第11話  わたしとお姉ちゃん(某月某日) side美月


今だから告白しよう

実は私にはお姉ちゃんがいる。


「いや違うよね? お兄ちゃんだよ」 

「わかった、お姉ちゃん」

「もう!」


ふふふ


登校までの時間

いつものルーティン。

私にからかわれるとすぐムキになる。


そんな兄の事が私は大好きだ。



私には2人の兄がいる。 妹の私を入れてたら3兄弟だ。

上の兄が幼稚園の頃はまではみんなでよく遊んでた。楽しかった。

今考えると、兄だってクラスメートとも遊びたかったと思う。けど、小さな私たちのために学校が終わるとすぐ帰ってきてくれた。

だが小学校に上がると、サッカークラブに入ってしまった。

それからはベビーシッターのお姉さんと遊ぶ毎日。


つまんない!


いつも絵本を読んでくれた上の兄は私の世界から消えてしまった。


ふん、寂しくないから!



「ただいまー」

「おかえり! お兄ちゃん絵本読んで!」


久しぶりに早く帰ってきた兄見つけた私は、ニコニコ顔で絵本を差し出して「一緒に読もう!」さそった。


「ごめん!これから練習があるから」兄は私を見ようともせず、逃げるように出ていった。

玄関に一人ぽつんと残された私は泣いた。ギャン泣きだ


判らないよ。もうあたしの事が嫌いなんだと泣き続けた。


そうやって玄関先で泣いていると、パタパタと足音が聞こえてきた。

現れたのは私より少し大きな女の子だった。

真っ白なワンピースがとても良く似合っていた。


「どうしたの?」

「お兄ちゃんが絵本読んでくれない。きっとあたしの事が嫌いになったんだ」

自分で話して悲しくなって、さらに泣いた。


彼女は困ったような顔をして「よしよし」と私の頭を撫でてくれた。

まだ3歳だった私は、その優しさにホッとした。



彼女はいつも家にいるわけではなかった。


でも私には分かる! あれはきっと私のお姉ちゃんだ!

きっとお母さんが内緒にしてるんだ!


子供の発想なんてそんなものである。

隠し子という不名誉に、母はただ困ったように笑っていた。


それから私は毎日部屋中のドアを開けて、彼女を探し続けた。


「ええーやだよ」

「いいからやりなさい。いつまでも探させては可哀想でしょ」

パタパタ走り回っているとそんな声が聞こえた。


そうそう、私にはもうひとり兄がいる。 

きれいな顔しているけど、とにかくどんくさい。

だからあまり好きじゃなかった。

いつもお母さんとお出かけして、留守が多かった。

お家にあまりいない。

いても何やってるのかわからないけどね!


「だれ探してるの?」

「あ、お姉ちゃん!見つけた!」

いつの間にか母の隣にお姉ちゃんが立っていた。


「えーい!」

「わわわ」


私は思いっきり走ると彼女に抱きつく。

以外にも彼女は力が強くて倒れる事はなかった。


「お姉ちゃん絵本読んで!」

「うん、絵本ね。でもお姉ちゃんじゃないよ」

「わかった、お姉ちゃん!」


そうして二人仲良くソファーで絵本を読む。

時々ちらっとお姉ちゃんを見ると「なに?」って見てくれる。

慌てて目をそらし、「なんでもない」って答える。


やっぱりお姉ちゃんだ!

いつでも優しい私のお姉ちゃんだ!


そんな夢のような日々は今でも続いている。

「お姉ちゃんどんくさい!早くおいでよ」

「待ってちょっと待って、あとお兄ちゃんだから。知ってるよね。おにいちゃん」


りぴーとあふたーみー

あははって笑いながら、私はその手を引っ張り続ける


あれから10年以上過ぎスカートは履かなくなったけど、今でも優しい私のお姉ちゃんだ。

「急げ!映画始まるよお姉ちゃん!」

「もうお兄ちゃんだからね」


だいすきだよ おにいちゃん

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