DANSHARI in 本体ちゃんち
崩落現場をなんとかするわよ!
どうしよう…どうしようかしらコレ…
私は今、目の前の状況を見て、途方に暮れているわ。暮れずにいられますかっての。
あ、途方に暮れまくっているドッペルゲンガーです、こんにちは。
そうね… みなさまにいきなり「暮れてます」なんてお伝えしたところで、なんの事かわからないわよね。説明が欲しいところよね。
危なっかしいな、とは思っていたのよ。ついに来てしまったわ、この時が。
そう、そうなのよ。
雑誌の山の崩壊を、スローモーションで目の当たりにしたわ!
すごいわよ? 上の方パサって音がして少し動いたと思ったら、1冊がパサッと落ちたの。 それにつられる様に2~3冊が落ちてね。
そこからよ。
色とりどりの雑誌たちが、バサバサバサバサって崩れていったのよ?
奈落に堕ちるように… 全てが一気に崩れたわ…
凄かったわ。 引力というか、そういったものを感じ取ることが出来たわ。 うんうん、自然の力って、こうやって、より脅威になっていくのね。災害予防って大事よね。
って、
そうじゃないわよ!!!!!
なんなのよ、これは!!!!!
雑誌が積み上がってるのは、部屋を片付ける身としては分かっていたわよ? だけど、本体ちゃんが、これだけは捨てちゃダメぇ~って言うから、仕方なく触れないでいたのよ!
と思ってたら、この有様じゃないのー!!! 誰が片付けるのよ!?もう!?
もし入れ替われたら、確かに私の部屋になるわよ? だから、この山は私が片付けるの?
…ふふ…
…そんなの道理に合わないわ!
散らかしたのは! 山にしたのは! 本体ちゃんじゃないの!
それに、片付けるにしてもどうやって?
あの子がいなくなった後だと仮定して、自分の趣味じゃないざっしの山を、私がせっせと紙類ゴミの日に捨てるわけ?
あはは… やってらんないわ!(バァン)
あ、もう、これは私は片付けません!!
本体ちゃんが帰ってきたら、議論にかけたいと思います! 徹底的に話し合うわよ!
なんて息巻いてたら、そろそろあの子が帰ってくる時間じゃないの。
そのうち、インターホンが鳴って、本体ちゃんの姿が映っているわ。 何も知らずにほわほわと帰ってきたこの子に、少しだけイラッとしてしまうわね…
ゆっくりとドアをあけて、本体をお出迎えするわよ。
『ただいまぁ~☆』
「おかえりなさい…」
『ほわわぁ~? 暗い顔ぉ? どうしたのぉ~?』
玄関を靴を脱ぎ散らしながら、本体ちゃんがのほほんとリビングに行こうとするわ。 私は先回りして仁王立ちしたわ。
「暗くもなるわよ… これを見なさいっ!」
腰に手を当てて崩落現場を指さすと、本体ちゃんはポカンとした顔になって、まだまだぽやーんとしてしまったわ。
『わぁ~… これははぁ~… 雑誌の地殻変動やぁ~☆』
「地殻変動やぁ~じゃないわよ! 彦○呂かっ! どうするのよこれ!?」
『んん、どうしよぅ~~~どうしたらいい~~??』
「決まってるでしょ! あんたは捨てちゃダメって言うけど、こんなに散らかっちゃうなら捨てるわよ!? 」
『…』
崩落現場の前で腕組みをしながら、私は高らかに宣言してやったわ。 本体ちゃんはなぜかうつむいて、何も喋らない。
もう、なんなのかしら?
「はい? だんまり?」
『…やだぁ…』
「ん?」
『やだぁ~!!!』
ガバッと顔を上げたと思ったら、両手を大袈裟に振りながら、必死の抵抗をしてくるわ。
え、何この子、怖いんだけど。
「お、おお… いきなりテンション上がったわね…」
『あのねぇ~! これはねぇ~! 私の歴史なんだよぉぉ~~!』
「歴史? いつから取ってるのよ?」
『畑トモヒロのファンになってからぁ~! オシャレしたくて勉強しようかななってからぁ~! ネコが飼えないからせめてマンガでネコにまみれたいってなってからぁ~! 旅行に行きたいのに行けなくて、せめて気分だけでも行きたいってなってからぁ~!』
みなさま、想像してもらえるかしら?
仕事帰りのオフィス制服のまま、両手をバタバタとしながら、雑誌を片付けるなと、一気にまくしたてる20代半ばの女子を。
シンプルに引くわ。
「え、怖い怖い怖い。 なにこれ、すごい主張してくるわこの子」
『全部…! 全部…! 大事なのぉ~!』
とりあえず、本体ちゃんの大事なものであることは理解したので、崩落した雑誌をよく見てみるわ。
「よく見ると… 音楽雑誌、ファッション雑誌、猫マンガ、旅行雑誌… なるほどねぇ…」
『そうだよぉ! 何年も前からとってるんだからぁ! あたしの履歴といっても過言じゃないんだよぉ~!』
パラパラと適当に雑誌をめくると、あるページが私の目に止まる。
「あら? これ、シャニーズ特集もあるわね?」
『そうでしょぉ!たくさんあるんだからぁ!』
私は腕組みをして、少しだけ考える。何年も前から取っているということは、本体ちゃんの必要なページ以外にも、色々と情報があるということだわ。
「ふーむ、意外とお宝がありそうね」
『ねぇ~? 捨てるのやめよぉ?』
「いえ、それはダメです」
『ええ!?』
「このままじゃ実際問題、床が抜けます」
『そ、そんなにぃ?』
縋るような顔をしてきた本体ちゃんを横目に、私は考えつつ、あの時の様子を伝えるわ。
「あんたね、崩落した瞬間を見てないから… 酷かったのよほんとに… 雪崩が起きて、生き埋めになるかとと思ったわ」
『へ、へぇ~・・・』
「片付けるわよ!!!」
『うう~…』
ガックリと肩を落とすこの子に向かって、少しだけ声を和らげて語りかけてやるわ。
片付けつつ、床が抜けない程度にすればいいんだもの。
「まあ、全部とは言わないわよ?」
『んにぃ?』
「まず、ファッション雑誌は、最近の以外は捨てるわよ。流行遅れの着こなしを勉強したって仕方ない」
『たしかにぃ…』
「音楽雑誌は電子書籍でも読めるけど… とっておきたいなら、畑トモヒロとシャニーズの所だけ切り取ってファイリング。だいぶ原始的なやり方だけどね。その後は捨てるわよ」
『あれぇ~? ちゃっかりシャニーズも保存しようとしてるぅ~☆』
「うるさいわね! 猫マンガは売ります! 厚みのある漫画雑誌は売れるからね! 意外とレア物とかで高く売れることもあるし!(※注1)どうしても好きな連載があるなら、単行本を買ってあげるわ!それか電子書籍で読んで! なんなら、猫○十兵衛は私も好きだからね!(※注2)」
※注1 ▶︎ 中の人の体験談
※注2 ▶︎ 中の人の趣味
『ほわぁ! やったぁ~!』
「最後に、旅雑誌。…そうね、これを参考にして、どこかに一緒に行きましょうか」
『んえぇ~?』
「最近、外に出るようになったから実感したけど。変装すれば、双子ってことでいけるんじゃない? 日帰りとかなら、たまには出かけましょう」
『え? え? ええ? いいの?』
「そしたら旅行雑誌は、プランを練ったら捨てるわよ。実際に行くなら、気分に浸らなくてもいいでしょ?」
『うん~☆』
「さぁて、少しづつやるわよ! こんな崩落したところで、ゆっくり休めないからね!」
『らじゃぁ~☆』
ふぅ、なんとかなりそうね。
まずは100均あたりでクリアポケットやファイルを買って… 日帰り旅行のプラン練りからなにから…
色々忙しくなるわ。
まあでも? こんな忙しいのも、たまにはいいかもね。
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