【1-04】薬師の少女にユズを食わせろ
「
相手はまだ子供っぽさの残る体格と
(ベクター……)
10年前に
『ベクター』と呼ばれるヤツらと、同じ耳をしている。
(ずいぶんと若いな。
細身で色白。夜を映すギヤマン細工みたいな、ヘーゼルゴールドの色をした
春めいた
金色の
(何者だ?)
「
細く長く、先の
その
「医者か?
ところが娘も
「薬師よ! だったら
少女が一歩も引かずに言い返してきたので、
(どうやら
それに
少女が
だが――
細く長く、先の
ヤツらと同じ耳をした少女に従う気になれず、
「ほう、薬師さまと。しかしケガ人を任せるのに、
「ぐっ……私は子供じゃない! これでも18
「へえ、いかにも子供のウソっぽいな。ヨシヨシ頭いいね、薬師先生だね~?」
「ばっ、バカにするなあ!」
見かけは年下だし、この少女の幼稚な対応を見るに、そう頭が良いとも思えない。
それに男の仲間という線もある。これはホンモノかどうか
「本当に薬師と言うなら、薬草学の知識があるだろ。この実の名を言ってみろ」
そう言って、
「ユズの実ね。効能は
ペラペラペラペラペラ。
こいつ何者だ。本当に子供先生なのか。
たじろいだ
「なぁに
ふふん、と鼻で笑いやがった。
くっ、ムカつく。
どうやら薬師なのは確からしいが、このまま引き下がれるか。
こうなったら
この手の
「ほ、ほほう……なかなか知識があるな。だが残念なことに、その知識は
「……え?」
だが自信がゆらいだ様子はなく「コイツ何いってるの?」という、
(ふん――その自信、今からへし折ってやるぞ)
「残念ながら、ユズが食材に適するというのは昔のデマだ。果実には毒があり、ヒトが食べるとアレルギーを引き起こす。
ペラペラペラペラペラ。
もちろん、ユズに毒があるというのは
実際にはデマを
「は? そんなの聞いたことないし」
「いや、ユズの実は食べられないぞ? ちゃんと勉強しましょうね、子ども先生?」
「バカにしないでよ! ユズは食べられるわよ! ちゃんと調べたもん!」
(――
その「ユズの実は食べられる」という言葉を、待っていたんだ。
少女が反射的に受け取ったところで、
「じゃあ、実際に食べてみろよ。毒は無いと自信を持って言うなら、食べられるだろ?」
「は……?」
「ほら。周りの連中が証人だ。ケガ人を早く助けたいなら、早く食べろよ」
「えっ……えっ、ええっ?」
もう
「ミカンの仲間だし、食べられるハズだろ? それともまさか――今のはウソか?」
「そ、そんなことはない、けど……だって、このまま食べるのは、ちょっと」
少女が、
その
(うんうん、言いたいことは分かるぞー)
ユズの実は食材として使われるが、それは甘く加工した場合の話。
ユズは確かにミカンの仲間だが、ミカンと
とりわけ
というより、ぶっちゃけ子供の舌では無理ゲ。
もちろん
承知の上で、食材としての話題を、果実の生食の話題にすり
そのすり
「お前が食べて
こちらの
とは言え今さら気付いても
「こっ、この……くぅ、分かったわよ!」
「皮も食べられると言ってたよな、もちろん皮ごといけるよな?」
「いけるわよ!!!!」
ヤケになったのか
ちなみに皮は、これまた非常に
「ミカンみたいなもんだし、ささ、一気にガブッとどうぞ」
「うう……何でこんなことに……覚えてなさい……」
少女は
ガブッ。
勢いよく、実の半分ほどに食いついた。
少女の顔が、みるみるうちに
「~~~~~~~~っっっっ!!!!」
「おお、なかなか
少女は目をつぶりボロボロ
なかなかに感動モノだ。ぜひ課題を達成してほしいぞ。
(うむ。この感動に
少女がユズを
それに相手が目をつぶっている今なら、気づかれずに立ち去れそうだ。
(アーテイ氏、行くぞ)
長耳の少女をユズでからかったことで、少しだけ昔の
後は今回の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます