リアタイ超大事!!

 飽きてきたわ。

 ええ、飽きてきました。


 部屋を暗くしてエアコンをつけ、毛布にくるまって食べ物を出し、映画を見始めて3時間経過経過しました。


 飽きずにいられようか。


 散乱するカップラーメンやポテチの袋たち…せめてゴミ袋に入れたいのに… ピザを頼んじゃってちょっずつ残し、スイーツの食べたあとの食べあとの残るカップ…


 片付けた部屋が汚くなっていく…くっ!


 まあでも、怖くはないわよ? だってもう、こんだけ散らかしたって、ゴミをまとめてササッと掃除するだけだもの。


 断捨離成功って素晴らしいわ!

 簡単に片付けができる快感!


 …


 ふう… こんな主張をする位には、映画に飽きてるわけです。


 しかし本体ちゃんだけど、さっきトイレに行った以外は、ずーっと観てるわね。 なんでこんなに集中力あるのかしら? いつもはボーッとしてるくせに?


 そんなこんなで背伸びしつつ、時計をチラ見しちゃいますと。


 あら、21時になりそうじゃないの!? やばい! 急展開で忘れてた! 歌番組! Mストが始まっちゃうわ! 今日は神回になるはずなのよっ!


 …


 DVDなんだし、これは後でいいわよね? 神回予定のMストよ? リアタイで見ずしてどうなるものか。


 よし、集中してる本体ちゃんを引き剥がすわよ!


「ねえ、ちょっと観たいテレビあるのよ。一度、映画止めていい?」


『えぇぇぇ~! 今いいとこなんだよぉ~!?』


 毛布にくるまってミノムシ状態だったこの子が、急にガバッと起き上がる。いつになく大声出すから、びっくりしちゃうじゃないの。


「一時停止すればいいでしょ?」


『やだぁ! まってぇ! せめてぇ~、このドッペルゲンガーが裸で酔っ払ってる所を~、主人公が外聞を気にして~、急いで止めに走るとこだけ観せてぇ~!』


「どんなシーンよそれ!? あんたの教育に良くないわよ!」


『むぅぅぅぅ、やだぁ、リモコン渡さないっっ』


 意味不明なシーンを見たがってる本体ちゃんは、リモコンを抱くように離さないわ。


 ってか、話は逸れるけど、ドッペルゲンガーキャラが恥晒しな感じ、本物のドッペルゲンガーとしては、なんとなくムカつくんだけど?←


 それはさておき、Mストを見ないと後悔するであろう私としては、ここは譲れないわよね。


「ちょ、ほんと、マジで! 今日のMストね! シャニーズの新メンバーのお披露目なの! 記念回になるのよ!? お願いだから観たい! ってゆーか絶対観る!」


『それこそぉ~録画しておけばいいじゃないさぁ~?』


 のんびりとしたムードに戻った本体ちゃんだけど、やっぱりリモコンは離してくれないわ。


「歴史的瞬間は、録画で残して、きちんとリアルタイムで観るべきよ!!! ってか義務よ!」


『義務とか草ぁ~☆ だめぇ~ 続き気になるのぉ~』


 笑いながらリモコンを話さないこの子には…


 奥の手よ。ほほほほほ!


 わざとらしくフウっとため息をつきながら、大袈裟にガックリしてみせてやる。


「…わかったわ。サプライズだから…これだけは言わないでおこうと思っていたけど… 仕方ないわね…」


『ほむぅ?』


 またまたわざとらしいため息をつきながら、本体ちゃんの耳元に顔を寄せて、囁いてみせる。


「今日… Mストに畑トモヒロが出るって聞いても… DVDの方が観たい…?」


『ふぉ!? ふぇ!? な、なにそれぇ~? 知らないよぉ~~~!?』


 更にガバッと身を乗り出して、私の方をガシッと掴んでくるこの子。


 ふふ… 我が術中にはまりかけてるわね? ほほほほ!


「そうよ?シークレットゲストだもの…ふふ。前半が新シャニお披露目、ラストに畑トモヒロ登場するのよ…?」


『な、なんで知ってるのぉ~~!?』


「ふふ… 私のサーチ力を舐めちゃいけないわ。新曲のちょっと出しするらしいわよ?」


『にゃ!?にゃぁぁ!?』


「さあ… それを聞いても、DVDを止めないつもりかしら? リアタイで観なくていいの? さあさあさあ?」


『今すぐストップぅぅぅ!!!』


「はいはい、一時停止しましょうね」


 ワタワタしながら、テレビにリモコンを向け、一時停止ボタンを押すこの子。


 ほほほほ、私の戦略勝ちね! サーチ力は剣より強いのよ!


 私が勝ち誇っていると、胸をなでて息を整える本体ちゃん。そんなに心臓バクバクしてたのかしら?


『危ないぃ~… 見逃すところだったぁ~… リアタイ大事ぃ~…』


「リアタイ大事とか言いつつ、畑トモヒロが出なかったら、譲らないつもりだったわね? 私と同じ状況になって、やっと理解したわよね? ねえねえねえ?」


『ま、まぁ… ふにゃ~… うん~… まあ~…』


 しどろもどろになる本体ちゃんを前に、私は腕組みをして、久々に完全勝利している優越感に浸っちゃうわ。


 しかしながら…


「リアルタイムのテレビがあるのに、DVDが止まらない現象ってなんなのかしらね?」


『やっぱぁ~? 次の早く観たい~ってなるからぁ~?』


「謎よね。急がなくてもいいはずなのに」


『あ~…続きがウズウズしてるとぉ~、次のやつ借りられちゃってるかもぉ!って思ってぇ~、なんとなく焦るんだよぉ~』


「はぁ…そーゆーもの?」


『使命感みたいなぁ~?』


「あー、寝不足になっても続き観たくなる現象と同じかしらねぇ」


『あぁ~それぇ~☆』


 2人でウンウンと頷きあっているけど、やっぱりダメ押ししておきたくなっちゃうのが私。


 本体ちゃんの目の前に人差し指をたてて、もう一度確認しておくわ。


「でも、いつでも観れるDVDと神回確定リアタイ畑トモヒロ、どっちが大事?」


『畑さんだけどねぇ~!!』


「はいはい、そうよね。 あ、21時になるから、Mスト観ましょうね~」


『はぁ~い☆』


 引き続きフローリングに寝そべりながら、テレビに切り替えて見続けるわ。


 いつものオープニングテーマが流れて、次々にシャニーズが出てくるわ。


 あー、やっぱシャニーズ最高!!! 新人くんのチェックは欠かせないわ!! 新旧どこをみても!! 素敵なのよね!!!


 最高!!! いえい!!


 って、隣をみたら、シャニーズに全く興味のないこの子が半分寝てるわ… 頭をコクコクさせているわ…


 …まあ、いいけど。 畑トモヒロが出てくる頃に起こしてあげようかしらね。


 それまでは、盛り上がるわよ!

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