掃除機の先端と主導権

さぁ、今日は私もあの子も休日!

掃除を!するのよ!!



あ、唐突でごめんなさいね?


こんにちは、ドッペルゲンガーです。そう、いつものドッペルゲンガーです。


昨日は結局、コンビニグルメを堪能してしまったわ。


本体ちゃんにコロッケを買いに行かせたわけだけど、セールをしていたホットスナックだけじゃなくて、スイーツからお惣菜から、大量に買ってきちゃって。


ちょっとしたパーティ状態って感じだったわね。調子に乗って色々食べちゃったもんで、部屋が散らかっちゃって散らかっちゃって。


あの時はお腹いっぱいで、まぁいっか~的に放置して寝てしまったわけだけど。


朝起きてきて、リビングの惨状に脱力&後悔したわけよ…


いけないわ、しっかり片付けないと!


そゆなわけで冒頭のご挨拶は、一念発起の気合いと言いますか、まぁ、その、そんなやつでございましてよ。


さあ! まずは、ベッドでまだとんでもない寝相をしている本体ちゃんを起こす!


本体ちゃんはまだ半目でぐでぐで溶けているけど、寒かろうがなんだろうが、窓をあけて換気!


その間に洗濯機もピピッと回す!


ついでに、いつもはやらない所も拭き掃除よ!


そう、やる気になったらとことんやってしまうのが、掃除道(?)ってモンなのよ!


…ん?


あらま、あの子、やっと起きてきたわ。パジャマを着たままでソファでだらけてるけど、家主にもやる気になってもらわないと困るのよ。


「ほら、だらけてんじゃないわよ。さっさと着替えて掃除するわよ」


『お掃除ぃ~…?』


口を半分あけてまだ、なにがなんだか分かってない様子の本体ちゃんの目の前に仁王立ちして、掃除の重要性について語るわ。


「昨日、随分と散らかしたでしょ?」


『あーうー…うー…? うわーん~ほんとだぁ~』


初めて惨状に気づいたかのように言うけど、食べ散らかしたのは誰なのよ… 言い聞かせ開始!


「昨日サボったツケが来たわ。この際、徹底的に大掃除するわよ!」


『え~やだけど~… 散らかりすぎて住めなぁい~ 仕方ないからやりま~す~』


「あんたね… まぁいいわ。換気してる間に掃除機かけてくれる?」


『おっけぇ~~』


パジャマのままなのが気に入らないけど、動く気になったようね。クローゼットから掃除機をノロノロだしてきて、机の周りの細かい食べこぼしを吸いだしたわ。


よっし、私は汚れのひどいところの拭き掃除をしましょ。


隅っこのホコリまで細かく拭いていると、後ろからズゾゾゾーーーって吸い込む気持ち良い音が響いてくるわ。


うんうん、ちゃんとやってるようね。


私は私で乾拭きしながら、本体ちゃんに次の指示をしちゃうわよ。


「あ、部屋のはじっこも忘れずにやってね?」


『はぁい~わかったよぉ~』


掃除機が一度止まって、ピンッとコンセントを抜く音が聞こえて、トコトコと足音がして、再び掃除機のガーッという音がする。


ガーッと…音と…


え、なにこの、ガツッガツッて音は?


音の方に振り向くと、本体ちゃんが壁にヘッドをぶつけながら端っこを吸い込んでいる。


あ、あ、無理だわ。こーゆーのダメなの私。我慢ならないわ。


「ちょっと待ちなさい」


『ん~? キリッとした顔してどしたの~?』


何が何だか分からないぼーっとした顔で、本体ちゃんがこちらを振り向く。


「掃除機の!ヘッド!」


『あ~?ん~?うん~?』


「細いノズルに付け替えて!」


『え~…?あったっけそんなの~? どっか失くしたかも~』


「あるわよ!私、いつも使ってるんだから!」


『そーなのぉ?』


私はクローゼットの中から不織布でできた袋を出してきて、中に入っているノズルを取り出して、印籠のごとく本体ちゃんの目の前に掲げてやった。


「隅っこは、そんなヘッドじゃ掃除した気にならない! さあ! 付け替えるのよ!」


本体ちゃんはめんどくさそうにそれを受け取ったけど、どうもやり方が分からないみたいね。


『え~、なにこれ~? 壁のはじっこなんて~ヘッドの四角い所にピタッと合うから大丈夫じゃない~?』


「い!や!よ! 絶対吸いきれてない!気になる!なんなら、ほうきで細かい所まで掃いてから、その細いノズルで仕上げて!」


『うわぁ~こまか~い~ウケるぅ☆』


くっ、本体ちゃんが煽ってくるわ…!

といっても、掃除道(?)を極めし私に、そんな煽りは通用しない!


「細かくないわ! あ、それから、なにか棒に布を巻き付けてキレイに拭いて!」


『あ、なんかそれ、とある主夫漫画の1巻で見たやつ~でもそれ畳の場合で~うちはフローリングだよぉ?』


「だからこそよ!畳でキレイになるなら、フローリングなら尚更よ!」


本体ちゃんはヤレヤレといった顔ね。

腹立たしいわね… 眠そうなくせに…


『ササーって掃除機かけてから、フローリングワイパーでやれば良くない~?』


細かいところはワイパーでやりたいわけね。 いやよ! ホコリを吸う前にワイパーなんてかけたら、なんかジャリジャリしてフローリングを傷つけそうだもの!


あ、そうだわ。それなら…


「それならウェットシートでやるわよ! その後しっかりドライシート! なんなら、ワックス掛けよ!」


『えっとぉ~、待ってぇ、おちついてねぇ~? 女子の部屋でワックスはダメだよぉ? 臭いがだめだよぉ?』


「はっ、そ、そうね… まあでも、今はシートで簡単にワックス掛けできるのもあるわ!」


『ド、ドッペルさん… やたら詳しいけどぉ…? そーゆーお仕事してたの…? それとも趣味ぃ…?』


掃除道(?)を極めし私の勢いに圧倒された本体ちゃんが、私に聞いてくるけど。 いや、清掃の仕事はした事ないけど。 ちょいちょい過去を知りたがるのよね、この子。


「まぁ… それは秘密」


腕組みをしながら窓の方をくるりと向いて、背中で語ってあげるわ。 聞かれても答えるもんですか。


本体ちゃんはちょっと引いてるけど、話を戻したくなったらしいわね。


『と、とりあえず、ノズルは付け替えるね~…』


「ふ、そうして頂戴」


掃除道(?)を極めし私は、キリッとした顔で本体ちゃんの方を振り向く。


恐らく逆光で、そうとう威厳がある感じになってるはず(どーゆーこと)


『まぁ~、家事とかは~、ドッペルさんの言うこと聞いておけば間違いないかもねぇ~…』


ヘッドをノズルに付け替えて、隅っこの方をちまちまと掃除しだす本体ちゃん。


ふっ、たまには言うこと聞かせるのも良いわね!


…は! そうよ!


私が、あの子に染まらなくてもいいのよ!あの子が私に近づけばいいの!


私色に染めてやるわ!

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