【3-04】透歌と奏、迷夢の中で
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(――また、この夢か)
もう10年も昔のことなのに。
今でも『
(明日は
これが夢だということは、意識で分かる。
そして、いったい「
(そう。これは『
かつて
もう1年前に死んだはずの
妻の
しかし"
(
だから、だろうか。
(こうして
特に最近は
それはまるで
かつて目に焼き付いた光景を
(今夜は、少しばかり物悲しい夜になりそうだな――)
そう思いながら、
――――…………
人口1000人にも満たない
ユズを特産として住人はつましく暮らし、山間に小川が流れるだけの、秘境の
"私"は代々
「姉上、どうしてそんなに
10年前の、あの深秋の日。
私は姉の顔色が
「――どうして、そう思ったの?」
きれいで。はかなげで。どんなにホコリに
ながい
でも。だからこそ、私は姉の少しの変化に気付ける。
姉を尊敬しているから。とても
「いつもより
私が理由を答えると、姉上が
「
「だって。姉上のこと大好きだもん。いつも
私が重ねてたずねると、姉上は降参したように
「
そう言うと姉上は
「
「平気。日なたは温かいし、それに姉上の側は、もっと温かい」
そう言って私は
裏を見ると差出人として、見覚えのある名前が書かれていた。
「
とは言っても幼い私に分かるのはそこまでで、書面の内容は読めない。
だから代わりに姉上に教えてもらおうと、私は中身について質問した。
「また、『リート』のおはなし? 姉上が持つというリートを
「どこで聞いたの」
「父上が言ってた」
私が答えると、姉上は困ったように息をついた。
「父上も、なぜ幼い
「姉上は断りたいんでしょ?」
「そうね。私の持つ
そう答えると、姉上は手紙を手に取り、小さく
その、
「仲良しの皇太子さまの
「……私にとって大切な家族は、
姉上の答えを聞いた私は、「父上は?」と言いかけたがやめた。
姉と父の関係に少し
それは二人が直接の
「私も姉上が一番好き。死んだ母上みたいに、病気ばかりの私にも
「ふふ。
私と姉上の母親は、
連れ子として母と
それは単に病弱な妹を守ろうとする
「姉上は、そればっかり」
「母様には
姉上はつぶやくと、中庭に立った。
庭先には家族が
「姉上は『リート』って力で、私を守ってくれてるんだよね。どんな力なの?」
「……89番、
だけど私には言葉の意味が分からず、「ううん?」と首をかしげるしかなかった。
だけど、その声で我に返ったように
「……ごめん、難しすぎたね。でも私のリートは心に
「口に出して言ったら、ダメってこと?」
「そうね。もし口にすれば
そう言う姉の姿が、なんだか少しつらそうに見えて。
つい私の口から、
「……なんだか、しんどいね。言の葉は
この大好きな姉は、色々な
姉上が持っているという、『
仲良くしている皇太子からの
姉は色々な人の色々な言葉に
まるで周りの大人たちが、こぞって言葉の
いや。もしかしたら私の言葉だって、この人に
(イヤだ)
そう考えたとたん、中庭に立つ姉の周りに、地面から不気味なモノが現れた。
『言葉のヘビ』とでも呼ぶべき不気味な
黒く大きなヘビたちが
「あねうえ!!」
にげて。
でもその言葉すら、姉を
ただ私には、
「やだ、やだ、やだ――あねうえぇぇ!!」
どんどん増えていくヘビたちに、姉の姿が
それだけじゃなく、中庭が、私が、心が、無数の言葉のヘビに食べられていく。
あっという間に真っ暗へと流れ落ちていく、その意識の中で。
――――ああ。これが、本当の『世界』なんだね。
私たちはみんな、言葉の
『私』と『
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