ご褒美アイスは何が良い?

 ドッペルです、またの名をドッペルゲンガーです。なんならこの部屋の家主です、暫定的に。


 その位、頑張ったと思います。自分で自分を褒めてあげたいわ。


 あ、関係ないけど、ひとつ言っておきますね。

 なぜこんなに家主的な発言してるかっていうと、ナレーションはこれから、全て私が行います。私視点になっていきます。


 なんでかって?

 単にね、中の人がね、本体ちゃんでナレーションすると、書き方が面倒で疲れるからだそうです←



 さて、話を戻すわよ。



 あれから、もう数日は経過したわね。やっと終わりが見えてきたわ…


 ほんと…よく…


 ここまで片付けたと思います!!!!!

(クソデカ大声)


 思い返せば、


 汚れがあったり切り抜き後の雑誌は捨てて、

 保存状態の良い雑誌は売りに行き、

 衛生上ヤバそうな小物は捨てて、

 使えそうな消耗品はバンバン使い、

 日用品は組み立てラック棚へ整理し、

 付加価値がありそうなものはエルカリへ、

 頂いた洋服は洗濯して普段使いへ。


 あー…


 頑張ったわ!!!!!(クソデカ大声)


 そして!エルカリはすごいわね! ちょっとアップしただけで、私たちにはゴミみたいなものが、そこそこの金額にもなったわ!


 綺麗になって、お金も入る!

 一石二鳥とはこの事ね!!!


 仕上げに拭きあげ大掃除すれば!

 か!ん!ぺ!き!ね!


 ね…


 ふう…


 ダメだわ、ちょっとテンション上げるだけで疲れる…拭きあげは明日にしましょ。にしても私、最近、疲れたって何回言ってるかしらね。


 あー、こんな時に頭によぎる、自分ご褒美って言葉よ…


 そうよ、ゴール前に失速するのは良くあること。こういった時こそ、スイーツでスイートなパワーが欲しいわ!


 しかしもう立てない、むり。


 と思ってたら、仕事から帰ってきて、ソファでのんびりしている本体ちゃんが視界に入るわね。


 仕事から帰ってきてお疲れなのは分かるけど、心を鬼にして、ツカイッパにしてやるわ。


「ねぇ、ちょっと」


『んにに~? あれぇ~疲れてるねぇ~? どしたのぉ~?』


「あんたは元気そうね…? ならね。甘いもの…欲しくない…?」


『それはもう~! ほしいいいいい!!』


 ソファからガバっと立ち上がった本体ちゃんを眺めつつ、代わりに私が座り込んでしまう。顔を手で覆って、疲れたアピールしつつ、本体ちゃんにお願いする。


「私はこの通り動けません。なにか買ってきて…」


『ほむ~? あにゃ~、珍しいねぇ~? いいよ~行ってくるぅ~☆ なにがいい~~?☆』


「任せる…あんたの食センスは信じてるから…」


『はいはい~☆ んじゃ、いってくるぅ~☆』


 仕事の制服のまま、仕事用バッグを手にして、いそいそと玄関から出ていった本体ちゃん。


 こーゆー時、あの子って頼りになるのよね… さて、何買ってくるのかしら?


 …ああもう… 頭が回らない… 睡魔が…


 あ…あ…


 …


 …


 …



 ピトッ


 ひえええ!! 冷たぁ!?


 ほっぺたに何かとても冷たいものが当たって、私は飛び起きてしまったわ。


 なによ?なんなのよ?


 目の前にはいつの間にか、ニコニコとしながら手に何かを持っている本体ちゃんがいたわ。


『ただいまぁ~☆ 寝ちゃってたね~? ビックリしたぁ~?』


「ほ、ほんとに! なに!? え!?」


『ふへへぇ~~☆ アイス買ってきたよぉ~』


「び、びっくりしたぁ…ほんとにもう… アイス?」


『そうだよぉ~☆ 少しクールダウンしよぉ~☆』


 コンビニのビニール袋に、色とりどりのアイスのパッケージが見える。いろいろ買ってきたみたいね。


 それにしても、ビックリして心臓がヤバいことになってるわ。


「あ、あ、ビックリした… うん、クールダウンね、落ち着かなきゃだわね…」


 深呼吸をスーハーして、なんとか心臓をなだめてみると、本体ちゃんがスっと目を細めたわ。


 ん?なにかしら?


『さぁてぇ~? ここからかなぁ~?』


「なにが?」


『最近はぁ~、まともなセロリタイムが無かったと思わないぃ~??』


「は?何言ってんの、あんた?」


『ドッペルさぁん~? 問題でぇす~』


「はい?」


『アイスってぇ…ふふ~…』


「うん? はい? え? なんで目がマジなの?」


『どれが最強でしょうかぁぁ~~!?』


 ソファに座ってクールダウンしてる私の前で、コンビニの袋を掲げ、仁王立ちする本体ちゃん。


 は?


「えっと…? 急に何が始まったのかしら…?」


『さぁさぁ~! 決めるよぉ~!キングオブアイスぅ~!』


 私の疑問のつぶやきなんて聞こえないかのように、本体ちゃんはヒートアップしていくわ。


 クールダウンしたい私とは逆すぎて草。


「え…と… なんで? なにが?」


『ちなみにぃ~? ドッペルさんはぁ~? なにが好きぃ?』


「わ、私は…ベタだけどハーベンダッツ…かしら?」


『笑止ぃぃぃ~!!! 高級志向もそこまでぇ~!』


「あ、え、そうなの? じゃ、あんたは?」


『ふふ…☆ 部門ごとにあるから、一言では言えないよぉ~』


「じゃ、聞かないでよ…」


 ちっちっと人差し指を降って、アメリカンな動きをするこの子。


 何その古いアクションは?


『でもねぇ~? キングオブアイスですからぁ~~? 決めるとしたらねぇ~☆ あたしはねぇ~、ヒノですぅ~☆』


「あー、ヒノ良いわね。美味しいわよね」


『んふふぅ~! あの特別感~! 分かってくれるぅ~1つ1つの重宝感~! しかもピックがあるのぉ!? ハートの形のもあるんだよぉ~~♡』


「う、うん」


『しかもぉ! 限定モノなんかもあるんだよぉ!?』


「あ、はい、そうね? えーと食べていいかしら?」


『しっかりとぉ~!トップを決めましょぉぉぉ~!』


 なんか止まらなそうなこの子。ほっときましょ。それより甘いもの食べたいわ。無視を決め込んで、コンビニ袋の中を探ってみる。


「色々あるわね」


『そうだよぉ~☆ 何がいいぃ~?』


「んー、そうねぇ… あ、コレ」


『んにぃ? ハピコ?』


「そう」


「意外ぃ~?」


 さっき私がハーベンダッツって言ったばっかりだからか、本体ちゃんは不思議そうな顔をするわ。


 まあ、理由を聞けば納得じゃないかしらね?


「まぁね。なんていうか、私らみたいだなって」


『んに? あたしたち?』


 さらに不思議そうな顔をする本体ちゃんの前で、カシャカシャと音をさせて、ビンが二つくっついたような形のアイスを取り出す。


「どうしても最強を決めたいなら、コレかしらね。今のところ、私たちもね、2人で1人みたいなものだし」


『ほぇ…☆』


「なんでね、パキッと割って… はい、半分ずつ食べましょ?」


 真ん中からふたつにわけて、片方を本体ちゃんの目の前に差し出したわ。本体ちゃんはびっくりした顔をして、それをワタワタと受け取ったわ。


『あ~ありがと~』


「ね、分けると不思議と美味しいわよね。雰囲気マジックかしら?」


『うん~そうだねぇ~☆』


「最強とか決めなくていいわよ。好きなところ好きなように食べましょ。お菓子のときだって、そうしてたじゃない?」


『そうかぁ~☆』


 本体ちゃんはキッチンにいき、とりあえずコンビニ袋ごと冷凍庫にぶっ込んできたわ。それから私の横に座って、一緒にハピコを一生懸命食べだした。


「んー! たまに食べると美味しいわね」


『そうだねぇ~』


「頑張れそうね~」


『ふにゃぁ』


 ハピコを一生懸命に吸っていると、なんとなくほんわりとした空気に包まれている感じがしてくるわ。


「約束通り、温泉でもいきましょーねぇ」


『いいねぇ~☆楽しみだねぇ~☆』


 なんかよく分からないけど、ヒートアップしてたこの子は、急にクールダウンしたらしいわ。


 しかし、急になんだったのかしら? アイスって魔力があるのかしらね?


 まあ、自分で言っといてなんだけど、それぞれに美味しいものってあるわ。


 それぞれに…って、最近思うのよね。


 ドッペルゲンガーって、本当になんなのかしら? ここに来るまでは、使命感があったから沸き立っていたけど。こんな風に過ごしていたら、そんな事もどうでも良くなる。


 分からなくなってきたわ。私はどうしたらいいのかしらね?


 まあ、後で考えればいいか。


 明日、お掃除がんばりましょ。

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