第8話  彼が冷たい理由 元カノside①(4月7日金曜日夕)

少し遡ります



入学式当日。

自宅に帰った私は、ゆーちゃんから連絡まだかなーとソファーでゴロゴロしてた。


両親出張中の私はひとり暮らしを謳歌していた。

もうね、ゴロゴロ最高よ!


そうして、あたりが暗くなるまでダラダラと過ごしていた。



*


遅いなぁ

今日はいつまでたっても彼から連絡が来なかった。

ついに我慢できなくなった。


もう、しょうがないなー。今回はあたしが通話してやるか!


告白した身は辛い。

もう待てなかった。


呼び出し音が流れない


・・・あれ へんだな


おかしなメッセージが流れてる。


つながらないよ


何度も掛け直しても同じメッセージが流れた。


もう知らない

来週学校で文句言ってやる!


スマホを机に放り投げ、ベットに転がった。


「お話したいよ。ゆーくん」


疲れていた筈なのに、その日はなかなか寝付く事ができなかった。



*


翌朝


「ううっ、眠い」


結局ゆーくんからの連絡はこなかった。


寝不足気味でスマホに手を伸ばす。

うん、何にもない。


友達からの連絡に適当に返信して、手早く着替えを済ます。


こんなに長く連絡がつかないのは告白後初めての事だった。

この不安から早く逃れたくて、早めに登校することにした。


*


「ねえ、携帯繋がらないんだけど?」


登校してすぐ彼の教室に向かった。

そして怒りに任せて彼に問いただす。

私の怒りに気が付かないのか、彼はニコニコ顔でおはようって言った後、爆弾発言をした。


【携帯電話を解約した!】


なにこのパワーワード!

最近もどこかで見たよ!

ああスマホショップで最近見たわね!


そんな事を考えながら混乱した頭で問いただす。

「彼女いるのに解約ってありえないよ!」って


でも帰ってきた答えはひどく残念なものだった。


いやーうっかり落として破損しちゃった!


これじゃ使えないよね!


使えないのに契約はお金が勿体ない!


よし解約だ!


彼の思考経路が残念すぎる

そこに機種変は入ってないの?

保険とか入ってなかったの??


携帯が繋がらない理由は判明した。


予想の斜め上過ぎだからね!


あたしがそんな事を考えてるとも知らず、彼はドヤ顔だ。

どこから突っ込んだら良いのか・・・目眩がするわ。


「なら私のお古があるからそれ使って。おそろいじゃなくなって残念だけど」


「もう契約しないよ」


「はあ?」


「僕なんかが持っててもゲームするだけだし。あと時間もったいないよね。お金もかかるし」


てっきり喜んでもらえると思ったあたしの提案を、彼はやんわりと拒否した。


「それに、学校に来たらいつでも話せるよ。あといつも家で会えるでしょ」

そう言われるとそうなんだけど。・・って


「でも!夜とかお休みの日に連絡とかしたいでしょ?あたしの可愛い声が聞きたくなるよね?」


諦め悪くそう言ったけど、彼は酷く寂しそうな表情を浮かべ

「大丈夫だから」とだけ答えた。



それで話は終わった。 

終わったはずだった。


携帯がなくなったのは残念だったけど、いつでも会える。

その通りだけど私たちの関係性は微妙に変わっていったよ。


その日を境に。






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