いつの間にか救急セットとドライヤーコードぉ

うふっ!

うふふふっ!

うふふふふん☆


あぁ~もう、カッコよかったぁ~☆


 こんにちはぁ~! 本体ちゃんだよぉ☆ あのねあのねぇ? 聞いて聞いてぇ~?


 大好きなミュージシャンのねぇ~、抽選に当たってぇ~、少人数ライブと握手会だったのぉ~☆


 最高だったよぉ…☆


 目の前で素敵に歌っててぇ、おっきぃ手で握手してくれてぇ、一緒に写真撮ってくれてぇ、ハグしてくれてぇ~~~!


 きゃふふふーんん☆ 夢みたいだったぁ~!!


 夢心地で帰ってきたよぉ~! フワフワな気持ちだよぉ~☆


 フワフワだからぁ、思いっきり転んじゃったよぉ~☆ 膝すりむいちゃった☆


 でも幸せだから痛くなぁい~! 脳内になんか出てる感じぃ~☆


 膝から血を流しながらぁ、ルンルンでそのまま帰ってきてインターホンを鳴らすよぉ☆ ガチャってカギを開ける音がして、ドッペルさんが顔を出したよぉ☆


『ただいまぁ~☆ 楽しかったぁ~☆』


「おかえりー…ってあんたぁぁぁ! どうしたの!!」


 あははぁ~ドッペルさんがめっちゃ驚いてるぅ☆ それもそうかぁ~☆


 手当するからシャワー浴びてきなさいってぇ~。 この位、大丈夫なのにぃ?


 握手したから手ぇ洗いたくないよ~って言ったら、めっちゃ怒られちゃったぁ☆


 心配性だなぁ~? まあでも、言うこと聞きますぅ☆


 膝だけそっと洗ってぇ~、髪も洗ってぇ~、身体も洗ってぇ~。


 お風呂から上がったら、ドッペルさんが救急セットをバッチリ用意して待ってたぁ☆


 救急セットなんてぇ、あたし持ってないはずぅ? いつの間に揃えてたんだろぉ? さすがドッペルさんだねぇ~。


 ソファに座りなさいって言われたから、ちょこんと座ってみるよぅ。そんなこんなで、ドッペルさんが覚悟しなさいって顔になるぅ…


 消毒液でチョンチョンってぇ~!

 し、しみるぅ~!

 なんでドッペルさんは楽しそうなのぉ~!?


 消毒が終わってしみなくなってぇ、手当をしてもらいながら、今日の楽しかったことを喋ったぁ☆ ドッペルさんは転んだことに呆れてたけど、ちゃーんと聞いてくれるんだよねぇ。


 さてさて、手当が終わってから、風邪をひく前に髪を乾かしなさいってぇ☆ あたし達って髪長いからぁ、乾かさないと大変なのぉ☆


 ふんふふーん☆


 15分くらいかけて乾かしてから、ドライヤーのコードをくるくると本体に巻き付けて片付けたよぉ☆


 かたづ…


「待ちなさい」


『ほぁ!? びっくりしたぁ~!』


 いつの間にか背後にいたドッペルさんに声をかけられたぁ~!


 いつも腕組みしてるけどぉ、これってクセなのかなぁ~… そんなんで淡々と話し始めるからぁ、余計に驚くよぉ…


「前から思ってたわ」


『あ~、もしかしてぇ…』


「そう、分かってるようね」


 こんな時でもぉ… セロリタイムって来ちゃうのぉ?

 膝痛いのにぃ~。んもう~☆ 仕方ないなぁ~☆


『ドライヤーのくるくるぅ~?』


「そうよ! 何のために結束バンドがついてると思ってるの!?」


 やっぱりぃ~。セロリタイムが来る時ってぇ、ドッペルさんが腕組みして、勝負を挑んでくる感じになるんだよぉ☆


『あぁ~、それはなんかぁ、片付け方が違うなぁ~って思ってたぁ~』


 腕組みしながら、ため息をつくドッペルさん~。 前から思ってたけどぉ、ドッペルさんって表現が大きいよねぇ☆ アメリカのドラマみたいぃ☆ ビバリー☆(?)


「あのね、ドライヤーにコードを巻き付けるのは危ないのよ? コード痛めてしまうのよ?」


『そーなのぉ? ちょうど良くまとまるのに~?』


「結束バンドついてるでしょ?」


『なんか絡まっちゃいそう~? しかも曲がっちゃいそう〜?』


「逆よ! 本体に巻き付ける方が曲がったり絡まったりの原因なの!」


『本体に巻き付けるってぇ☆ なんかあたしにドッペルさんが巻きついてるみたいぃ☆』


「ぐぬぬぬ… ぐぬぬぬ…」


 あ、なんかちょっと冗談言ったらぁ、ドッペルさんが震えてワナワナしてるぅ☆


 やばいやばいぃ☆


『あれ?なんか発作おきてるぅ? 冗談冗談~☆ 怒っちゃやだぁ~☆』


 ドッペルさんは腰に手を当てて、大きく深呼吸を一回ぃ☆


 もしかしてぇ、アンガーマネジメントってやつかなぁ? さすがドッペルさん~☆ 人間ができてるぅ☆ ドッペルゲンガーだけどぉ☆


「…わかった、こうしましょう」


『なぁにぃ?』


「ホルダーを用意するから、そこにおけばいいわ。」


『ほるだぁ?』


「十中八九、結束バンドでまとめるのがメンドーなんでしょ?」


『バレてるぅ☆』


「なら、コードを痛めないように、ゆるく巻き付けられるドライヤーホルダーを買ってくるわ! そこに片付けなさい!」


『こまかぁい~』


「うるさいわね! とにかく! 用意するから! 言うこと聞きなさい!」


『はぁい~』


「はぁ、なんか先が思いやられるわ…」


 額に手を当てながら、ドッペルさんはリビングに戻って言ったよぉ~。


 あたしはとりあえず、ドライヤーの本体に巻き付けたコードをほどいて、結束バンドでまとめてっ…っとぉ~。


 たまには言うこと聞かないとねぇ☆



 でぇ、思ったんだけどぉ~?



 ドッペルさん~、着々とあたしのおうちを変えていってないかなぁ?


 入れ替わった後のこと、心配してるのかなぁ? あたしぃ、入れ替わるつもりないんだけどなぁ… 一緒に住みたいだけなんだけどなぁ…?


 でもねぇ、実際、使いやすくなっていくんだよぉ~。


 だってさぁ?


 救急セットなんて無かったもん~。ドライヤーにホルダーあるなんて知らなかったぁ~。 今までのあたしは知らなかったこととかぁ、いっぱいあるんだよぉ?


 ドッペルさんって、物知りだし、しっかりしてるしぃ…


「あたしになる」必要なんて無いんじゃないかなぁ~?


 先が思いやられるって言うけどぉ~、ドッペルさんはドッペルさんで生きればいいと思うんだけどなぁ?


 まぁ~、でもぉ~?


 あたしはまだぁ、このままでいて欲しいけどぉ~☆

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