崩落現場AGAIN …って!なんでよ!

 もう、雑誌の整理をしたくありません。疲れました。疲れ果てました。


 もう一度言います。


 したくありません。


 どうもお疲れモードのドッペルゲンガーです。不機嫌ふっきーです。


 なぜかって? いいですか、みなさま?


 あの子はね、楽しそうだねぇ~☆とか呑気に言いますけどね。


 あのね… 好きで片付けてるわけじゃないわ!


 入れ替わったら私の物だから綺麗にしとく?

 NO!そんな問題じゃないわ!



 今! 現在! なう!!!

 部屋が大変な事になってるからよ!

 埋もれて窒息でもしたら、入れ替わるどころじゃないわ!


 入れ替わる前に埋もれるドッペルゲンガーが何処にいるってのよ!


 といっても、この部屋の主はあの子なわけで。


 協議の末、必要な所だけ残すってことで、せっせと音楽雑誌を開いては、畑トモヒロのページを切り抜いて。


 100均で買ってきたクリアポケットに入れて、ファイリングして…(まぁ、ついでにシャニーズのもしてるけど)

 は

 昭和生まれの女子高生か!!!


 ※つまり、昭和生まれの中の人はこーゆー事をしていた。なんなら友達とそれぞれ雑誌の好きなアーティストの切り抜きページ交換とかもしてた。周りがゆずとかGLAYとか19とかの中、中の人はミッシェルガンエレファントとかだったので、取り合いにはならなくてラッキーだった。


 話は逸れたけども、そーゆー細かい作業をした後、紙類ゴミの日に捨てるものと、買取してくれそうな物にわけて、それぞれまとめておくわけね。


 買取店にもっていけば、小銭にはなるし、ゴミの日を待たなくていいから、重いものにも負けず、サッサと処分しにいって。


 紙類ゴミの日は月に2回。つまり待たなきゃいけない。仕方ないから、クローゼットに仮置きしようとしたわよね。


 いつもの様に、クローゼットを引き開けた。


 目の前でのスローモーション。


 崩落してくる、色とりどりの服。


 oh…Jesus


 綺麗ね… ヒラヒラって… 舞い落ちるわ…


 …


 ちょっと待てええええーーー!?


 いつも私が整理してるのに、なんでこんなに服があるの!? 掛けてるじゃないの、ハンガーで!? 小物はカラーボックスにまとめているわよ!?


 それに、こんな服は見たことないわ!

 ちょ、もう! 犯人はあの子しかいない!


 雑誌の整理も放り出して、ソファで半分寝始めている本体ちゃんの前に仁王立ちしたわ。


「あの、お聞きしたいんですが?」


『なぁにぃ~?』


 半目をあけて、むにゃむにゃとしているこの子。なんなのよ本当に!


 私は、崩落してきた服を両手で差し出したわ。


「クローゼットを開けましたらですね」


『ほむほむぅ~?』


「服が崩落してきました」


『あぁ~… やっぱりやっちゃったぁ~☆』


 明らかに心当たりのあるセリフ回しに、私は一気にまくしたててやるわ。


「あぁ~じゃないわよ! なんで! こんなに服なんて無かったじゃない!? ちゃんと整理して収納してるわよ!?」


『あ~ね~えっとぉ~? 会社で同僚さん達から貰ったんだぁ~』


「それにしては大量ね!?」


 少しずつ目が覚めてヘラヘラしだしているこの子。

 イライライライラ…


『ほらぁ~? ドッペルさんと住むようになってからぁ、服も共有してるからぁ~。 買うのもアレだしぃ~? 会社で服がなんか足りないよぉ~って言ったらぁ~、みんなが着てないやつあげるってぇ~。ありがたく貰ってきたのぉ~☆』


 大袈裟に手を広げて、ソファでぴょんぴょんと跳ねだしたこの子に、私も一理あるとは思ってしまうけども。


「うん、それはありがたいわねっ! たしかに! 感謝だわね!」


『でしょぉ?』


 更にヘラヘラするこの子に、私は頭が痛くなってくる。額に手を当てて、ちゃんとこの子に説明をしないとと思いやられてしまう。


「あたしが言いたいのはね… なんでそのままにして、クローゼットに詰め込んでおくのかってことよ!」


『あうあう~…』


「せっかく頂いたんでしょ? 一度全てお洗濯して、着れるように整理しましょうよ!? それが筋ってもんじゃないの!」


『え~っとぉ~…雑誌の整理してるからぁ~、なんか言い出しにくくってぇ~』


 唇をとんがらせてシュンとするこの子を見て、私は更に、変なテンションになっていくのを感じるわ。


「まぁ、わかるけども」


『ふみゅんんん』


「こうなったらもう、雑誌だけじゃないわ・・・」


『んに?』


 私は意を決しました。


 この子にビシッと指さして、宣言します。


「断捨離よ! 雑誌や服だけじゃないわ! 部屋全体の整理整頓に切り替えます!」


『う、うわぁぁぁ…』


 あからさまに嫌がるこの子に、腕を組み直して、上から眺めてやるわ。


「なによ、その嫌そうな顔は」


『あの、疲れるし、ちょ…ちょっとずつやろうねぇ…?』


 おずおずと言い出すこの子。


 私はドンドンと邪悪な顔になっていくのを感じているわ。なんでかしら? 何かが突き抜けた感じがあるわ。


「無論。私もだいぶ疲れてるわ」


『だよねぇ…』


 くるりと本体ちゃんに背を向け、2つの崩落現場を眺め回したわ。


「そうね… あんたも、ずいぶんと溜め込んだものよね…」


『は、はいぃ~…』


「もう一度言うわ。ずいぶんと溜め込んだわね…?」


『ひ、ひぇぇ… ドッペルさん… 目が座ってるぅ…』


 なんとなく怯えだす本体ちゃんの顔に、私は笑顔をぐっと近づけたわ。


 さあ、尋問よ。


「本当なら、誰が整理するの…? 誰が掃除をやるべきなの…? この部屋の主は誰なの…?」


『あ、あたしですぅ…』


「今、現在、誰が主導で整理してますか…?」


『ど、ドッペルさんですぅ…』


「あんたが仕事に行ってる間も、自分の仕事をこなしつつ、せっせと整理を続けてるのは誰ですか…?」


『ど、ど、ドッペルさんですぅ…』


「この部屋の主として、努力するべきは誰かしら…? 部屋全体が崩落する前に…? 断捨離するべきは…? 誰…?」


『は、はいい~私ですぅ… やりますぅ~…』


 近づけた顔を離し、笑顔のまま、本体ちゃんを見下ろしてやったわ。


「よし、覚悟なさい」


『ふ、ふぇぇぇ… わ、わかりましたぁ~』



 ふぅ、久々に本気を出して尋問してしまったわ。これで、本体ちゃんは自主的に断捨離するわよね。


 さてさて、


 クローゼットの状況は分かったわ。またプランの練り直しね。


 これが終わったら、色々売ったお金とへそくりで、2人で日帰り旅行でもと思ってるけど、いつになることやら。


 ああ、疲れたわ。慌てて動き出した本体ちゃんを尻目に、まずはお風呂でのんびりしようかしら。

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