第8話 調査任務3

村に着いた私達は御者に礼を行って、村の酒場へと向かう。時間は昼食には少し遅い時間となっていた。

村の様子はというとのどかな農村といった様子で、日中は畑仕事をしているようだ。

酒場へと向かうと昼間でも開いているらしいが、私達以外の客はいない様子だった。

そこでは酒場の亭主に話を聞いたが、街で聞いた話しか聞けなかった。それに加えて山賊のことについて聞く私達を不信に思っているようだった。その違和感から絶品と聞いていたスープを楽しむことが出来なかった。

そこからさっさと昼食を済ませて、二手に別れて村の様子を見て回ることになった。

私とテオ、ヨランダさんとマティアスさんで別れることになり、酒場を出てすぐに別れた。


しばらく歩いているても、わかることは賊が近くにいると思えないほど平和な村という印象しかなかった。とりわけ変というほどでもないが、村の男の人は体格がしっかりした人が多い印象を受けた。


「どう思う」

テオが尋ねてくる。私は思っていることをそのまま言うと

「だよな、俺もそう思う。だからおかしい気がするんだ」

「どういうこと」

「街の方もそうだけど、山賊が側にいるっていうのにまるで警戒していない。いくら被害がないからって言ってもさすがに。お前はどう思う」

テオは私ではわかるはずのないことを尋ねてくる。彼はたまに私に対して何か試すような言動をする。これは私がこれからやっていけるか確かめるためのことかもしれないが、何か気づいているなら素直に教えてほしいと思うのはわがままなのだろうかと思いながらも必死に頭を捻ってみてもろくな物が出てこないが、とりあえず答えて見ることにする

「例えば山賊がいることに慣れたとかかな」

自分でも変なことを言ったことは分かっている

「慣れているなら尚更対策はしっかりするだろ」

「えっと、良い山賊さんだからとか」

「なんで、いい奴が人のいない山に住むんだよ。村や街に住めばいいじゃないか」

とどう答えたらいいか困っていると

「こんにちは、お兄さんたちは外から来た人なの」

と後ろから声をかけられたので、後ろを向くとそこには少女が立っていた。少女といっても私とそう年は変わらない、少し下くらいだろうか。何より目を引いたのは、少女の美しさだ。金髪碧眼で農作業などしたことがなさそうなか細い手足、農村ではなくどこかのお屋敷にいそうな人形のような姿だ。それに見惚れているとテオが

「そうだよ。人探しに来たんだ」

「そうなんだ、誰を探しているの。案内してあげる」

少女は友好的だが、テオは怪訝そうに尋ねる

「君はこの村の子なのか」

「当たり前じゃない、こんな村に頻繁に人が出入りしているように思えるの」

と少女が可笑しそうに答える。なんだかおかしな光景に意を決して

「ありがとう、今日来たばかりで困っていたの」

「お姉さん、お名前は」

「私はフェリシアっていうの、あなたは」

「ロゼッタ」

「お姉さんはいくつなの」

「16歳だけど」

「どこから来たの、街からではないんでしょ」

「どうしてそんなことがわかるの」

「何となくね、それより誰を探しているの」

と尋ねられたので、答えていいのかと確認するためテオに目をやると頷かれたので正直に答えることにした

「オルゲンさんって人なんだけど、知らないかな」

「知ってるわ、おじいちゃんのことだもの」

以外にもあっけなく、探し人が見つかったことさらにこの少女の祖父だと言うのことに唖然としていると

「どこにいるんだ」

とテオが尋ねるも少女は答えなかった。沈黙に絶えられず

「教えてもらえないかな」

「いいわ、付いて来て」

と私が聞くとすんなり応じてくれた。先程のテオの態度が悪かったのかもしれない。

私達はロゼッタに付いて行くことにした

道中は少女に色々なことを聞かれた。どこから来たのか、普段何をしているのか、故郷はどこなのか、どれも当たり障りのないことだったが、両親について聞かれた時にはさすがに少し困った。特に気にはしていないが初対面の人に教えていいものかと悩んでいると少女の真っ直ぐな瞳に黙っていられず、二人とも亡くなっていることを伝えると

「そうなの変なこと聞いてごめんなさい」

「お母さんはいつ亡くなったの」

驚いて声が出なかった。聞かれた内容もそうだが、幼気に感じていた彼女の表情がとても大人びて見えたからだ。すぐに返答出来ずにいるとテオが

「フェリシアを生んだときにだよ」

と言い少女を睨んだ。それに少女は意に返していない様子で

「私と同じだったからついごめんなさい。嫌だった」

という少女の表情には、先程の大人びた様子はなかった。とりあえず何か答える

「大丈夫だよ、えっと、あなたもご両親がいないんだね」

「いないわけじゃないよ、あ母さんはずっと遠くにいるだけ」

少女の言葉になんて答えたらいいか分からなかった。テオが痺れを切らした口調で言う

「お祖父さんはどこにいるんだ」

その問に少女は答える

「今日はもう会えないわ。明日また会いましょう、その時にはおじいさんもいるから」

と言い終わる少女はなぜか少し得意気な顔をしているような気がした

「どういうことなの」

と尋ねると少女はちょうど私達の前にある家を指さして

「この家誰も住んでいないから、好きにしていいよ。明日の朝迎えに来るから」

と見当違いな回答に思考が止まると、少女は私の手を握って

「今日はありがとう。会えて嬉しかったわ」

「こちらこそ」

と理由もわからず返すと、少女は満足そうに山の方に行くのをただ見送っていた。釈然としない気持ちをテオにぶつけてしまう

「なんだったの」

「とりあえず手がかりと宿が手に入ったんだ。明日の朝迎えに来てくれるっていうんだから素直に待とう」

と彼は以外にも少女の言う通りするようで、家の扉を開けて様子を伺う。

考えても同仕様もなかったので、彼の言う通りにすることにした。その後他の二人と合流することにした。

二人は村の人に聞き込みをしたそうだが、特に目ぼしい情報はなく山賊はいるが、被害は何もないとのことでやはり酒場の亭主と同じで山賊の話をすると全員様子が変わるとのことだった

その二人に少女のことを話すと

「何言ってんだお前ら。魔物にでも化かされたか。テオもお前がいながら何してんだよ。どうせその子に揶揄われただけに決まってるじゃん」

とマティアスが呆れた様子で切り捨てられた。確かにこの村に美しい少女がいて、斧男のオルゲンに繋がっているなんて変な話だ。でも本当なんだから仕方ないので必死に弁明するとヨランダさんも

「まぁ特に手がかりもないことだし、今日はこのまま夕食にして休みましょ。明日の朝になれば本当のことがわかるわ」

と信じていない様子で納得はいかないが、移動続きで疲れもあったのでそれ以上何も言う気が起きなかった。テオも同じようで特に何も言わなかった。

4人で夕食のため、酒場に行きその場で他の客にも念のため話を聞いたが新しい情報はなかった。

夕食を早々に終えて、例の家に向かう。中の様子は空き家と言っては整えられていて、寝るだけなら十分な様子だった。それを不思議に思っているとテオが宿屋代わりに普段から使っているのだろうと言うのでそういうものだろうかと思い、明日に備えて休むことにした。


翌朝、全員が早くに支度を終えていた。朝食に昨日、酒場でもらったパンを食べていると窓からバイアーが入って来た。その様子に二人はまた驚いているようだが、昨日ほどではなかった。朝食を終えるとバイアーは俺の肩に止まるので今日は一緒にいる予定のようだ

そうして過ごしていると扉からノックの音が聞こえてきた。フェリシアがはいと答えると

「フェリシアさん、来たよ」

とロゼッタという少女であろう声が聞こえたので、扉を開ける。そこには本当に昨日と同じ姿で立っていた。

「おはよう、ロゼッタちゃん。朝からありがとう」

とフェリシアが話しかけると彼女も挨拶を返して、他の2人にも挨拶をして自己紹介をした。

二人はマティアスが言ったかのように魔物に化かせれているような様子だったが、声を掛けて正気に戻す。ロゼッタがフェリシアとマティアスと話している隙に俺とヨランダは出発する前に剣を荷物から取り出し腰に付け、外套を身につける。

ロゼッタの案内に付いて行く道中、ロゼッタとフェリシアが前を歩き、他が後ろを歩くという構図となった。

ロゼッタは楽しそうにフェリシアに話しかけていた。当然のことだが俺たちとの態度の違いに何とも言えない気持ちになった


そんな様子とは別に俺を挟んで歩いている二人が

「これって大丈夫なの」

「これ怪しいやつだろ、いいのか着いてって」

と前の二人には聞こえないように小声で抗議と説明を求めてくる

「案内してくれるって、言うんだから素直に従えばいいだろ。他に宛があるわけでもないし、少なくともこいつは他の村人とは違う気がする」

と言うと納得はしていないだろうが二人も黙ったので、とりあえずは少女に付いて行くことになった。


少女に連れられて来たのは、村のはずれにある山の前で獣道が続いているようだった

「この先だよ」

無邪気に言うロゼッタとは反対に俺達の空気が強張る。適当な質問をして情報を引き出そうとする

「おじいさんは狩人なのか」

「違うよ。山の上に家があるの、普段は畑仕事でこっちに来てるんだけど。今日はみんなが来るから家にいるんだって」

その緊張を緩めずないでいるとロゼッタは俺とヨランダを見て

「その方がいいかも、山の中は何があるからわからないし」

と言って、獣道を歩いていく。俺たちは事前に打ち合わせしていた通り、俺、マティアス、フェリシア、ヨランダの順番で少し離れて付いて行く。

こちらの警戒を察してか、ロゼッタは口を開くことはなかった。しばらく歩いていると不意に


「ロゼッタに何してんだ、このよそ者が」

と見当違いなことを叫びながら、黒髪の少年が自分たちの先に現れた。ロゼッタと同じくらい年頃で、両手に剣をかまえて突進してくる。

すかさずこちらも剣をかまえる。

二刀の少年はロゼッタを無視し、俺の方に斬りかかる。右、左の順番で剣を振る、それに合わせて初撃は弾き、二撃目は後ろに避ける。避けきれなていなかったようで外套が軽く切られた。

マティアスに目配せをした後、今度はこちらから斬りかかる。

マティアスは意味を察した様で空中で指を動かす。マティアスを視界に入れないように意識しながら、剣を振る。何度か打ち合いをしてわかったが、こいつは強い。まさかこれほどとはとつい笑みが溢れているのに気き、顔を引き締める。相手も勝負を楽しみだしたのか、表情に笑みを浮かべる。その時

「テオ」

という声が響き、その声に合わせるかのように横に飛ぶ。その時マティアスの正面に魔法陣が出来ており、そこから空気の弾丸が打たれる。

相手の少年は俺に集中していたようで、反応が遅れてしまい、空気の弾丸に吹き飛ばされた。

しばらく少年は痛みに悶えていた。ロゼッタは少年に駆け寄り言う

「邪魔しないで、アロイス」

心配ではなく、注意するかのように声をかけた

アロイスと呼ばた少年はその言葉を聞いて、立ち上がる

「でも、こいつらよそ者だろ。どうせお前とじいちゃんを」

「やめて」

2度目の大声による静止に少年はたじろいでいた。それでも俺たちのへの敵意を向けて、地面に落ちた剣を取る。それを見てこちらも構えようとするが、少年の後ろに熊のような大柄の男が現れた。それに驚いた俺達の動きは止まり、少年はそれに気づかずまた俺達の方に剣を向けたとき大柄の男の拳が少年の頭に降りた。

「チビスケ、俺の客に何しやがる」



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