第4位・フルポン・村上健志さんの俳句について 題「月」

次に、4位に選ばれた、

永世名人のフルーツポンチ・村上健志さんの俳句を見てみましょう。


良夜かな香典返しの茶漬け食ふ


さすがに、永世名人ですね。

これはこれで、十分にいい句だと思います。

夏井先生も「直しはいらない」と仰っていました。

ただ、「香典返し」とあるので、

これは人の死を主題にした俳句なのでしょうから、

「良夜」という秋の季語の「良」の文字が、

この場合ふさわしくないようにも思えます。

ですから、次のような添削例を考えてみました。


A 香典の茶漬けを食つてゐたら月

B 香典の茶漬け一気に食へば月

C 香典の茶漬けを食へば蒼い月

D 香典の茶漬け啜つてゐたら月  

E 香典の茶漬け啜れば月明かり

F 香典の茶漬け啜れば蒼い月


※ 原作が旧仮名遣いですので、添削例も旧仮名遣いにしました。


この俳句は、「香典返し」よりも「香典」のほうが、

葬儀が行われたその日という臨場感が出ると思います。

また、やはり最後に季語の「月」が出てくるほうが、

葬儀から帰宅して、一人でお茶漬けを食べている、

もの悲しさやもの寂しさが、一層際立ち、

1句全体を引き締める効果があるのではないでしょうか。

そして、月明かりが、この俳句の主人公の揺れる感情を

優しく包み込んでくれるように感じられるのではないでしょうか。


第2章は、以上です。


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