー」


「あらあらあら! それなのにわざわざ来てくれたのね? あらぁ~、本当にごめんなさいね! あ、待って待って! これ持って行ってちょうだい! 」


「え? あの… あ… えっとぉー」


「はい、これ、ビタミンとってね! それからいつものコレとコレと! あ、袋いるわよね! 待ってて!」


「あ、あ、あのぉー」


 すんごいわ、この事務員さん。みかんやらお菓子やらを大量に渡されたわ…


「いつものコレ」って言ってたけど、本体ちゃん、恐らくこの人に可愛がられてるのね… というか、餌付け?


 本体ちゃんがますます謎だわ…


 まあ、人柄に寄る所なのかしらね。ボーッとしてて頼りないけど、やるべき所はやって、頑張る所は頑張る。気遣う所は気遣う。


 確かに、可愛がりたくなるもの頷けるわね。


「あ、ありがとうございますぅー! いっぱい食べて、治しますぅー」


 って、全力で真似して取引先を後にしたわ。


 さて、渡すだけで良かったから、本当になんとかなったわね。あとは帰るだけ…


 だが、その前に…くくく…


 我が社(?)がどうなったのか、楽しみよ!


 てくてく歩いて3分。再び、本体ちゃんの会社に戻ってきたわよ。


 戻りましたぁーって挨拶をしながらドアを開けると、


 上司さんと先輩さんが、様々な資料を広げて確認作業を行っている。


 その2人の前には、青い顔でしどろもどろとしている営業野郎。


 ふふ… 予定通りじゃないの…


 こっちに気付いた3人が一斉に振り向いてきたわ。上司さんと先輩さんは笑顔で、お疲れ様! なんて声掛けしてくれた。


 営業野郎はというと、焦った顔でこっちを見たわ。


 ふふ、その顔が見たかったのよ! よし、煽ってやろうかしら?


「あれぇ、どうしたんですかぁー?」


 煽りの、全力の本体ちゃんの真似!

 ほほほほほ!


 営業野郎は睨んできたけど、笑顔の上司さんが怖いのか、何にも言ってこなかったわ。


 何事も無かったかのように自分のデスクに戻り、一息つくわよ。


 くくく… 勝ったな… (ゲ〇ドウポーズ2回目)


 かけてもない眼鏡を心の中で光らせていると、同期さんが話しかけてきた。


「おつかれ! いやぁ、やったね、ほんと!」


「なんの事ぉー?」


「いやさ、前々から業務整理しててさ、担当がめっちゃ変わったじゃん? どさくさで、アンタが代理で管理してたのをいいことにさ、営業野郎、ちゃっかり仕事押し付けてたんでしょ?」


「んんー、よく分かんないけどぉー、そうってこと?」


「そこは気づいとけよー! あとさ、営業野郎、なんか勘違いしてたっぽいし」


「へ? 勘違いぃー?」


「あー…うん、そう、うん」


「んんー?」


「それはそうと、あーしは隣で、アンタの事ずっと見てたし! 先輩にも営業野郎の事は言ってたからさあ。これがキッカケになって、あーし的にはスッキリしてるけどさ!」


 ああ、なるほどね。周りも勘づいてて、動いてたのか。だからこんなにスムーズに事が運ばれていたのね。


 つまり、私の作戦がダメ押しになったわけね。結果オーライだわ!


 にしても、本体ちゃん、そーゆー所には全く気が付かないのねぇ… 本当に抜けてるのか、人が良いのか…


 なんにせよ、やるべき事はやったわ。デスクを片付けて、帰りましょうか。有給届けを書いて、先輩さんの机に置いておいてっと…


「おい」


 突然、後ろから威圧的な声をかけられたわ。この声は憎きアイツか… この、営業野郎!


「はいぃー?」


「はいー?じゃねぇんだよ、どういうことだよ」


「なにがですかぁー?」


「ちっ! ちょっとこっち来い!」


 え、え?


 営業野郎に腕をひっぱられ、非常口の方に連れていかれたわ。


 なんなのよ! パワハラにセクハラじゃないのこれ!?


 ってか、上司さんにとっ掴まってたハズなのに、なんで自由に動いてんのよコイツ!


 営業野郎が非常口のドアを乱暴にあけると、そこにあった筒型の灰皿の前にドスンと座った。仕方なく、私は前に立って、少しだけオドオドとした雰囲気をだしてやる。


 本当はオドオドしたくないけど、ここは本体ちゃんに徹するべき… だと思う… すごいムカつくけど、そうするべきよね…


 営業野郎が煙草を吸い始めると、こっちを指さして、責めるような口調で話し始める。


「見積もりは提出する前に、俺に出せって言ったよな!?」


 あーね、こういうやり口ね。クソ野郎の典型じゃないのよ。だったら、こっちも言い返してやろうじゃないの。


「そうですがぁー、確認しようと思ったらぁー、営業さんがぁー、いらっしゃらなかったのでぇー」


「だからってよ!探せよ俺の事!」


「お約束の時間が迫ってましたしぃー、どこに居るか分からない営業さんの事ー、探す時間も無かったのでぇー? どこにいらっしゃったんですかぁー?」


「う… それはいいだろ別に!」


 あ、コイツ、あの後サボってやがったわね? なんとなく分かるわ。ってか、大事な局面でサボってんじゃないわよ。


「良くないですぅー。大事なお客様を待たせられないですしぃー、上司さんに確認とってぇー、行けば済むと思ったのでぇー」


「あー…もう!」


「何かあったんですかぁー?」


「お前な…! 今日はどうした!? いつもはもっと言うこと聞くだろ!?」


「なにがですかぁー?」


 イライラして、頭を掻きながら煙草をスパスパする営業さん。


 ほほほほ、煽って煽って煽り倒してやろうかしら!


 何か言いたげな営業野郎だけど、こんな所で負けてらんないわ。


 帰る前に、落とし前つけてやる!

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