第6話 調査任務1

調査するにあたって、斧男を見たという物も場所分からず、まともな手がかりは使用人のジャンしかない当然そこから辿るしかない


ジャンは王城に仕えているよく王城からの用向きで騎士団にもよく足を運ぶ

人好きのする性格で彼と親しい騎士も多い、ガスパール隊長もその一人で噂話を聞いたのもそのためだそうだ


全員が彼の顔を知っているので探すのは難しくない

この日も丁度、騎士団に来ていることがすぐにわかったので、彼の用が終わるのを待っていると


「やー調査隊の皆さんお揃いで、どうしたんですか。私に何か御用でしょうか」

とにこやかによく通る声で言った


遠目で見たことはあるが、近くで見ると快活としていた好青年といった感じだ

年は向こうの方が上でおそらく20前後だろう


そんな好青年に周りに気をやってヨランダが

「ちょっと斧男の噂の件で聞きたいことがあるんだけど」

というとすぐにこちらの要件を理解したようで

では少し場所を変えましょうと言って移動する


彼に事情を話すと

「申しわけないのですが、その話についてあまり詳しくはないんです。なんせ人伝に聞いた話なので」

と言われ、ヨランダは見るからに落胆していると


「何でもいいからなにかないの」

とマティアスが縋るように聞くと

それに何とか答えようするようにジャンが頭を捻る

「御力になりたいのですが、私が知っているのはその斧男を見たという人がいる村の名前くらいで、それより詳しい話となると行商の方にお聞きしないといけたせん。それも次来られるのは3日後の予定なので」


と続ける彼に今まで黙っていたフェリシアが急に緊張した顔で

「なんですか」

と少し大きな声で問いかける

それに少し驚いた様子のジャンは

「3日後と申しました。今から予定を早めることはできないんですよ」


「そうじゃなくて村の名前」

「モンタグ村ですよ」


それを聞いて驚いている俺たちに今まで一番申し訳なさそうな顔で


「ガスパール様には既にお伝えしていたのですが」

と言い

「何だよそれ」

「隊長に聞いたことあるのだけど、ガスパール隊長って剣や戦術はすごいけど、人の話をちゃんと聞いていない悪癖があるって、まさかここまでとは」

と各々嘆いていると


「それでその村については何か知ってることはあるのか」

と尋ねると

「そうですね。関所から見て南西に位置している村で、近年の関所の増員によって、数年前より村人の数は増えたそうです。よくある農村といったところでしょうか。あと確か村に酒場が一軒あったはずです。そこのスープが絶品なんだとか。もし村で調査されるならまずはそこに行かれるのがよいかと」

「詳しい、凄いな」

と少し大きな独り言でフェリシアが呟く


「恐れ入ります。人と話すことが好きなもので、自然と知識が増えるんですよ」

と独り言でに反応されたことに驚いてビクッとフェリシアが震えた

それに苦笑いしてヨランダが

「ありがとう。ジャンさんお仕事中にごめんなさいね。あとこのことは」

「ご内密にですよね。存じております。私もガスパール様以外にはお伝えしておりません」

と挨拶を交わして別れる


モンタグ村を目指すことになった

まずその村に行くまでに関所がある街に行く必要がある馬車の定期便があるのでそこまで行くのにはさしたる問題はない。その街で馬車を手配する必要がある。そこもガスパールからもらった軍資金があるので何とかなるだろう。モンタグ村までは乗り換えを含めて移動で一日以上かかるので、明日の早朝出発することになった。


一応隊長に報告終えて少し早いが今日は解散となった

帰りしなにヨランダから

「テオくん、明日はいつもより早いんだから絶対に遅刻しちゃだめよ。わかってるわね」

と釘をさされたが、フェリシアなら大丈夫だろうと今日も机に向かう





明日は調査任務が本格的に始まる

今日もほとんど何も出来なかったし、

テオに早く追いつけるように今回こそは頑張らないと

村にいるときは気付かなかったが、自分は相当人見知りする性格らしい。思えば小さな村で生まれたときから皆知り合いだったから初めて村以外の人と話すのはテオが初めてだった。始めはどうやって声をかけるかわからなかったが、彼が使う綺麗な魔法を見せてくれて以降、自分から話しかけに行って、何とか打ち解けることが出来た。

文官の試験でもまともに話せず面接で落ちてしまうし、部隊内でもまともに話せるのは、話しかけてくれるヨランダさんくらいだ

魔術のおかげで何とか騎士団には居られるけど、あんまり役に立ててない

テオは才能があるって褒めてくれるけど、術式の演算がうまくいかず、よく暴発してしまい、まともにあつかえない。それに一度みんなの前で魔術を見せて以降、マティアスさんは魔術の話題になると顔が怖くなるので部隊内で魔術の話をすることすら難しい


だめだと弱気になっている自分戒めて、床について目をつぶる。明日こそは頑張るぞと気合を入れながら



次の日

いつもと同じ時間に目を覚ます。睡眠もしっかりとれているみたいだ


身だしなみを整えて

朝食の支度をして、今日は二人分を簡単に包み、荷物と一緒に持って出る

そしてテオの部屋の前に立ってノックをする

すると返事が帰ってくるので、扉を開くとそこには身支度を終えているテオがいた


テオは基本的に朝に弱いが、大切な日にはちゃんと起きる。例えば王都に行くかの話し合いの日や王都に出発する日など他にも私や他の家族の誕生日なんかも普通に起きてくる

出来るのなら自分で起きればいいと思うが、朝に彼と会う口実が無くなってしまうので当分は黙っていようと思う


「どうした」

懐疑そうな顔をしてテオが私に言うので、慌てて何でもないと言って朝食を机の上に広げる


広げ終わるとビアちゃんと目があったので、挨拶をして頭を撫でた。彼はこれをどう感じているかわからないが、何もせずにじっとしているので許されている気がしてついいつもしてしまう。


「早く食べよう、今日も遅刻するぞ」

となかなか一体誰のせいでいつも私達が遅刻しているのか分かっているのだろうかという抗議をしたとしても彼に口で勝つことは出来ないので、彼の言葉に素直に従うことにした。テオはベッドに腰掛けて私が持ってきたパンを食べていた。

私も椅子に急いで座る


「今回の調査ってどれくらいかかるのかな」

「さぁどうだろう、内容があれだと早く終わっても面倒なことになりそうだしな

まぁ何日も山の中を捜索なんてことになっても嫌だけど」

「私はそっちの方が安全そうでいいな」

「ガスパールのことだから本当に周辺を虱潰しに調べるまで絶対に納得しないぞ」

「もう、隊長さんだよ」


朝食を終えると早々に部屋を出て、馬車の乗り合い所に向かう。ビアちゃんは今はいないが気づくといつもテオの側にいるので、今回も調査にまで着いてくるかもしれない。

乗り合い所に着くと既にヨランダさんとマティアスさんがいた。私達を見つけると


「あら、今日はちゃんと来たじゃない。フェリシアちゃんご苦労様」

と労いの言葉が来たが今日は違うので

「あの、今日はテオはちょんと起きたんです」

と否定したら

「フェリシアちゃんは優しいわね」

と想定していない返答が来た。どうやら私がテオを庇ったと思われたみたいだ

それをどう訂正すべきか考えている横で

「なんだテオ、一人で起きられるなら毎日起こしてもらう必要ないじゃないか。それともわざと寝過ゴッ」

と言い終わる前にテオがマティアスさんの額に手刀をした

「マティアス、うるさい。今日はたまたまだよ」

「なにするんだテオ、僕は先輩だぞ」

「マティアス先輩、うるさいのでだまりやがれ下さい」

「何おー」

などとじゃれている。この二人はなんだかんだいって仲が良い。マティアスさんはテオに張り合うような行動をするが、テオも満更じゃないようだ

「はいはいフザケてないで、各自出発前に荷物の確認でもしてなさい。今回は何日かかるかわからないんだから」

とヨランダさんが割って入ってたしなめる

場所の出発までの間それぞれ好きに過ごす

荷物の確認が終わって馬車の馬に挨拶をして撫でる。すんなりと抵抗せずに撫でさせてくれる。人間相手にもこういけばいいのにと少し反省しているとテオが近づいてきて


「何か楽しそうだな」

「そうかな、でも皆で何処かに行くのは旅行みたいってちょっと思ってるかな」

「今はいいけど、向こうについたら少しは警戒しろよ。ないとは思うが、本当に危険なことになるかもしれないし」

「うん、そうだね。今回こそは頑張らないと行けないしね」

「いや、お前はいつも頑張ってるだろ」

とテオは少し不思議そうな顔をして励ましてくれた。少ししたら御者さんがやって来て話しかけられた

「お嬢ちゃん凄いね、こいつ普段は大人しいんだけど他人に触られるのが嫌で俺以外近づかせやしないのに」

「いや、そんなことないです」

「いやいや、ホントに凄いよ。こんなに気持ち良さそうにしているコイツを見たのは始めてだ」

と何て返したらいいか困っていると

「コイツの家、酪農家だからそのせいかも、昔から動物には好かれるんだよ」

とテオが代わりに話してくれて無事会話が終わり、みんなのところに戻る


いよいよ出発となる。定期便は他にもお客がいるので、あまり大きな声で話していいか悩んでしまう。時間も長いのでそれぞれ好きに過ごす。テオとマティアスさんは本を呼んでいる。正面のマティアスさんは何の本かわからないが、テオは魔術書を呼んでいるみたいだ。テオは本当に勉強熱心だ。ヨランダさんは地図を見ているようだ、おそらくこれからの予定を確認しているようだ。私も本でも呼もうかと考えている内に瞼が重くなり、うとうとしていると隣にいるテオが寝ててもいいと言われたのでそれに甘えて少しだけ目を瞑る


目を覚ますと頭をテオの肩に預けていたようだった。日が昇りきっているのを見るに数時間がたっていることに気づいた。慌てて

「ごめんね」

と小声であやまるとテオは

「別にいいよ。俺も少し寝てたし」

と言われ周りを見るとマティアスさん含めて多くの客が瞼を閉じていた。ヨランダさんに目をやるとなぜか上機嫌にこちらを見ていたので、どのような顔をしていいか分からなかったので、ぎこちないであろうが私も笑って返した。

残りの時間は本を呼んですごした。程なくして関所のある街についた。時間はお昼をとうに超えていた。馬車の中で軽食を食べたのであまり空腹を感じないが、長時間座っていたことから、体が痛いので流石に休みたくなった

それは全員同じなようで速やかに宿とモンタグ村までの馬車の手配をして夕食まで解散となった。

しばらくして夕食の席で今後の方針について話た。

馬車は明日のお昼前にに手配したこと

午前中はこのまちで情報収集

モンタグ村には宿屋はないが、酒場の2階や空き家に泊まれるかもしれないこと

日が暮れるまでに到着する予定なので、そこから酒場行きまずはそこで情報収集をすること

そして馬車が今回思いのほか安く済んだので夕食は豪勢にするとヨランダさんはお酒を頼みながら言った

好きな物を頼んでいいと言われたので、それぞれ好きに注文をする。特に上機嫌で不思議にに思っているとマティアスさんから馬車の御者相手に値引き交渉をして、結構な手腕を見せたことを教えてもらった。あと日頃のストレスあるんだろうからそっとしてやろうと言うマティアスさんに言われたので従うと凄い勢いでお酒が進む。次第には顔が真っ赤になってきたので流石にと思い

「ヨランダさん、あの、そろそろやめたほうが明日に障りますよ」

と言った瞬間みんなの動きは止まった。マティアスさんは哀れむように私を見ていて、ヨランダさんは涙ぐんでこちらを見ていた

「フェリシアちゃん、私のことを心配してくるの。優しいのね。こんなに人に優しくしてもらったのはいつぶりかしら。いつも上は仕事押し付けてくるし、下は文句ばっかで辞めるやつもいるし、私どうしたら良いのか分からないの、だから、フェリシアちゃんがいてくれて嬉しいわ」

と凄い勢いで言われて半分以上何を言っているか理解出来なかった。マティアスさんがなぜ私を哀れんだような顔したのか理解して、助けを求めるために見ると見つからないようにこっそりと立ち去ろうとしていたのでついとっさにマティアスさんと叫んでしまった。その時の彼の絶望した顔にこの後のことがさらに不安になった

ちなみにテオの姿はもう既になかった。

それをヨランダ見つけると

「こらマティアス君何勝手してるの。席に着きなさい。お前もフェリシアちゃんみたいに私を優しく慰めなさいよ」

別に慰めているわけではないが、マティアスさんは観念したように椅子に座り直すと

「マティアス君、私知っているんだからねあんた可愛い婚約者がいるんでしょ。しかも金持ちの、いいわね実家も太くて逆玉もできてあんたの人生バラ色よ。そんなことよりフェリシアちゃん昼間のアレは何。テオくんと二人で身を寄り添って寝ちゃって仕事中なのよ。わかってるの」

マティアスさんの意外な事情に驚くことも出来ず、すぐに私はまた捲し立て、しばらくしてヨランダさんは燃料が切れたかのように寝てしまった。その彼女の寝顔がとても満足そうだったことに怒る気も失せて力が抜ける。このままにするわけにはいかないので、マティアスさんと二人で宿まで運んで、私の隣のベッドに寝かせた。寝る準備をしていると隣の部屋からマティアスさんの何かを責めるような声が聞こえたが気の所為だろう。ただ一つハッキリしていることは、明日テオを起こす人は誰もいないと言うことだ

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