第16話  甘くない卵焼きは塩でしょうか(4月12日水曜日)


撤収失敗


まだ居ます


もうすぐお昼休みも終りだよ

「でもまだ仮入部だなんて。慌てて来る必要無かったじゃない。 返してよ、私の貴重なお昼休みを」


「本気でそう思う人が、わざわざ人のクラスで居座り続けないと思うけど」

そんな僕達のやり取りを隣で見ていた高橋さんが、恐る恐る彼女に声を掛けた。


「ごめんなさい。私が無理やり演劇部に誘ったんです」

「あら仮でしょ」

「あ、そうでした。仮です」


うわぁー面倒臭い。


「どうしても入ると言うなら1つ条件をつけるわ」

そしてなんか偉そうだよ


「と言うと?」

「その部に私も入るってことよ。帰るまで時間が潰せて、荷物持ちも確保できるのよ。我ながら名案ね」


最後の荷物持ちが本音ですね。


「でもそうね。ゆーくんが演劇部に正式に入りたいなら、私は止めないわよ。ゆーくんがどうしてもと言うなら私は拒まないわ。でもそうね最初は女の子が良いわ」


僕もそう思います

でもアウトです


みんなの僕を見る目がスベチナだった。

えっ、冷たくない。友達だよね、僕ら!


「膝枕の事だよ!ひざまくら!」


「じゃあまたね」彼女はそう言うとあっさりとクラスに帰っていった。


キーンコーンカーンコーン

始業チャイムが鳴る中、後には膝枕を叫ぶ男と、おかずのないお弁当だけが残った。


秒で食べ切った僕えらいよね!


卵焼きがあと2切れ多かったらアウトだった。


午後の授業が始まる中、僕はその原因を思い出し、そっとため息を付いた。


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