第9話 彼が冷たい理由 元カノside②(4月10日月曜日夕)
もうしばらく続きます
放課後
私は教室に残り、友達2人とダラダラおしゃべりをしていた。
その時気が緩んでいたのか、私はついうっかり彼氏の
「彼氏が最近冷たい?」
「うん。なんだか妙にそっけないというか、距離感があるというか・・」
「気のせいじゃない?」
「あたしはそんなに親しくないからよくわかんないなー」
「でも何かやったんだったら、とっとと謝んなよ。」
「いやなんでわたしが悪い前提!ひどすぎない!」
「でもあいつが悪いとこ見つからないよ。」
そんな事知ってる
「ひょっとして怒らせたとか?」
「どうかな」
あたしは彼とのやり取りで、怪しそうな事柄を思い返す。
「はい1つ目!」
「うーんと、そうだ日曜に朝から気持ちよさそうに寝ていたので、わーいって布団の上からボディープレス! まあこれはご褒美だよねぇ・・」
「おい女子高生!朝からお盛んだな・・はい次!」
「みんなで外食した時、ゆーくんが最後まで大事に取っていた苺を残してたの。でも食べ物を残すなんて駄目だよーって、涙目の彼を見ながらおいしーって食べたことかな?」
「鬼がいる!この教室に女子高生の格好した鬼が!」
「じゃ次ね!」
「・・・まだあるのかよ」
「次が最後!実はゆーくんの誕生日にプレゼント買うの忘れた時があってね・・」
「どんだけやらかしたんだよ!彼女だよね!」
その時はまだ彼女じゃなかったよ?
「私のお気に入りの服をプレゼントしたの! 小さくなって着られなくなったからゆーくんならちょうどぴったりだと思って。 そしたらホントぴったりだった。 白い肌に漆黒のゴスロリドレス。 ごくり・・・似合いすぎて鼻血出そうだったわ。もちろん全力で写真を撮ったわよ! 当然保存容量いっぱいにね!」
「それでよく告白したよ!」
「正直可愛すぎたわ~」
「いや彼氏可哀想すぎ」
「実はその時の動画もあるのよ」
「あ。それは欲しいかも」
もじもじと顔を赤くする友人
「いや、あげないから!」
「ううっ・・・そんなに警戒しなくても」
結局、私の話を聞いてわかった事というと
なんで私なんかの告白を受けたかという点に落ち着いた。・・・もう友達やめようかな。
「あとは彼の博愛精神ね」
「私との交際は慈善事業!」
友達は腕組みしながら
「だめだこりゃ」
と呟いた。
*
そんなたわいもに話をしていた時不意に。
本当に不意に思い出した。
彼の様子がおかしくなった日。
その日無意識に除外していた事を。
記憶の鍵が外れた音がした。
かちゃて。
確かに聞こえた。
そして私の顔から血の気が失せた。
*
あの日。入学式前日。
高校で使う文具類を買いに私たちはショッピングセンターまで来ていた。
買い物が済んだのですぐ帰ろうと思ったけど、何やら用事があるとゆーくんは残った。
「じゃあ帰るね」
そう言って、私はゆーくんと別れた。
出口付近に来た時、不意に見知った人が現れた。
田中雄一。
ゆうくんのお兄さんであり、私の幼馴染で、初恋の人だ。
小学校の卒業式に告白して見事玉砕したんだ。
「あれ、優子ちゃん?」
「こんにちは。いつこっち帰ってきたんですか?」
「ちょっと用事があってね。昨夜きたんだ」
振られた身としては二人っきりで会うと妙な感じがする。
「彼女さんも同じ大学でしたね。」
お兄さんと彼女の交際は秘密。
言えば両親と大喧嘩になること必須とか。
「今はまだ言えないけど、必ず認めてもらえるように頑張るから」
「はい、応援してます!」
久しぶりに見たお兄さんは少し疲れたようだった。
「それじゃ頑張るお兄さんに、わたしが夕食をごちそうします!」
そう言って無理やりお兄さんの手を握りフードコートへと引っ張ってゆく。
「そんなの悪いよ」
「あはは大丈夫。彼女さんには秘密にしてあげます! でもあんまり高いのは無理ですよ。千円以内です!予算厳守です!」
私はそう言いながら、お兄さんを少しでも元気づけようとした。
そしてお兄さんを半ば引きずるようにして、フードコートへと向かった。
*
よし回想終了!
うん大丈夫!やましいことはなんにもない!・・・はず。
全部正直に話して謝ろう
ギリセーフだよね!
腕を掴んだだけだし、あと手も握ったかも
本当にそれ以上は何もなかった。
多分だけど、あの日のことを見られたと考えるべきだ。
客観的に見てどう映るかと言うと
まず自分の彼女が別の男と楽しそうに手を繋いで歩いていた。
それを遠くから悲しく見つめるゆーくん。・・・あ
待って待って待って!
うわーこれはやらかしたかもしれない。
悪女だよ!ひどい!男二人天秤にかけている悪女だ。
ラノベで言うところのNTRでざまあだ。
しばらく呆然としてた。
・・・どうしましょう
「おーい帰ってこーい」
ポンポンて私の頭をつつく佳奈にばって顔を上げて驚かれた。
成程、当事者になると案外罪悪感もなくやらかしてしまうのか。
迂闊であった。
けどあたしはこんな事で駄目になる程やわじゃない。
たとえゆーちゃんに嫌われても
たとえ捨てられても
何度でも拾ってもらうんだから!
負けヒロインなんかにならないぞー
「まずは作戦会議しなくちゃ。みんな知恵を貸して!」
「おっ、やっと戻って来た」
失恋して泣いていた私の癇癪に最後まで付き合ってくれた優しい子。
ふさぎ込むあたしなんとか立ち直れた。
ゆーくんのおかげだ。
そして告白した。
今ようやく自分が受け入れられたって。
だからっておろそかにしていいわけじゃない。
釣った魚だって油断すればバケツから這い出て逃げる御時世だ。
あたしは自分に活を入れるべく、パスタをかきこみながら誓った。
「待ってなさいゆーちゃん!
きみのその思い込んだが一直線の思い、私が矯正してあげる。
そしてざまあ回避するんだから!」
だからそれまでまっててね!
ゆーちゃん。
*
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