第7話 部活の勧誘


 いつも通り、クラスで吹奏楽部の演奏を聴いていると、秋山が入ってきた。


「し、東雲、おはよ」

「おはよ」

「なんでいつもこんなに早いの?」

「吹奏楽部の演奏を聴くためだよ」


 秋山は耳を澄ませて、吹奏楽部の演奏を聴き始めた。


「いい演奏だね」

「そうだね。本当に心が和む」


 俺の席の後ろが秋山の席であるため、二人で雑談をしながら演奏を聴く。


「もっと早く教えてくれればよかったのに」

「いやねぇ。朝早く来たら吹奏楽部の演奏が聴けるよって言われたところで来ますか?」

「こ、来ないかも」

「だろ~」


 実際、俺も演奏を聴くまで来ようと思わなかったわけだし。


 その後も二人で演奏を聴いていると、一人の女性が中へ入ってくる。


「君たち、部活入っている?」


 俺と秋山は顔を合わせてながら首をかしげる。


「俺は入っていませんけど」

「私も」

「なら、私の所属している部活に入らない?」

「「……」」


 俺たちが無言になっていると、女性がこちらへ近寄ってきた。


「私、三年の近藤恵美。写真部の部長をしています」

「一年の東雲大輝です」

「秋山千冬です」

「あ~、あなたが秋山さんなのね」


 その言葉を聞いた瞬間、少しだけ俺の血相が変わった。それに察知したかのように、近藤先輩が言う。


「違う違う。別に噂は噂でしょ。私、あまり信じない派だから」

「そ、そうなのですね」

「うん。それで写真部に入らない?」

「え~と。あまり入る気はありません」


 すると、近藤先輩は首を頷かせながら言う。


「それはなんでかな?」

「やっぱり時間がかかりますし、お金もかかりますもん」

「お金の面は大丈夫だよ。カメラは部内のものを使ってもらっていい」

「ですけど、写真部ってことはどこかへ行くってことですよね?」


 俺の言葉に、近藤先輩は驚いた表情をした。


「そこまで見えているんだね」

「まあ、聞いた時からお金がかかりそうな部だなって思ったので」

「だけどね、それは青春の一つなんじゃないかな?」


 近藤先輩が言ったのに対し、俺と秋山は目を合わせた。


(青春……)


「私は良いと思うよ」

「やった!! 彼氏くんは?」


 その言葉に秋山は顔を赤くする。


「いや、彼氏じゃありません。秋山に失礼ですよ」

「ごめんごめん。それでどうかな?」

「う~ん」


 秋山が入るなら入ってもいいけど、時間がなぁ……。


「じゃあさ、放課後に部室へ来てよ。そこで決めて!!」

「わ、分かりました」

「言質、取ったからね」

 

 近藤先輩はそう言って、この場を後にした。


「な、なんかすごい人だったね」

「うん」


 まあ、高一の五月。部活に入っていない人の方が珍しい。何が何でも入ってほしい理由があるんだろうなぁ。


 そこまで考えると、少し憂鬱になる。だって、部活に入ってほしい理由があるってことは、人が集まっていないってこと。


 つまり、写真部には何かしらの欠点があるのかもしれない。



「秋山は前向きなの?」

「う~ん。東雲次第?」

「え?」

「別に一人で入るつもりはないかな? でも、部活の一環としてどこかへ行けるっていうのは魅力的だなって思ってさ。東雲に教えたい青春の一つになるかもだし」

「あ~ね」


(一理ある)


「まあ、放課後になって考えよっか」

「うん!!」


 そして放課後になると、近藤先輩が教室へやってきた。



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