第10話 幕間 王とはいえど所詮は

絶対的な者

世界で5人しかいない魔術でもない異能を持つ者


1000年以上前に女神から与えられた力

かつて人びとは邪神と存亡をかけた争いをしていた。人々のため女神と女神に選ばれた勇者が立上り、そして女神から異能を授かった5人の人間により邪神は封印された


これはこの世界を生きている人間なら誰もが知るお伽話だ

その後、女神と勇者は姿を消し、5人はそれぞれ散りそこで国を起こした。それが五国の成り立ちと言われている。


1000年以上どの国も王が途切れることがなかった。それは前王の死後、残った王族の血筋の者から必ず力が継承されるからだ。

だから王を殺して、成り上がろうとする者も他国を滅ぼそうとする国もなかった筈だった


そう16年前のあの惨劇を除いては


16年前祖父が死んだことで俺に力が継承された。そのことにさしたる感情はなかった、それにより友を失った事、いや正確には友を自らで命を狙う指示をしなければいけないことのほうがよほど感情が動いた


若い頃私には3人の友がおり、学院で共に勉学に励んだ


一人は田舎から出てきた寡黙だが、真摯に勉学に励む者

一人は教授の一人娘で圧倒的な才を持っていたもの

そしてもう一人が隣国の王子ではるばる魔術を学ぶためだけに留学してきた変わり者


この3人は私にとってはかけがえのないものだ、例え袂を分けた今でもそれは変わらない

それなのに皆が亡くなった時には葬式にさえ、行くことがなかった。最も一人を除いては式を挙げられるような死に方でなかったのだからと当然かもしれないが


私は王城に引きこもる、それさえしておけばいいのだ。私が存在しているだけで他国に対しての抑止力になるし、偶に気まぐれに民の前で力を使えば皆その力に畏敬の念を抱くそれだけで私に異を唱える物など誰もいない


戦争が嘘のような平和すぎるこの国で私がすべきことは亡き友の意志を継ぐこと

それに気づいたのは数年前に最後の友の死を聞いて悲しみに打ちひしがれていた時に来たある報せによってだ


それによると友たちにはそれぞれ意志を継ぐ者がいるらしいという事。そこに確たる証拠はなかったがその報せには私と友しか知るはずのない内容が含まれていたので信憑性があっただから私は尽力を惜しまなかった

国のためにではなく、友のために皆を動かす。尤もらしい理由を添えてやれば、誰も私に意見しない

と言ってもこの国の不利益になることはしたくない、こんなどうしょうもない私を王と呼んでくれる民を裏切りたくもないからだ


この2つの思いに挟まれて今日も王城に引きこもり研究をする。その内現れるだろう友の意志を継ぐ者達のために


それが私に出来る唯一の償いであり、この国を生きる者のためにとっても有益であるはずだ。私個人の幸せなどとうに求めてはいない私がすべきことは国のため、世界のためそれが今の私の全てだった


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