第11話 わたしとお姉ちゃん(某月某日) side美月
今だから告白しよう
実は私にはお姉ちゃんがいる。
「いや違うよね? お兄ちゃんだよ」
「わかった、お姉ちゃん」
「もう!」
ふふふ
登校までの時間
いつものルーティン。
私にからかわれるとすぐムキになる。
そんな兄の事が私は大好きだ。
*
私には2人の兄がいる。 妹の私を入れてたら3兄弟だ。
上の兄が幼稚園の頃はまではみんなでよく遊んでた。楽しかった。
今考えると、兄だってクラスメートとも遊びたかったと思う。けど、小さな私たちのために学校が終わるとすぐ帰ってきてくれた。
だが小学校に上がると、サッカークラブに入ってしまった。
それからはベビーシッターのお姉さんと遊ぶ毎日。
つまんない!
いつも絵本を読んでくれた上の兄は私の世界から消えてしまった。
ふん、寂しくないから!
*
「ただいまー」
「おかえり! お兄ちゃん絵本読んで!」
久しぶりに早く帰ってきた兄見つけた私は、ニコニコ顔で絵本を差し出して「一緒に読もう!」さそった。
「ごめん!これから練習があるから」兄は私を見ようともせず、逃げるように出ていった。
玄関に一人ぽつんと残された私は泣いた。ギャン泣きだ
判らないよ。もうあたしの事が嫌いなんだと泣き続けた。
そうやって玄関先で泣いていると、パタパタと足音が聞こえてきた。
現れたのは私より少し大きな女の子だった。
真っ白なワンピースがとても良く似合っていた。
「どうしたの?」
「お兄ちゃんが絵本読んでくれない。きっとあたしの事が嫌いになったんだ」
自分で話して悲しくなって、さらに泣いた。
彼女は困ったような顔をして「よしよし」と私の頭を撫でてくれた。
まだ3歳だった私は、その優しさにホッとした。
*
彼女はいつも家にいるわけではなかった。
でも私には分かる! あれはきっと私のお姉ちゃんだ!
きっとお母さんが内緒にしてるんだ!
子供の発想なんてそんなものである。
隠し子という不名誉に、母はただ困ったように笑っていた。
それから私は毎日部屋中のドアを開けて、彼女を探し続けた。
「ええーやだよ」
「いいからやりなさい。いつまでも探させては可哀想でしょ」
パタパタ走り回っているとそんな声が聞こえた。
そうそう、私にはもうひとり兄がいる。
きれいな顔しているけど、とにかくどんくさい。
だからあまり好きじゃなかった。
いつもお母さんとお出かけして、留守が多かった。
お家にあまりいない。
いても何やってるのかわからないけどね!
「だれ探してるの?」
「あ、お姉ちゃん!見つけた!」
いつの間にか母の隣にお姉ちゃんが立っていた。
「えーい!」
「わわわ」
私は思いっきり走ると彼女に抱きつく。
以外にも彼女は力が強くて倒れる事はなかった。
「お姉ちゃん絵本読んで!」
「うん、絵本ね。でもお姉ちゃんじゃないよ」
「わかった、お姉ちゃん!」
そうして二人仲良くソファーで絵本を読む。
時々ちらっとお姉ちゃんを見ると「なに?」って見てくれる。
慌てて目をそらし、「なんでもない」って答える。
やっぱりお姉ちゃんだ!
いつでも優しい私のお姉ちゃんだ!
そんな夢のような日々は今でも続いている。
「お姉ちゃんどんくさい!早くおいでよ」
「待ってちょっと待って、あとお兄ちゃんだから。知ってるよね。おにいちゃん」
りぴーとあふたーみー
あははって笑いながら、私はその手を引っ張り続ける
あれから10年以上過ぎスカートは履かなくなったけど、今でも優しい私のお姉ちゃんだ。
「急げ!映画始まるよお姉ちゃん!」
「もうお兄ちゃんだからね」
だいすきだよ おにいちゃん
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